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» 2007年09月03日 19時40分 公開

iMOBICON KOREA 2007:どうなる韓国のモバイルテレビ――衛星・地上波DMBの行方を占う

韓国には、「衛星DMB」と「地上波DMB」という2つのモバイル向けデジタルテレビがある。iMOBICON KOREA 2007では、それぞれの現状と今後の展望について関係者がパネルディスカッションを行った。

[佐々木朋美,ITmedia]

 iMOBICON 2007 KOREAでは、韓国にある衛星DMBと地上波DMBの2つのモバイル向けデジタルテレビについて討論が行われた。ちなみに、衛星DMBは日本のモバHO!、地上波DMBは日本のワンセグに相当するサービスだ。

 200万人の会員を擁する衛星DMBは、「TU Media」という事業者がサービスしており、月額1万1000ウォン(約1360円)で視聴できる。一方の地上波DMBは、KBS/MBC/SBS/韓国DMB/U1 Media/YTN DMBという6つの事業者がサービスしており、無料視聴が可能なことから、端末は600万台以上普及している。

DMB市場は本当に活況なのか?

photophoto パネルディスカッションでのイム・イルテク氏(左)。右はパネルディスカッションで司会をつとめた、コンサルタントのトミ・T・アホネン氏

 韓国では電車やバスの中で携帯電話の画面を覗き込み、DMB放送を見ている人が急速に増えている。また、DMB機能付きカーナビを搭載したタクシーも多く見られるようになった。

 好調に見えるDMBだが、ビデオ関連技術の開発を行うNextreaming社長のイム・イルテク氏は「Mobile TV - Innovations and Emerging Trends After Deployment」と題したパネルディスカッションにおいて、「技術的には優れているのに、予想以上に反応は小さいというジレンマがある」と述べた。

 とくに地上波DMBは、サービスのために約1億1000万ドル(約128億円)を投資したものの、広告収入は400万ドル(約4億6000万円)程度に留まっているという。また衛星DMBサービス「tu」をサービスしているTU Mediaは「いまだ収益が発生していない」(イム氏)状態と視聴者不足を嘆いている。

 無料提供される地上波DMBは広告収入が命綱だが、スポンサー側がその広告効果に対して確信を持てないでいるようだ。衛星DMBについては、地上波放送局の番組をリアルタイムで放送できないという現状から、キラーコンテンツの創出が難しいと指摘されている。

 衛星DMBは、地上波放送局が直接番組を送出している地上波DMBと競合するため、番組のリアルタイム放送が難しい状態だ。TU Mediaは地上波放送局と交渉を重ねているが、現在までリアルタイム放送は実現していない。

 一部では、衛星DMBと地上波DMB、同時にサービスするという時点で判断ミスがあったとの見方もある。それでも始まってしまった以上は、双方が生き残る手段をそれぞれの立場で探る必要があるだろう。

リアルタイム放送が活性化の鍵

 衛星DMBの現状に対しTU Media社長のソ・ヨンギル氏は講演の中で、「地上波番組のリアルタイム放送は現在MBCとの協議が済んでおり、韓国放送委員会からの(地上波番組をTU Mediaで流すための)審議の結果を待つだけとなっている」と明らかにした。

 同社はこれまでにも、韓国内外のテレビ局やケーブルテレビ局などと提携し、地上波番組のリアルタイム放送ができない不利を克服する努力をしてきた。その結果、海外プロ野球の生中継という人気コンテンツを生み出すことに成功した。

 しかし「プロ野球を除けば、あとは人気コンテンツがほとんどない」との厳しい指摘もあった。ソ氏は「海外ドラマ、アニメ、ゲームなど特定ユーザーをターゲットとした番組、SMSでリクエストを送ればそれが反映される24時間音楽番組」など、地上波DMBにはないサービスを挙げたが、いずれもTU Mediaの会員数を地上波DMBのそれ以上に増やすほどのものではなく、苦しい立場が垣間見える。

photophoto TU Mediaによるカバレッジは韓国の95%程度に達し、ビデオ17チャンネル、オーディオ20チャンネルを提供する。市場には100を超える衛星DMB端末が販売されている

 衛星DMBのカバレッジは現在、韓国の95%程度となっている。これはいまだ主要都市のみでサービスしている地上波DMBを大きく上回る利点だ。今後は時速300キロ以上で走る高速鉄道や、地下などでも受信できるよう、開発を進めるという。

 もちろん、衛星DMB対応携帯の種類も今後増やしていく方針だ。また親会社がSK Telecom(SKT)であることから、SKTの携帯電話料金とセットで安く提供する結合料金制も提供している。

 こうした長所や利点をさらに補強しユーザーを増やすには、やはりコンテンツが大切なのかもしれない。今後MBCの番組をリアルタイム放送できるようになれば状況はやや変わるかもしれないが、それでも地上波DMBの無料という壁は大きい。

技術開発進む地上波DMB

 地上波DMBは現在のところ、首都圏と主要地域でしか視聴することができない。しかし韓国放送委員会はこうした地域格差をなくすため、全国放送へ向けた動きを見せている。全国を6つの地域に分け、この地域ごとに地上波DMB番組を放送する地方局の選定を行ったのだ。

 その結果、全国放送を行うKBSと、その他エリアをカバーする民放12局が選定された。KBSは8月からは主要都市でサービスインしたのに続き、9月にはこれをさらに拡大し全国放送を開始する予定だ。

 韓国情報通信研究振興院のハン・ドンソン氏によると、地上波DMBサービスに対する不満を調査したところ、カバレッジと答えた人が73.3%にも及んでいたことからも、地方でのサービスは早急に解決すべき課題となっている。

photophoto 地上波DMBの全国サービス図。各地域に分かれ、それぞれの地方放送局が地方放送を行うこととなっている。地上波DMBユーザーへの調査では、地上波DMBの不満要素がカバレッジであるとの回答が73.3%にも達している

 また地上波DMBに関する技術開発も継続して行われている。渋滞情報や地域情報を配信する「Traffic & Travel Information」、個人に特化したサービス、データレートが向上した次世代の地上波DMBサービスなどが挙げられている。

 中でも交通情報サービスは「業界での期待度がもっとも高い」(ハン氏)という。それは現在、地上波DMB端末でもっとも多く普及しているのがカーナビと一体になった車載端末で、全普及端末中の45.6%に達しているという現状があるからだ。

 車に乗りながらテレビを見るというのも危ない話だが、運転中は音声を聞き、信号待ちなどの停車時に画面を見るとのこと。韓国は慢性的な道路渋滞が問題となっているため、渋滞を避けられる交通情報サービスの人気が高いという。

photophotophoto 地上波DMBによる交通情報。渋滞していない迂回路をカラフルに表示するほか、周辺のレストランなど地域情報も同時に提供する(左)。<個人特化形のサービス。好きな情報を検索したり、個人の好みに特化した情報を発信することができる(中央)。今後はデータレートを2倍程度に上げ、より高品質な映像を見られるようにする計画もある(右)

 地上波DMBにしろ衛星DMBにしろまだ開始から数年しか経っておらず、いまだ技術開発やカバレッジ拡大が盛んな分野だ。しかし双方、収益性がもっとも大きな問題となっている今、ユーザーを引き付け、収益性を上げられるビジネスモデルやコンテンツ作りもまた研究すべき分野といえるかもしれない。

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