iPhone発売へのカウントダウン──Apple直営店に巨大iPhoneが登場

» 2007年06月28日 10時45分 公開
[林信行,ITmedia]

 米Appleが手がける携帯電話、「iPhone」がいよいよ6月29日の午後6時に発売される。販売は全米50州に200店舗ほどあるAppleの直営店、それに全米に2000店舗あるAT&Tの直営店、そして両社のオンラインストアで一斉に始まる。

 AT&Tの直営店には今月始めからiPhoneの発売を予告するポスターが貼られていたが、今週からはAppleの直営店にも展示用の巨大なiPhoneが飾られ、街を行き交う人々の注目を集めている。

 Apple直営店は、日本の店舗も含め、すべて主要都市でもっとも人通りの多い場所を狙って開設されており、それだけにショーウィンドウの展示の宣伝効果も極めて高いものになっている。

 展示用のiPhoneは、ちょうど20インチの「Apple Cinema Display」を縦にしたくらいの大きさで、ディスプレイケーブルが床下を通ってMac Proにつながっているという報告もある。ただし、正面、側面、背面までみごとに本物のiPhoneそっくりにつくられており、ディスプレイの表面も反射率の高いガラスが貼ってあるようだ。

 ちなみに画面には、iPhoneの主要メニュー画面やiPhoneを使っている様子が映し出される。

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PhotoPhotoPhotoPhoto 全米のApple Storeには一斉にiPhoneの巨大模型の展示が始まった。ディスプレイにはiPhoneのインタフェースや使い方などが表示される。これはApple Store San Franciscoでの展示の模様。なお、Apple本社の食堂「Cafe Macs」には、同じiPhoneがドックに乗った状態で展示されているらしい

発売当日は大変な混乱が予想される

 iPhoneに関しては、すでに一部のアップル直営店の前に行列ができはじめたという情報もあるが(6月27日の記事参照)、すべてのストアの前に行列ができているわけではない。ただし、当日はかなりの騒ぎになることは間違いなく、Apple Store各店舗は29日の午後2時から一時営業を中断し、6時から営業を再開する予定だ。

 ちなみに米国は地域によって時差があるが、販売は各地域のローカルタイム(現地時間)の6時から販売開始となる。つまり、ニューヨークなどがある東海岸エリアから販売が始まり、それから1時間後にシカゴなどの中西部で販売を開始、2時間後にアリゾナ州などの山岳部、そして4時間遅れでカリフォルニアなどの西海岸、そして5時間後にハワイなどでの販売が始まる。

 ニューヨークのFifth Avenue店などでは、夕方の5時頃から整理券代わりのリストバンドが配られるといった情報も出始めている。Apple Store情報を専門に発している「ifoAppleStore」(http://www.ifoapplestore.com/2007/06/27/wristbands-500-phones-50-at-a-time/)には、「配られるリストバンドは500本で、午後5時50分に最初の50人が入店し購入を開始、以後、人数がある程度はける度に50人づつ入店させる」といった情報が掲載されている。

 ちなみにAppleやAT&Tのオンラインストアも、店舗での販売に合わせて午後6時から発売となるが、どの地域の6時に合わせるかは今のところ明かされていない。発送先の州をチェックして、その州の6時まで購入できなくする可能性もなきにしもあらずだが、おそらく東海岸時間の午後6時にApple Store Onlineで購入するのが一番確実なのではないかという噂も出始めている。

オンラインも使った大量販売のカラクリ

 それにしても日本のApple Storeを訪れたことがある人からは、Apple Storeで携帯電話を売るということが信じられないだろう。

 Apple Storeでは、Macをレジ代わりで使っており、領収書1枚に至るまできれいな紙にきれいなレイアウトで印刷されると定評があるが、決して大量の客を素早くさばけるような作りにはなっていない。

