SIMロックフリーのシステム手帳型端末「HTC X7501」はどこまで“使える”か(前編)(1/2 ページ)

» 2007年10月10日 12時30分 公開
[坪山博貴,ITmedia]

 HTC nipponが2007年秋に販売する予定の「HTC X7501」は、W-CDMA/GSMクアッドバンドに対応するSIMロックフリーのスマートフォンだ。ベースになっているのは、すでに海外で販売実績のある「HTC Advantage X7500」。同端末はこの2月にスペインで開催された「3GSM World Congress 2007」で発表された際に、QWERTYキーボードを備える大型Windows Mobile端末として国内でも話題になった。

 X7501ではOSがWindows Mobile 5からWindows Mobile 6 Professional Editionに変更されたほか、日本語版ではソフト、ハードともに日本語対応を果たしている。販売は携帯電話キャリアではなくHTC nipponが行い、SIMロックフリー端末としてリリースされる。NTTドコモまたソフトバンクモバイルのUSIMカードを装着すれば、3Gネットワーク(HSDPA/W-CDMA)での音声通話やインターネット接続が利用できる。

PhotoPhotoPhoto 左がタブレットPCのような本体で、中央と右がキーボードを“合体”した所。磁力で固定されるのでロック操作などは不要。机の上で使う限り簡単に“分離”することはない
Photo キーボードはディスプレイを保護するようにも“合体”可能。この場合も固定は磁力を使う。一般的に、この手の機器は磁気禁制の場合が多いので、ちょっとカルチャーショックを受けた。さしずめマグネットコーティングされた強化型スマートフォンといったところ

システム手帳サイズ、SIMロックフリーという“異色”のスマートフォン

 X7501が何より特徴的なのは、やはりそのサイズとデザインだ。キーボードをのぞいた本体の外形寸法は幅133.1×高さ97.7×厚さ16ミリとシステム手帳のようなサイズで、タッチパネルを装備した5インチのVGA(640×480ピクセル)ディスプレイが筐体の大部分を占める。ウィルコムの「Advanced/W-ZERO3[es]」やソフトバンクモバイルの「X01T」など、3インチのWVGA(800×480ピクセル)ディスプレイを持つ端末と比較すると、解像度的にもの足りないと思う人も多いかもしれないが、精細だからといって使い道が増える訳ではない。逆に本機ではフォントサイズを小さくしても実用的に使えるため、設定次第では本機の方が一画面あたりの実質情報量を増やせる事も多いはずだ。なお重量は359グラムとサイズなりで、スマートフォンとしてはかなり重いが、見ようによってはライバルになり得る「VAIO Type U」「LOOX U」といった超小型ノートPCなどと比較するとかなり軽量とも言える。

PhotoPhoto 左は4インチVGAディスプレイを搭載したW-ZERO3、3インチワイドVGAディスプレイ採用のAdvaenced/W-ZERO[es]との比較。高さはほぼ同じ。画面サイズが1インチずつ違うが、その差は大きい。右はW-ZERO3と厚さを比較した様子。キーボードをカバーにした状態でも本機の方が薄い

 着脱式のQWERTYキーボードはとても独特だ。本体とキーボードは強力な磁石で固定されるようになっており、合体させるとちょうどディスプレイを開いたノートPCのような形状になる。合体といっても軽いキーボードの上に重い本体が磁石で固定されているだけなので、机の上に置いて操作する分には問題ないが、手に持って操作するのは結構怖い。そのため付属のケースを装着した状態で、そのまま合体できる構造になっている。両手でキーボード部を保持して操作する場合にはケースを活用するのがよさそうだ。

PhotoPhoto 付属のケースはかなりしっかりした作り。カメラユニットやスタイラス収容部はカットしてあり、ケースを装着したまま利用できる。本体はプラスチック製のホルダーで3方から挟み込むようにケースに固定、キーボードは磁力でケースに張り付くようになっており、それぞれケースに固定したまま“合体”できる

 また、キーボードはディスプレイ面の保護カバーにもなり、磁石で本体の前面を保護するように固定させることも可能。この状態ではキーボードの透明部分からディスプレイの最下部だけが見える形になり、ディスプレイ表示が自動変更され、動作状態を示す各種アイコンや通知が確認できる。これはちょっとカッコイイ。

Photo 上は不在着信や未読メッセージがない場合。下はSMSを受信した直後

 ここでX7501の基本スペックを確認しておくと、CPUはMarvell PXA270で動作クロックは最大624MHz。メモリはフラッシュメモリを256Mバイト、SDRAMを128Mバイト、グラフィックスアクセラレータとしてAMD(ATI) Imageon W2284、さらにストレージとして本体に8GバイトのHDDを内蔵(MicroDriveの表記があるため、おそらく1インチクラス)する。そのほか、SDHC対応のminiSDメモリカードスロットや3Mピクセルのカメラユニット、ビデオ/アナログRGB出力も備える。スマートフォンとしてはかなりの重装備だ。

PhotoPhoto CPUはPXA270。表記はIntelとなっているが現在はMarvell Technorogyの製品。W-ZERO3シリーズなどと同じPXA270を最高クロックの624MHzで動作させている。内蔵HDD(MicroDrive)の容量は8Gバイトだ
※初出時にX01HTがPXA270を搭載しているという記載がありましたが、誤りでした。お詫びして訂正いたします。

