サマリア「今日、時間ありますか?」Mobile&Movie 第158回

» 2005年04月15日 16時09分 公開
[本田亜友子,ITmedia]
作品名サマリア(Samaritan Girl)
監督キム・ギドク
制作年・製作国2004年韓国作品


 今回ご紹介する作品は、韓国映画「サマリア」。携帯電話で客と連絡を取り、援助交際をする女子高生の物語です。ショッキングなテーマではありますが、心に深い余韻を残す作品です。

 主人公は、どこにでもいるような女子高生ヨジンとチェヨン。学校でも放課後でも、2人は仲良く一緒に行動していました。トイレで制服から私服に着替えて街に繰り出し、プリクラを撮ったり、買い食いしたり、携帯電話のカメラで自分撮りをしたり、日本の女子高生と似ています。

 そんなヨジンとチェヨンの夢は、ヨーロッパ旅行でした。旅費を貯めるために、いつからか援助交際を始めたチェヨン。

 「ヨジンがいないと何もできないの」

 と甘えるチェヨン。男性と会う時の見張りをヨジンに頼んでいたのです。罪の意識もなく無邪気に笑うチェヨンを、援助交際には嫌悪感を抱きながらもヨジンは放っておけませんでした。

 ある時チェヨンは、客として会った作曲家を気に入ったと、ヨジンに打ち明けます。まだ恋を知らない自分が置いていかれるようで、ヨジンはそれを聞いて寂しくなります。そして、チェヨンに必要なのは自分だけであってほしいという想いを知ります。ヨジンの苛立ちにも気付かず、新しい客とホテルへまた赴くチェヨン。

 その日気持ちが乱れていたせいか、いつもならすぐに気付くはずなのに、ヨジンはホテルへ入っていった警察官を見逃してしまいます。急いでチェヨンの携帯に電話をかけますが、つながりません。警察官が部屋までやって来た時、チェヨンは高い窓から逃げ出そうとします。ヨジンは慌てて止めますが、チェヨンはいつも通りの笑顔を浮かべ、羽ばたくように窓の外へ。

 病院へ運ばれたチェヨンは、静かに息を引き取りました。一番大切な存在を失って、ヨジンは取り乱します。これからどうしたらよいのか途方にくれ、援助交際で集めた旅費を捨ててしまおうとします。しかし、手帳につけていたチェヨンの客のリストを見ているうちに思い直します。チェヨンの罪滅ぼしのために、これまでの客にお金を返そうと決めたのです。

 「今日、時間ありますか?」

 こうして、ヨジンは手帳を片手に、次々と携帯電話で連絡をしていきます。

 「私、チェヨンです」

 チェヨンのふりをして、援助交際した相手を呼び出して。

 一方、ヨジンの父親・ヨンギは、チェヨンが亡くなってから、元気のない娘を心配していました。妻が病死して2人暮しになり、娘を宝物のようにかわいがってきたヨンギ。不規則な刑事の仕事の合間に、毎朝車で学校まで送っていき、娘と過ごす時間を大切にしていました。

 しかしある日、張り込みの途中で、ヨジンが年配の男とホテルに入っていくところを目撃してしまったのです。自分の娘だとは信じたくないヨンギ。娘への失望、相手への怒りが溢れ出してしまいます。

 親友の死をきっかけに、運命に翻弄されていくヨジン。父親に見られているとも知らず、ヨジンは罪滅ぼしを続けていきます。ヨジンが辿り着く場所には、何が待っているのでしょうか?

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