今後は“メイン”で使ってもらえる端末を出していく──ウィルコム 土橋匡氏ワイヤレスジャパン2007 キーパーソンインタビュー(2/2 ページ)

» 2007年07月12日 23時42分 公開
[石川温,ITmedia]
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これからは、メインで使ってもらえる商品を出して行く

ITmedia この割賦販売制度は、ユーザーに機種変更を促し、「ウィルコムをメインに使ってもらいたい」という戦略なのでしょうか。

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土橋 W-ZERO3[es]ユーザーの実態を見ると、「メールは携帯電話で」というユーザーがまだまだ多い。W-ZERO3[es]でデータ定額に加入しながら、携帯電話でもパケット定額制に加入するなど、携帯電話とPHSを併用しても、必ずしも月々のトータルの支払額は下がっていないと思われます。

 携帯電話の場合、赤外線通信ポートや、最近はFeliCaを使った通信などの機能もあり、アドレス帳のデータは増えていく傾向にあります。そのため、つい電話も携帯電話から発信してしまうことが多くなり、トータルのコストは下がらなくなってしまう。

 われわれとしては、電話もメールも定額で使えるウィルコムと携帯電話をセットにし、賢く使ってもらうことで、トータル的なコストを安くしてほしいと願っています。ウィルコムは、定額プランに入っていればメールは無料ですから。

 今回、Advanced/W-ZERO3[es]やWX320Tで赤外線通信ポートを搭載したのも、ダブルホルダーにウィルコムをもっと使ってほしいという狙いがあります。

ITmedia かつて御社はダブルホルダー戦略として、「2台目需要」を中心に狙っていたと思いますが、これからは「1台目需要」がターゲットになるのでしょうか。

土橋 メインで使ってもらえる商品を出していかなくてはならないと思っています。やはり2台目と1台目では、解約率への影響も違いますので。

ITmedia PHSをメインで使ってもらうための秘策はあるのでしょうか。

土橋 そこはやはりメールだと思っています。現在、070の音声定額の輪が基本にあり、時間や場所を気にせずに使っていただいています。さらにウィルコム同士だと音質もよい点をアピールしつつ、メールもウィルコムをメインにしてもらえるようにサービスの改善をしていきたいと思っています。

携帯電話との差別化は「制約のないコミュニケーション」

ITmedia 音声通話の定額制にはソフトバンクモバイルのようなライバルも現れていますが、ウィルコムとしては今後どのように差別化していくのでしょうか。

土橋 社長の喜久川も言っていますが、やはり「制約のないコミュニケーション」が大きなポイントになってくると思います。家族なら(定額)、同一企業内なら(定額)、特定の時間帯なら(定額)といった但し書きがあるのではなく、070の定額の輪で差別化していくつもりです。

 営業面では、コンシューマー向けは善戦していると思っています。販売戦略としては、他社がショップを増やしてきていることもあり、われわれとしても、売り場を広げ、お客様との接点を拡大していきたいと考えています。この点はもう一度気合いを入れ直していくつもりです。これまで、商品力で数字(契約数)が伸びてきましたが、もう少し、エリアマーケティングの考え方を導入して、どの地域でどの製品が売れて、この地域にどれだけのポテンシャルがあるのかというのを見直していきます。

 これまでは、どの販売チャネルで何回線の契約が取れたか、といったレベルでの判断しかできていませんでしたが、これからは鉄道路線や商圏の有無といったエリアマーケティングで分析していきます。

 法人向けビジネスに関しては、日本無線製端末のバッテリーパックの不具合があり(6月13日の記事参照)、バッテリー交換を最優先するため同端末の新規契約はストップさせていただいている状態です。新規のお客様にはご迷惑をおかけてしています。既存ユーザーのバッテリー交換を完了させ、なるべく早く終わらせて、スピーディーに対応していくつもりです。13万4000台を最優先でやっている状態のため、新規加入者数の面では厳しいと判断しています。

データ通信市場は、

ITmedia データ通信市場もイー・モバイルなどのライバルが出現していますが、対抗策は何かお考えですか?

