“インターネットの先進機能を手のひらに”――進化するNokiaのタブレット、2008年夏にはWiMAXに対応Nokia World 2007

» 2007年12月07日 13時53分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
Photo Nokia マルチメディア事業部コンバージェンスプロダクツ担当上級副社長のアリ・ヴァタネン氏

 携帯電話メーカーNokiaが、タブレットコンピュータを最初に発表したのが2005年。通話機能がない端末は同社初となり、世間を驚かせた。あれから2年、同社のタブレットコンピュータは現在、3世代目となった。

 Nokiaが12月4日・5日にオランダ・アムステルダムで開催した「Nokia World 2007」で、同社マルチメディア事業部コンバージェンスプロダクツ担当上級副社長、アリ・ヴァタネン氏がタブレットコンピュータの戦略について説明した。

モバイルインターネット端末ならではのフォームファクターが重要

 現在、“インターネットをモバイルで”、というのは各分野が認めるトレンドで、「小型端末へのレースがはじまっている」とヴァタネン氏はいう。こうしたニーズへの対応を目指すデバイスは、ウルトラモバイルPCをはじめとする小型PC、スマートフォン、PDAなどがある。

 この分野の製品作りでは、モビリティが加わることで利用の形が変わることに配慮すべきというのがNokiaの考えだ。「インターネットとモビリティの組み合わせには、まったく新しいフォームファクタが必要。PCをただ小型化するのでは次世代コンピュータとはいえない」(ヴァタネン氏)。携帯電話についても、ほとんどの要素を満たしているが、通信キャリアなど通信業界の「レガシーなバリューチェーンに結びついている」点を指摘する。

 コンピュータはメインフレームからPCになり、「10年ごとに新しいコンピュータ世代が登場している」とヴァタネン氏。新しい世代には、まったく新しいコンピュータ端末が必要と主張する。

 Nokiaのインターネットタブレットは、この分野でのNokiaの実験となる。Nokiaは10月に第3世代となる「Nokia N810 Internet Tablet」を発表。OSにLinuxを搭載した同コンピュータは、初代の「Nokia 770」ではギークとよばれるユーザー層を中心に人気を博したが、2代目の「Nokia 800」ではインターネットに敏感な層をターゲットとし、最新のN810では一般ユーザーを狙う。

Photo Nokiaの最新のタブレットコンピュータ「Nokia N810」。米国、欧州、シンガポールなどの一部アジア市場で提供され、小売価格は約479ドル。N810向けには個人開発者が多数のフリーソフトを開発しているという。デモでは、フィンランドの20代の開発者が開発したという音楽管理ソフト「UKMP」を見せてくれた。タッチ画面を利用し、指でなぞってアルバムをブラウジングできる

Photo スタイラスでの入力にも対応。GPSレシーバを内蔵し、地図データも用意する

Linuxの採用で、柔軟なカスタマイズが可能に

 ヴァタネン氏はここで、「カジュアルインターネット」というトレンドについて説明する。これまでの流れでは、ビジネスソリューションが新しい技術開拓の火付け役となり、個人ユーザーはそのあとで新技術の恩恵を受けていた。しかし現在は、個人ユーザーが技術に火をつけるという逆の流れが起きているという。YouTube、Facebook、Second Lifeなどは、一般ユーザーで構成されるカジュアルインターネットの一部となり、この“カジュアルインターネットユーザーがフォームファクターの流れを決める”というのがヴァタネン氏の意見だ。

 Nokiaのタブレットコンピュータは3機種とも、W-CDMA、HSPAなどの携帯電話網をサポートしていない。これにについてヴァタネン氏は、「セルラー無線技術の問題ではない。インターネットタブレットに関しては、サービス加入のしばりがないオープンインターネットモデルが望ましいと思った」と説明する。「デバイス、サービス、接続を切り離し、ユーザーに選択肢を与えたい」(ヴァタネン氏)

 N810は、解像度800×480ピクセルのメインディスプレイを搭載し、スライドするとQWERTYキーボードが現れる。ディスプレイはタッチパネル対応で、ソフトウェアキーボードを使った入力にも対応する。無線機能としてWiFiとBluetoothをサポートし、携帯電話とはBluetooth経由で接続が可能。GPS機能とNavteqの地図データを使えば、ナビゲーション端末の代わりにもなる。「車の中ではカーナビとして利用し、車を降りた時には歩行者モードで利用することも可能」(ヴァタネン氏)。メモリは内部メモリが2Gバイトで外部メモリ(miniSD)を使うことで最大10Gバイトまで拡張可能。3.5ミリのヘッドフォンジャックやUSBポートなども備える。

 ソフトウェア面では、Flash 9やAjaxに対応したMozillaブラウザを搭載し、Gmail、Skype、Gizmoなどを利用できる。MP3ファイルや動画をストリーミングできるメディアプレイヤーを内蔵し、メディアファイルを管理する「Jukebox」も用意。UPnPを利用してPCからファイルを転送でき、PCに格納したビデオなどのコンテンツをN810のフォーマットに変換する無料ソフトもサードパーティから提供されているという。

 N810ユーザーは、サードパーティメーカーやソフト開発者が提供するアドオンや拡張機能、アプリケーション、ゲームをインストールして、インターネットタブレットを“自分専用の1台”にでき、「Linuxハンドヘルドとしては最高レベル」とヴァタネン氏は胸を張る。

 Nokiaがカジュアルインターネットという流れに対応する中で、重要な役割を果たすのがLinuxだ。Nokiaはこれまでとは違う方法でタブレットコンピュータという市場のニーズに応えるため、オープンソースの「Maemo」を採用している。「できるだけオープンソースを採用し、オープンソースの流れに参加したい」(ヴァタネン氏)。オープンなアーキテクチャにより、サードパーティに革新の余地を与えつつ、独自の知的所有権も保護できるという。このようなオープンソースと独自性の組み合わせは強みとなるとした。

 インターネットタブレットは、2008年夏までにWiMAXをサポートしたエディションを発表する計画で、本格的なカジュアルインターネット時代の到来に向けて準備を薦めているという。

省エネ仕様のインターネットタブレット

 インターネットタブレットは、バッテリーの持ちにも配慮している。N810はアイドル状態の消費電力が50ミリワットで、稼動時は1.2ワット。平均的なデスクトップPC(LCDディスプレイ付き)の場合、アイドル時が100ワット、稼動時が300ワット。ノートPCでは13ワット(アイドル時)、30ワット(稼動時)というから、確かに省電力だ。デスクトップPC 600万台とN810 600万台を比較すると、N810は1ギガワットの電力を節約できるという。


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