携帯向けの“徒歩ナビゲーションサービス”に参入するゼンリンデータコム。「いつもナビ」のボーダフォン初のGPS端末「903T」へのプリインストールを皮切りに(9月7日の記事参照)、ドコモ、KDDI向けのサービス展開も計画する。先行するナビタイムなどへのアドバンテージとして、「徒歩向けにカスタマイズした詳細な地図データ」を挙げる。
今回徒歩ナビゲーションサービスの開始に当たり、ゼンリンデータコムが力を入れたのは、徒歩向けの地図情報の拡充だ。「階段とか、エスカレータとか地下街とか、本当に歩行者に必要な情報を収集した」と同社の林秀美社長は胸を張る。
ナビゲーションを行うための地図データは、いわゆる“地図”のほかに各地点を結ぶ道路をネットワークとして記したネットワークデータが必要となる。そもそもカーナビ用に作られていたネットワークデータに、ゼンリンデータコムは独自に歩行者用の拡張を施した。
東京23区および政令指定都市内の駅周辺について、ペディストリアンデッキ、建物内通路、公園内などの敷地内通路、駅出入口などの情報を追加した。さらに、歩道、横断歩道、歩道橋、階段、エスカレータなどの情報も追加することで、「自動車用ネットワークデータの約2.4倍の探索可能道路を整備した」という。
特筆すべきは、こうした歩行者用通路について「屋根があるかどうかをフラグとして持った」ことだ。このデータを使って、徒歩ルート検索時に、
の3条件を指定できるようにしている。今後は、通行可能な時間帯やタクシー乗り場・バス停などのスポットデータ、ビルの出入り口も整備していく計画だ。
徒歩だけのナビゲーションにとどまらず、鉄道の乗り換えを加味したルート検索も行う。最寄り駅までの徒歩ルートを検索し、鉄道の乗り換え検索には駅前探検倶楽部のエンジンを利用する。またVICS情報も取得しており、混雑情報を加味した自動車のルートも提示する。
なお、ボーダフォンの903Tは海外でもGPSが利用できるのが特徴だが、いつもナビは海外では地図の表示に留まりナビゲーションは行えない。
今でこそ、GPS携帯はKDDIの専売特許だが、ドコモがFOMA初のGPS端末「SA700iS」を発売し、ボーダフォンも「903T」を予定しているなどGPSへ業界の目が向きつつある。総務省は2007年以後発売する携帯電話にGPS機能搭載を義務づけており(2004年5月18日の記事参照)、それへの対応だ。ゼンリンデータコムは、これを好機と見ている。
「ボーダフォンへのプリインストールを皮切りに、FOMA公式、FOMA端末へのプリインストール、そしてドコモ標準、au標準を目指していく計画」だと、林社長は打ち上げた。まずは、現在3キャリア向けに提供している地図サイトをバージョンアップさせてナビゲーション機能を提供していき、シェアを高めていく。
KDDIの標準サービスとして「EZナビウォーク」を提供するナビタイムが、徒歩ナビゲーションでは先駆的存在。しかし、いつもナビはEZナビウォークに遜色ない機能を盛り込んできた。ユーザーインタフェースなどの作り込みではEZナビウォークにまだ分があるように見受けられるが、ゼンリンデータコムの強みは、地図の作り込みだ。
「雨に濡れないルート」「階段を使わないルート」。こうした検索ができるのは、詳細な調査結果を盛り込んだ地図があるため。ゼンリンデータコムは「条件次第で、地図データの他社へのライセンスもあり得る」とするが、現時点では自社サービスの強みとして活用していく考えだ。
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