 通信機能としてはIEEE802.11b/g対応の無線LAN、Bleutooth V.2.0を内蔵。HSDPAにも対応するW-CDMA(本レビューでは主にUMTSと表記)は2GHz、1.9GHz、850MHz帯をサポートし、GSM/GPRS/EDGEでは850M/950MHz帯、1.8G/1.9GHz帯に対応する。国内では基本的に2GHz帯のW-CDMAネットワークで利用することになるが、設定画面で確認する限り、ヨーロッパ、北米などで利用されている850MHz帯とは別に800MHz帯も選択可能となっており、山間部などで800MHz帯を利用するFOMAプラスエリアにも対応している可能性がある。とはいえ、この点に関してはHTC nipponからの公式アナウンスがないため、現状では未確認だ。

PhotoPhoto 電話の設定には「UMTS(2100+800)」という選択肢がある(左)。W-CDMAで800MHz帯を使っているのは日本だけのはずなので、FOMAプラスエリアにも対応している可能性がある(この点についてはHTC nipponからの公式コメントは得られなかった)。ちょっと分かりにくいが、白いカバーの部分がUSIMスロットでその右にminiSDスロットがある(右)。これらの上に見えるのが着脱式のバッテリーで、バッテリーを外さないとUSIMスロットにアクセスできない。X01HTなどに代表されるHTC製端末はUSIMの取り外しが結構面倒だが、本機も例に漏れず着脱はしにくい

余裕のボディサイズとQWERTキーボードが生む快適な使い勝手

 さて、外観の次はPDAとしての基本的な使い勝手を見ていこう。キーボードレスで利用する場合には左側に備えたスティック状のカーソルキー、OKキー、Windowsキーでビューワとしての主な操作が可能だ。重量があるので少々厳しいが、左手だけで持って操作するのも不可能ではない。画面の縦横を切り替えるハードウェアスイッチは備えないが、Today画面に専用ユーティティの画面切り替えアイコンが表示されており、クリックするだけで表示方向を3方向に(縦画面は片方向のみ)切り替えられる。縦画面にして片手で操作することも可能だ。

PhotoPhoto ディスプレイの左側に必要最小限の操作系が並ぶ。右端に見える小さな穴はマイク。右側にはデフォルトブラウザ起動兼「VueFLO」のオン/オフスイッチがある

 もっとも画面サイズが5インチと大きいこともあって、やはり操作はタッチパネルで行うのが快適だ。短めのスタイラスも備わるが、指先でもさほど不自由なく操作できる。Webブラウザで縮小表示を利用すると指先での操作は少々辛くなるが、スケジュールなどの利用ではほとんど指先で操作できる印象。これは、最近多い3インチクラスのディスプレイを持つWindows Mobile端末を使い慣れていると、ちょっと新鮮な感覚だ。

 キーボードは5段構成だが、最上段は特定機能を呼び出すためのショートカットキーとソフトキー、発話/終話キーなどが並び、独立した数字キーは省略されている。記号や数字は[Fn]キーと併用となる。海外モデルからキー数が変更されていないためか、スペースキーが変換キーを兼ねるのはともかく、入力モードを切り替える「文字」キーが「Fn」キー併用なのはちょっと気になるところ。少なくとも文章入力中の英数字入力は、かな入力モードのままIMEの変換機能(CTRL+U/I/O/P)を活用するクセをつけた方がよさそうだ。

Photo QWERTYキーボードは10列×5段(最上段のみ9列)で、整然と配置されている。キーサイズは、スペースキーが2列分になっている点だけが異なり、そのほかはほぼ同じ。PCのキーボードとは異なり、段ごとのズレもないので、両手でタイプするには感覚的な慣れも必要そうだ。日本語対応といっても、専用のキーボードを新たに用意したわけではなく、キートップ上の刻印を変えたものになっている

 キーピッチは約13ミリで、QWERTYキーを備えるスマートフォンとしては余裕がある。キートップは幅が約10ミリ、隣接するキーとの間には約3ミリのスペースがある。机の上などに置けば両手の指を使ってのタイピングも十分可能だが、キータッチは柔らかめでクリック感も弱めなので、好き嫌いは分かれそうだ。

 実はQWERTYキーを配置できる幅は初代W-ZERO3もほぼ同じ。しかし本機の場合は、横幅を目一杯使ってキーを配置している点が功を奏している。もちろんW-ZERO3は机上に置いてタイプするという使い方をあまり想定していないのに対し、本機は明らかにそういった使い方を想定しているためだろうか。これは設計思想の違いだと思われる。

 もちろんX7501は、両手でキーボードを挟むように持つ親指タイプにも対応できる。ただし親指の移動量がちょっと大きすぎる印象だ。親指タイプでは、W-ZERO3や、さらにコンパクトなAdvanced/W-ZERO3[es]、X01HTなどの方が快適に感じた。メールの返信、URLの入力など短めの文字列の入力なら大きな不満は感じないが、長文入力時にはやはり机上においてタイプする方が快適だった。

Photo W-ZERO3のキーボード部との比較。キー配置に割ける面積はさほど変わらないが、設計思想、つまりどのようなスタイルでタイピングするかの想定が異なるので、大きく異なる形状になっている
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