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» 2005年03月05日 00時52分 公開

米通信大手幹部、「合併は競争を阻害しない」と証言

SBCのAT&T買収、VerizonとQwestによるMCI争奪戦、SprintとNextelの合併と、米通信業界を統合の嵐が吹いている。そうした中、関係6社の幹部が米下院の公聴会に出席、議員らの質問に答えた。(IDG)

[IDG Japan]
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 3月2日に開かれた米下院委員会の公聴会で、最近発表された3件の通信会社合併計画について、さまざまな意見が交わされた。一部の議員から、こうした合併は市場競争を阻害し、料金の高騰を招くのではないかという疑問の声も上がった。

 この公聴会は、下院エネルギー商業委員会が開いたもの。合併にかかわる通信企業6社のトップが出席し、12月半ば以降に発表された数十億ドル規模の複数の合併取引を擁護。こうした合併は、互いに競争し新技術に投資する健全な企業の在り方を保証するものだと説明した。今回の公聴会の開催は、米議会で1996年通信法の改正に向けた議論が進められる中でのこと。

 一部の議員から、SBC CommunicationsによるAT&Tの買収Verizon CommunicationsによるMCI買収計画の発表で、米国の通信サービス利用者にとっては、競合する地域の少ない独占企業に近い2社に、チョイスが絞られてしまうことになるのではないかと質問が出た。ヒーサー・ウィルソン下院議員(ニューメキシコ州選出、共和党)は、一連の合併を終えた後の通信業界を、1984年の米政府による強制分割前の旧AT&Tによる独占になぞらえた。

 「われわれは20年かけて一巡し、ほぼ同じ地点に戻ってきた。巨大独占企業の分割で始まったこの20年間には、健全な競争と技術革新があった。そして今、複占の出現を目の当たりにしている」(ウィルソン議員)

 1月に発表されたSBCによるAT&Tの買収は、通信業界が不況から脱しつつある、あるいは「リングから立ち上がろうとする」中でのことだとSBCのエドワード・ウィテカー会長兼CEOは説明した。「当社は最先端の技術を使い、強健な国内および国際ネットワークを介して、企業と一般家庭の双方の顧客に、最も完璧なサービスのセットを提供する」と同氏。

 VerizonとMCIの幹部も、ほぼ同じ立場で両社合併を擁護。またSprintとNextel Communicationsの幹部は、互いの携帯電話サービス事業合併の後にも、まだ多数の競合する携帯電話会社が選択肢として顧客に残されると語った。2月に発表されたVerizonとMCIの合併は、まだQuest Communications Internationalからの対抗するMCI買収提案と競合している。

 Verizonのイワン・サイデンバーグ会長兼CEOとMCIのマイケル・カペラスCEOは、証言ではQuestの対抗提案には特に触れなかったが、両氏とも、Verizonの取引が2社にとって最も有意義だとした。

 サイデンバーグ氏は、MCIの世界規模のIPネットワークはVerizonの地域電話と携帯電話の事業と最も良くマッチする、なぜなら地域電話と長距離電話のビジネスは「退行の過程にある」からだとした。「この取引は未来に向けてのものだ。VerizonとMCIは、ブロードバンドの未来を築き、米国の経済成長を生み出すだけの技術力と財力を持った、全米でフルサービスを展開する企業となる」

 ウィテカー氏とサイデンバーグ氏は、SBCとVerizonは既に携帯電話サービスで競合しており、また、それぞれの合併後は、法人市場と一般家庭市場の両方で競合することになるだろうとし、競争が阻害されるという議員の懸念を退けた。

 Bell系電話会社と呼ばれることも多いSBCとVerizonは、IP電話サービスでCATV事業者とも競合しており、向こう2年間に登場するブロードバンド携帯を含め、携帯電話サービス各社ともせめぎ合うことになるとウィテカー氏。固定電話サービスから携帯電話サービスへの切り替えが増え、SBCの固定回線契約数は、毎週数万件ずつ減少しているという。

 「競争が減るわけではなく増えることに、疑問の余地はないと思う」とウィテカー氏は付け加えた。

 エドワード・マーキー下院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は、ウィテカー氏とサイデンバーグ氏に対し、合併後に家庭向けサービスの料金を引き上げないと約束するよう求めた。

 AT&Tは2004年に家庭向け電話事業から撤退しているため、SBCとAT&Tの合併は消費者向けサービスの料金にはまったく影響しないとウィテカー氏。

 さらに料金据え置きを約束するよう念を押されて、ウィテカー氏はこう付け加えた。「永久に値上げしないとは約束できないが、近い将来に影響を及ぼすようなことはしない」

 「近い将来というのは具体的には?」とマーキー議員。

 「具体的な期間を約束することはできない。はっきり何日とか何年と言うことはできない。私には実際予測できない」とウィテカー氏は答えた。

 マーキー議員はVerizonのサイデンバーグ氏にも同じ質問をし、それに対して同氏は、約束はできないと答えつつも、家庭向けのサービス料金は過去15年間下落しているとし、さらに、CATV事業者や通信各社との競合で料金は下がり続けるだろうと言い添えた。

 「われわれは、可能な限り最高の競争者となり、顧客に最上の価値を提供することを約束するつもりだ。市場は受け入れるだろう」(サイデンバーグ氏)

 ほかの議員らは、競争は続くという各社幹部の発言に疑問を投げ掛けた。農村部や低所得地域選出の議員はSBCとVerizonに対し、彼らの地元にブロードバンドなどの先端サービスを提供するよう要望した。また、米消費者連合の調査ディレクター、マーク・クーパー氏は、業界統合と「準備不足の規制政策」が、競争拡大の望みをつぶしてきたのだと指摘。Bell系であるSBCとVerizonは、互いの家庭向け電話サービス展開地域で競合するのを避けてきたことから、それぞれが合併すれば、地域住民に残される選択肢は、Bell系と地元のCATV会社だけになるだろうとクーパー氏は言う。

 「ここのところの一連の合併計画は、消費者がより多くの選択肢と料金低下を期待できた時代の究極の終えんを示している」(クーパー氏)

 一方で、民主・共和両党の数人の議員は、これらの合併を、大手の通信会社がさらに成長して新しいサービスを提供するために必要なことだとして擁護した。下院エネルギー商業委員会のジョー・バートン委員長(テキサス州選出、共和党)は、SprintとNextelの合併によってBell系電話会社と資本関係のない「ブロードバンドの巨人」が生まれるとし、「われわれはこうした合併を警戒するのではなく、歓迎すべきだ」とした。

 さらにバートン委員長は、3件の合併は、米国に必要な「活気ある通信産業」を存続させるものだろうと言い添えた。

 フレッド・アプトン下院議員(ミシガン州選出、共和党)もこれに賛同し、次のように述べている。「これら各社は、単独で事業を続けるより合併した方が、ライバルが(各種サービスで)意味ある戦いを繰り広げる世界で戦っていく上で、良い位置につくことができる。通信市場における過去10年間の劇的変化を考えれば、これらの合併は、理にかなっているというだけではなく、活気と競争に満ちた通信市場を保つ上で不可欠なものだ」

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