7月27日、NTTドコモの中村維夫社長が2008年3月期第1四半期の決算発表を受け、事業の概況や今後の取り組みについて説明した。
決算は、売上高が前年同期比2.9%減の1兆1829億円、営業利益が同25.2%減の2039億円と減収減益という結果になった。売上高は前年同期比で357億円の減収となったが、これには前年度に2カ月くりこしの失効見込み額として計上した306億円が含まれ、「本年度はそれを除くと横ばい」(中村氏)となり、問題は332億円増となった営業費用だと中村氏は説明。この増加については(1)端末販売数増加(624万台で前年より54万台増)による有益連動経費の増加 (2)減価償却費の増加 (3)基地局増加に伴う経費増加 の3点を理由として挙げた。
第1四半期の業績について中村氏は「去年の第1四半期は番号ポータビリティ前の静かな年だったこともあり、この第1四半期の数字は計画上ではブレていない。後半に利益を出すようになっているので、これから相当厳しく引き締めなければならないが、第1四半期だけ見れば予定通り」としている。
業績の反転に向けた対策としては、法人需要を中心としたデータ通信関連の改革と、携帯を軸とした新たな事業分野の開拓と推進を挙げた。「需要が飽和状態にあるとはいえ、データ通信を見ればトラフィックを伸ばす余地はあり、法人需要を中心に改革を進めている。新規事業は、どんな形でほかの分野に出ていくのかを考えなければならない。ドコモが注力しているクレジット事業は、初期投資がかさんでいる状況。新しい市場に入っていくところについてもう少し形が見えてくると、株主に対しても成長路線を説明できるだろう」(中村氏)
番号ポータビリティ制度の開始以降、純減が続く状態について中村社長は、「依然、厳しい状況だが、影響は徐々におさまってきている」と説明。新機種や新たな料金プランの導入で、高い純増シェアを確保できるよう務めるとした。
その施策の1つが、9月1日から提供予定だった割引プラン「ファミ割MAX」と「ひとりでも割」の改定だ。7月19日にKDDIが「誰でも割」を発表したことを受けた対抗策で、割引率を“誰でも割”と同じ一律50%に引き下げるとともに、法人向けにも同等の割引サービスを提供。プランの改定による減収見込みは200億円で、当初予定した200億円を合わせると400億円に増加する。サービス開始日も8月22日に前倒しするなど(法人向けサービスは1カ月程度遅れる予定としている)、auのプランに真っ向から対抗する。
「(一番安い)基本料金が3600円のタイプSSのユーザーは基本料金が1800円になり、1000円分の無料通話分がつく。1000円分使う人なら実質の基本料金は800円になるので、ソフトバンクモバイルの980円のプラン(ホワイトプラン)と、そこそこ戦えるのではないか」(中村氏)
なおこの割引プランの導入により、ドコモと長期間契約してきたユーザーのメリットが薄れる点については問題点として認識しており、「何らかの対策を考える必要がある」(中村氏)としている。
ドコモが“他キャリアには真似できないサービス”として導入した2in1◇「2in1」は、6月末時点で6万7000契約を獲得し、現時点で10万を突破したと中村氏。「2in1を含めると、6月の純増シェアは約30%になるはずだった」(中村氏)
総務省が2in1を契約数に含めないと決めたことについては「2in1が契約数から除外されるのは心外。ユニバーサル料金も2台分払っており、何をもって契約数とするかといえば電話番号しかないのではないか」といい、ドコモで対応を進めている異名義契約が可能になっても、「“異名義で1契約というのもひどいな”ということになったら……」と懸念した。
なお番号ポータビリティ開始以降、毎月の純増数があたかもキャリアの実力を示すかのように見られることに対して中村氏は、「純増の意味は年々薄れていくだろう」という。すでに市場が飽和状態にある中では、“どの程度の顧客を抱え込んでいるか”が分かる解約率のほうが重要で、経営に及ぼす影響も大きいとした。ドコモの第1四半期の解約率は0.85%で、2006年度の下期に比べて低下傾向にあるという。
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