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» 2007年03月28日 22時34分 公開

Interview:沖縄の海と風が育んだ地域ナンバーワンキャリア──沖縄セルラーに聞く (2/2)

[神尾寿,ITmedia]
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専売店比率85%──auショップが強み

 また流通の部分に目を向けると、沖縄は専売店比率が非常に高い地域だ。沖縄セルラーの場合では、専売店販売比率は約85%。残り15%が家電量販店などの併売チャンネルになる。

 これは他の地域でも同様であるが、専売店販売比率が高ければ、流通における各キャリアの競争は、どれだけ有力な販売会社と専売店契約を結べるかにかかってくる。沖縄セルラーの場合は、初代社長を輩出したりゅうせきグループを筆頭に、地元有力企業をauショップの販売会社にしている。他地域では、ドコモ地域会社がそれぞれの地元有力企業と専売店契約を結んでいるが、沖縄ではその立ち位置が逆なのだ。

 「現在、auショップは約110店舗あります。沖縄の人口が137万人ですから、1万人強に1店舗ある計算です。さらに家電量販店などのauスポットの数をいれれば、店舗・売り場で約130カ所になります」(起橋氏)

 専売店の店舗数の多さ、さらに手を組む地元企業の強さを鑑みても、沖縄セルラーはドコモやソフトバンクモバイルよりも有利な状況にある。この販売力の違いも、沖縄におけるauの強さを下支えする一因である。

MNPによる影響は、むしろプラスに働く

 沖縄地域だけで見れば、auのシェアが50%を超える。となると、気になるのは番号ポータビリティ(MNP)の影響だ。周知のとおり、MNPはキャリア同士のユーザー流動性を高めるため、稼働シェアが高いキャリアの方が不利になる。実際、ドコモはMNP以降の純減を「想定内のこと」としているが、沖縄でシェア50%以上をもつauは、MNPが不利に働いたのだろうか。

 「MNPが始まるにあたって、私は社員に『MNPは怖いよ』と言ってきました。それはなぜかというと、MNPでお客様は初めてキャリアの比較をするケースが増えるからです。他社を試した結果、auのよさを再確認していただければ戻ってきてもらえますが、そうでなければ(auに)帰ってきていただけない。すると、(シェアトップの)auの方が他社より劣っていたという評価が広まってしまいます。

 MNPが一過性のものでない以上、沖縄セルラーとしては今まで以上にインフラの整備を行い、顧客重視でサービスやショップの品質を高めなければならない」(起橋氏)

 特に沖縄セルラーが他地域のauと違うのが、沖縄では「昔から沖縄セルラー(au)ユーザー」という人が多いことだろう。ドコモやソフトバンクモバイル(旧ボーダフォン)の利用経験者がいないため、MNPで初めて「au以外のキャリア」を考えるユーザーが増える可能性があるのだ。他地域のドコモがそうであるように、沖縄セルラーはユーザーに試される立場にある。

 では、結果はどうだったのか。

 「結論から言えば、MNP開始以降、auはポートインの方が多い状況で純増しています。うちの解約率はほとんど上がっていない。トップシェアの我々からユーザーが流出しないので、沖縄全体のMNP利用率は極めて低い状況にあります」(起橋氏)

 他の地域ではドコモのシェアが高いので、結果的に「auがMNPで獲得する」パイが大きくなる。沖縄はこの構図が逆で、沖縄セルラーがドコモやソフトバンクモバイルにシェアを狙われる立場だが、auは不利な状況下でも純増を続けているのだ。

 「MNPはシェアが高いところから低いところにユーザーが流れるという論理ではなくて、重要なのはユーザーの不満率なんだと考えています。相対的にですけれど、ドコモやソフトバンクモバイルの方がauよりもユーザーの不満が高かった。だから、(auのシェアが高い)この沖縄でもauが他社に勝っているんだと思います」(起橋氏)

 なお、MNPの流出入で注目すべき傾向が、ソフトバンクモバイルの比率だという。沖縄のシェアはauが50%、ドコモが40%、ソフトバンクモバイルが10%弱であるが、MNPでの移動は「ドコモよりもソフトバンクモバイルの方が多い」(起橋氏)状況にある。

 「まずauへのポートインでは、(シェアの比率以上に)ドコモよりソフトバンクモバイルからが多い。また逆もあって、auから他社へのポートアウトでも、ソフトバンクモバイルへの流出比率が高いのです。とにかくソフトバンクモバイルは(MNPで)よく動きますよ」(起橋氏)

 結果的にはauのポートインの方が多いが、“MNPの利用を活性化する”点だけ見れば、ソフトバンクモバイルは市場の活性化に貢献しているようだ。「ソフトバンクモバイルは沖縄でもプレゼンスが高くなってきている」と起橋氏は話す。

 「旧ボーダフォン時代は沖縄でのシェアが9%以下ということもあって純減基調だったのですが、ゴールドプランホワイトプランを投入してからは(沖縄でも)存在感が出てきました。ただ、沖縄セルラーは(MNPで)負けていません。これは全国でもそうなのかもしれませんが、ドコモが一方的に(ソフトバンクモバイルに)やられている感じがします。

 あとは1月や2月に新規契約を取っているところをみると、特定通話相手に対する2台目需要をソフトバンクモバイルは取っているようですね」(起橋氏)

沖縄人のための沖縄の携帯電話キャリア

 沖縄セルラーはブランドとしてはauだが、地域密着を徹底し、沖縄人のための“沖縄の携帯電話キャリア”の印象が強い。沖縄セルラーとしても地域密着、地元とのコミュニケーションを重要視している。

 「例えば基地局を1つ建てるにしても、その地域の住民が1人でも反対していたら、地主の許諾があっても絶対に基地局を建てません。本社(沖縄セルラー)の役員が現地に赴き、きちんと説明してコンセンサスを取る。ある島では基地局が建った時には地元で宴会を開いて喜んでくれて、他のキャリアが基地局を建てようとしたら島の人が『うちの島にはau(の基地局)がある』と言ってくれました。地域の人に支持してもらえるのは、非常にうれしいことです。

 また最近では、CDMA2000 1Xでパケット代が高くついている学生ユーザーに、WINに機種変更するためのクーポン券を送って『WINのダブル定額に入りましょう』とお勧めしました。むろん、その場合はガク割が適用されないので、音声通話は控えめにした方がいいというアドバイスもする。これはキャリアとすれば減収作業ですけれど、少しでも料金負担を減らせればお客様に喜んでもらえます」(起橋氏)

 携帯電話ビジネスの動きは速く、端末機能やデザイン、料金プラン、コンテンツサービスなど華やかな部分に目を奪われがちだ。しかし、キャリアのビジネスで基本になるのは、それぞれの地域で地元社会に融けこみ、顧客と真摯に向き合うというローカルな部分だろう。沖縄における沖縄セルラーの強さは、それを如実に物語っている。

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