ウィルコムと三洋電機は、東京ビッグサイトで行われた「グッドデザイン・プレゼンテーション2007」の会場において、2者コラボレーションによるプロトタイプ端末を発表した。
このプロトタイプは、ウィルコムのPHSモジュールである「W-SIM」と、三洋電機のニッケル水素充電池「eneloop」を組み合わせたもの。サイズは42(幅)×42(奥行き)×134(高さ)ミリで重さは非公開。単三形のeneloop一本で駆動し、試作レベルでの待受時間は約250時間、連続通話時間は5時間となっている。端末デザインは乾電池をモチーフにしたもので、カラーはホワイトのみ。操作部も発話/終話キーとダイヤルキーだけという、極めてシンプルなもの。なお、この端末はコンセプトモデルであり、製品化の予定は未定となっている。
W-SIMとeneloopは、ともに2006年のグッドデザイン賞金賞を受賞したプロダクト。eneloopは自己放電を抑えた充電池で、買ってすぐに使えるほか、満充電時の電圧と容量を保ったまま長期間の保存が行える。充電池が得意とする、消費電力が大きいデジカメのような機器だけでなく、少ない電力で長時間利用するリモコンのような機器にも向いている。
なお三洋電機は現在、ウィルコムにPHS端末「WX310SA」を供給しているが、このプロトタイプについてはeneloopを提供するのみで、端末を製造したのは別メーカーだという。
発表時に行われたトークセッションには、ウィルコムからデザイン担当の堀田峰布子氏と企画担当の安島望氏、三洋電機からデザイン担当の水田一久氏と技術担当の前田泰史氏らが登壇。W-SIMとeneloop、そしてプロトタイプ端末への思いを語った。
W-SIMとeneloopの“出会い”は、今年初めに行われた2006年グッドデザイン賞受賞者が集まるイベントだったという。このイベントで堀田氏は、eneloopのコンセプトに共感し、三洋電機サイドにコラボレーションを持ちかけたという。「eneloopのコンセプトは、内蔵する機器を変えて繰り返し使えるというもので、これはW-SIMと同じ。一緒になにかできないかと、思い切って話しかけてみた」(堀田氏)
前田氏は「初恋の人に告白された気分だった」と振り返る。長年充電池の開発に携わっている立場から「携帯端末と電池の設計は非常に似ている。決められた大きさに必要な物を詰め込むのは、携帯も電池も同じ」とコメント。「最近の携帯電話はリチウムイオン電池を使っているが、ニッケル水素電池であるeneloopを担当するものとして悔しい思いがあった」と、eneloopを使った携帯端末の開発に喜びを感じたという。
安島氏は、12年前にウィルコム(当時DDIポケット)がサービスを開始した際の端末「PT-101」(京セラ製)を取り出し、乾電池で駆動する携帯端末のメリットをアピール。また、災害用品の1つとして、長期間の保存が利くeneloopと省電力のPHSを組み合わせた端末の有用性を訴えた。
「この端末(PT-101)は、専用バッテリーのほかに乾電池が使える。バッテリーはもう使えないため、今日は単四形のeneloopを入れて持ってきた。この状態で通話することができる。10年前の端末でも、乾電池を使うものならいつでも利用できる。乾電池で駆動する端末には、こうしたメリットがあると思う」(安島氏)
阪神大震災の被災経験があるという水田氏は、自身の経験から災害時の電力確保と情報伝達がいかに難しいかを説明し、eneloopとPHSによる災害用携帯端末に大きな期待を寄せた。
「被災後に、食料と乾電池を求めてコンビニに行ってみると『食べ物は残っているが、乾電池はない』と店員に言われ、こういう状況では食料より電池が重要なんだと感じた。当時はまだ携帯電話が普及しておらず、固定電話が通じない中、携帯電話で連絡を取っている人がうらやましかった」(水田氏)
その後、水田氏が会社や親族に連絡できたのは、地震から数日後のことだったという。「長期間の保存ができて繰り返し使えるeneloopと、それで駆動できるPHSがあれば、災害時に有効なツールになるだろう」(水田氏)
さらに水田氏は、eneloopの関連製品には太陽光で発電してeneloopに充電するソーラー充電器「N-SC1S」があることから、万が一、電力会社の復旧作業が遅れても、eneloopを充電し電源を確保できるとアピールした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.