土橋 データ通信市場は、PCの持ち出し禁止、私用PCの企業内持ち込み禁止という逆風が吹いている大きな流れは変わっていません。しかし、小さなパイを取った、取られたということをやっていても意味ないかなとは思っています。

 企業がPCの持ち出しを許可するには、どういうセキュリティなら認めてくれるか。PCを含め、セキュリティをASPサービスとして提供している会社などと連携し、全体のパイを大きくする取り組みをしなくてはいけないと思っています。

 個人情報保護法は守らなくてはいけませんが、法人として、生産性や効率を上げたいというニーズは相変わらずあります。それを改善するという意味では、スマートフォンを含め、データ通信の分野を盛り上げていかないといけません。

 また今後は、公衆無線LANのホットスポットとのコラボレーションも強化するつもりです。W-ZERO3[es]には無線LANが搭載されていなかったので、昨年はあまり積極的にアピールしてきませんでしたが、Advanced/W-ZERO3[es]には無線LANが標準搭載されるので、無線LAN接続サービスとのコラボなどでも巻き返していきたいと思っています。

 PHSのデータ通信カードにも新製品を用意しています。発売時期やどんなスペックかはまだ言えませんが、マーケットのニーズ合ったものを出していくつもりです。エリアも面カバーを拡大し、通信速度を高速化して、他社と差別化していくつもりです。

他社との差別化と認知度の向上が大きな課題

ITmedia 今年後半から来年への戦略を教えてください。

土橋 モバイル業界は競争が激しくなっています。そのため、各セグメントでの方針を明らかにしなくてはいけないと思っています。

 定額での音声通話やデータ通信、スマートフォンにしても、以前は業界内で差別化できていましたし、そこで成長してくることができました。しかし、現在それらのセグメントで、他社から似たようなサービスがでてきています。今まで以上に差別化するために、我々は販売チャネルやコンテンツを明確に強化していくつもりです。

 具体的には、「こういうことができる」という端末の使い勝手をもっと訴求していきたいです。Advanced/W-ZERO3[es]なら「W+Info」「W+Book」「W+Video」や音楽配信のように、携帯電話ライクにコンテンツが使えるとことをアピールしなくてはいけないと思っています。

ITmedia ターゲットとしているユーザー層などはあるのでしょうか。

土橋 ウィルコムの音声定額の認知はまだまだ低いと思っています。マーケットニーズのあるところに営業できていないのが実情です。

 これからは、いろいろなコミュニティに対して訴えかけていきたい。何しろ、ウィルコムの加入者数はまだ全国で460万しかいません。これは人口の5%にも満たない数字です。今よりももっと少し定額の輪を広げていけるようにしたいです。

 あとは医療や介護などの分野に対し、ハートフルプランを訴求したいと考えています。病院への導入は堅調に推移していますが、実際にそこに勤めている方の認知はまだまだの状況です。

 彼らは情報入手源が違い、インターネットで調べるような方々ではないので、月々2200円で定額で音声通話が利用でき、ペースメーカーへの影響がなく、小さな声でも聞こえる、省電力でも使えるという点をもっとアピールしていかなくてはいけません。もうちょっと、介護のケアセンターの方々などにも認知していただけるように、営業努力を進めていきたいと思っています。

ITmedia 目標としている契約者数の数字などはありますか?

土橋 500万契約というのは、1つの目標にはあります。しかし、環境の変化も大きいため、いつまでに、というお話はできません。ウィルコムは、DDIポケット時代を含めれば創業以来12年間の苦難の歴史があり、そのなかでどうやっていくかを常に考えて頑張ってきました。そのため、環境変化には強い会社だと思っています。

 また、500万加入をできるだけ早く達成する、ということよりも強く意識しているのは、半歩先を見て、どういうサービスを出していくのがいいか、ということです。むしろ契約数よりもこちらが重要でしょう。それによって、ウィルコムは音声定額やメールが使いやすい、といった認知が広がってくれればいいと思っています。

ITmedia ポータルを作ったり、1台目需要を狙ったりと、今後目指していく方向性は携帯電話と似てくるような印象も受けたのですが。

土橋 それはならないと思います。ユーザーの欲するサービスを出すという方向性は、もちろんウィルコムも取り組んでいきます。しかし、携帯電話事業者の方向性が正しいのかどうかはわかりません。やはり、キャリア発のサービスに、ユーザーが乗っかってもらうというスタンスは、ウィルコムが追いかけるものではないと思っています。

 ウィルコムは、スマートフォンしかり、通信カードしかりですが、ユーザーに興味を持って購入してもらい、ユーザーに育ててもらってきたという経緯がある。ユーザーの声に真摯に耳を傾けて、次の展開を行ってきます。他力本願という意味ではなく(笑)

 今後もウィルコムは、ユーザーの目線で半歩先に立って、商品開発をして行きます。

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