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» 2006年11月10日 23時55分 公開

「明確な形をアウトプットしてはいけない」──坂井氏の難題に応えた3人のクリエイターINFOBAR展/Trilogy展同時開催記念スペシャルトークショー(1/2 ページ)

11月3日に原宿のKDDIデザイニングスタジオで開催された「INFOBAR展/Trilogy展同時開催記念スペシャルトークショー」。深澤氏のトークもさることながら、3人のクリエイターが手がけたコンセプトモデルのデザインプロセスも非常に興味深いものだった。

[青山祐介,ITmedia]
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11月3日、東京・原宿のKDDIデザイニングスタジオで開催された「INFOBAR展/Trilogy展同時開催記念スペシャルトークショー」では、深澤直人氏と坂井直樹氏の対談だけでなく、Trilogy展に参加している2人のクリエイターとの対談も行われた。

 今回のトークショーに参加したのは、「vols」をデザインしたロス・ミクブライド氏と「Kaos」をデザインしたブラッドリー・フレイザー氏。それぞれが坂井氏の提唱する「コンセプトワーク」に基づいて進めた端末開発の過程を自身の言葉で説明した。

「vols」──すでにあったものを、もう一度一番新しいテクノロジーとつなげた

Photo 「vols」を手がけたロス・ミクブライド氏

 「このプロジェクトが始まったとき、最初の頃のプレゼンテーションでは“デザインを見せないで方向性を見せる”という、坂井さんのディレクションがあった。全く慣れていなくて苦労しました」(ミクブライド氏)

 インタビューはミクブライド氏に「今回のデザインのコンセプトをどのように噛み砕いたか?」と坂井氏が問うところから始まった。坂井氏のデザインワークは、プレゼンテーションのスタイルが独特で、実際にデザイン作業にかかるまでのプロセスが長いという。一般的にデザイナーはデザインの依頼を受けるとすぐに形を考えていくことが多いが、坂井氏は“コンセプトワーク”というプロセスをとても重要視しており、今回のプロジェクトの初期段階でも「明確な形をアウトプットしてはいけない」とディレクションした。これは、デザイナーにとってとても苦しいことだったようだ。

 「どうやってプレゼンテーションするか悩みましたが、(当時は)ケータイのコンセプトをまだ決めていなかったので、その代わりに僕のデザインポリシー、“ロス的なデザインのルール”のようなものを表現しようと思い、5つの箱を作りました」(ミクブライド氏)

 プレゼンテーションでは5つの箱を作り、その箱の中にミクブライド氏のアイデアを投影した。テーマは「Twisting the Normal」「Purity」「Word Play」「Surprise」「Familiar=Function」の5つで、それぞれのテーマを表現するインスタレーションが施されている。

 例えば「Purity」では“純粋さ”を表現し、電球の中にauのマークが入っている。また「Word Play」は“文字の遊び”を表現したもので、鏡を使って彫刻的な形の文字を作り、鏡を合わせると文字が浮かび上がる。

 “文字”はミクブライド氏の得意な分野だという。プレゼンテーションではミクブライド氏の結婚指輪を披露し、妻の指輪をミクブライド氏の指輪の内側にはめると1つのフレーズが浮かび上がることなども紹介された。

 「Surprise」の箱は、坂井氏がミクブライド氏に“プレゼンテーションにはサプライズが必要”だと指示したところ、ミクブライド氏が「非常にベタに、本当にびっくり箱を持ってきて、auの人を脅かせた」(坂井氏)のだという。箱の中央にある円筒のフタを開けると、蛇が飛び出す仕組み。「このプレゼンテーションはauの人にとてもウケた」(ミクブライド氏)という。

 また「Familiar=Function」はインタフェースデザインに関する箱で、auのロゴの「a」の真ん中の部分を合わせると「u」が光るというもの。「壁に走る“筋”は、どこに行っても、当たり前の壁の筋っぽい形になっていますが、それが自分の家だったら筋っぽくない筋であってもいいと思います」(ミクブライド氏)。とても難しい概念だが、「つまり、自分がわかればいいんだと。パブリックスペースじゃないから」(坂井氏)と説明していた。こうしたコンセプトワークを繰り返し、ミクブライド氏が決めたテーマが「ヒップフラスク」だった。

 「人間は100年間いろいろなものをポケットに入れて歩いていました。その中でこういうヒップフラスクもあれば、サイフもあれば、メガネケースもあったし、シガレットケースもあった。つまり“モバイル”というものは、そういうものとしてあったのだと。すでにあったものを、もう一度今の一番新しいテクノロジーとつなげてみようと考えたのです」(坂井氏)

 「ヒップフラスクはお酒の世界とつながっていて、その世界は軽く楽しむ世界と、だんだん専門的に深く楽しむ世界があります。また、それには歴史があって、習慣があったり、さまざまな道具がある。僕としては人間的な暖かさがある世界、そういう私的な携帯があれば印象に残ると思い、ヒップフラスクをモチーフにしました」(ミクブライド氏)

PhotoPhotoPhoto ミクブライド氏が用意した最初のプレゼンテーションで用意した5つの箱。左から「Twisting the Normal」「Purity」「Word Play」
PhotoPhotoPhoto 5つの箱の残りの2つは「Surprise」と「Familiar=Function」。“ロス的なデザインのルール”を表現したという
PhotoPhotoPhoto さまざまなアイデアの中から、ヒップフラスクをモチーフにしたケータイが生まれた。ディスプレイを引き出すという、今まで見たことのないデザインに仕上がっている
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