 携帯電話販売といえば、契約書を書いたり、電話番号を選んだりとなかなか時間のかかる作業で、手際のいい日本の量販店でも30分から1時間はかかる作業だ。Apple Storeのレジは小型店では3カ所ほど、大型店でも12カ所ほど。大型商品の販売時には、これに加えてGenius Barの一部がレジとして使われることもあるが、それでも大したレジの数はなく、50人の客をさばくのにもそれなりに時間がかかりそうだ。

 実はここにも“Reinvent the Phone”(電話を再発明する)と唱ったiPhoneの革新的な側面を見て取ることができる。

 iPhoneはGSM仕様の携帯電話だ。つまり、すでにAT&TのGSM携帯電話用SIMカードを持っていれば、それを入れて電話をアクティベート(有効化)できる。だが、それに加えAppleは新規の顧客であってもiTunesを使って携帯電話をアクティベートできるようにしている。

 つまり、ユーザーはApple StoreやAT&T社の直営店では、iPodなどを買うのと同様にiPhoneを商品として購入してくる。その後、自宅やオフィスに戻ってからiTunesを使って、料金プランなどを選ぶ操作を行ない、電話をアクティベートする。AppleやAT&Tのオンラインショップでも販売される秘密はこんなところにあったわけだ。

 ちなみにアクティベーションのプロセスを踏まないことには、iPhoneを手にすることはできても、無線LANも含めて一切の機能が利用できない可能性が高い。アクティベーションには米国内の住所やその住所で登録のあるクレジットカードなどが必要で、旅行者が立ち寄ったApple StoreでiPhoneを買った場合、ただの高い置物になってしまう可能性もある。

 なお、Appleでは販売当日に混乱を招かないための予防策か、既に同社のWebサイトでアクティベーションの手順を紹介するビデオ(http://www.apple.com/iphone/usingiphone/activation.html)を公開している。

料金プランは単純明快

 ちなみにiTunesで選べる料金プランは、基本料金が月額59.99ドル、月額79.99ドル、月額99.99ドルの3種類がある。違いは無料通話時間のみで、いずれのプランも米国ではまだ珍しいデータ通信料定額プランとなっている。

Photo iPhone用のAT&Tの料金プランは3種類

 携帯電話の料金プランといえば、日本でも米国でも、他社との直接比較がしにくく、複雑きわまりないものになりがちだが、アップルはiTunes Storeでの楽曲販売にしても、常にユーザーにわかりやすい明朗会計のシステムを重視しているようだ。

 ただデザインの優れた携帯電話をつくって、売るだけではなく、やるからには携帯電話を使いにくくしている理由を根本から変えてしまう。例えば、これまでは留守番電話も順番に再生するしかなかったが、iPhoneの特徴の1つ「Visual Voice Mail」では、画面で発信者番号表示付きの留守番電話メッセージを一覧表示したうえで、メッセージを好きな順番に指で選んで再生できる。

 こうした機能の実現は、電話機メーカーのアップル1社だけではなし得ず、キャリアの側にもそれなりのコミットメントが必要となるが、そうした手間のかかる要求をキャリアに認めさせてしまうところもAppleのすごさだ。

 iPhone(の3G版)の国内展開については、現在日本の携帯電話キャリアが各社がAppleと交渉中という噂もある。しかし、最終的に競争に生き残れるのは、こうしたアップルのユーザー体験を最重要視する高度な要求に、どこまでつきあえるかも大きなポイントとなるだろう。

6月29日はジョブズ氏にとっても重要な1日

 iPhoneがニューヨークで発売開始となる米国東海岸時間の29日午後6時は、日本の30日午前8時頃となる。今のところAppleでは大きな発売開始イベントの予定などを発表していないが、この頃から全米のブロガーらによる購入リポートがWebに一斉に掲載され始めるに違いない。

 なお、Apple最高経営責任者のスティーブ・ジョブズ氏にとって、29日は二重の意味で重要な日になる。実はこの日、彼が創業したPixar Animation Studio(現在はWalt Disneyの一部)による新作コンピューターアニメーション映画、「Ratatouille(邦題:レミーのおいしいレストラン)」の米国での上映もスタートする(日本では7月28日ロードショー)。


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