3Gの発展はまだまだ続く──HSPA+、DO Advancedを提供するクアルコム(1/2 ページ)

» 2008年05月30日 05時51分 公開
[園部修,ITmedia]

 日本国内では、スーパー3G/LTEUMB、さらには4Gといった、現行のHSDPACDMA2000 1X EV-DO Rev.Aよりさらに先の通信技術に関する議論が花盛りだ。OFDMA(直交周波数分割多元接続)と数十MHz以上という幅広い帯域を活用して高速なデータ通信を可能にするこれらの技術は、来るべきモバイルブロードバンド時代の最も有力な選択肢とされており、NTTドコモを筆頭に、キャリア各社が積極的に研究開発や実験を行っている。

 しかし、世界の携帯電話事業者を見てみると、早急にLTEや4Gのネットワークへ移行しようという積極的な動きはあまり見られない。どちらかというと、多くの事業者は3Gのネットワークを導入したばかりであり、いかに現行の3G技術の効率を上げていくか、3Gネットワークへの投資を無駄にしないか、といったことに関心が高いようだ。QUALCOMMでもCDMAの技術をベースとした3Gはまだまだ発展の余地があり、急いでOFDMAにかじを切る必要はないと考えているという。

HSPA+で2011年には下り最大84Mbpsを実現

Photo HSPAからHSPA+に至るロードマップがすでに策定されている

 NTTドコモやソフトバンクモバイル、イー・モバイルが採用しているW-CDMA方式。このW-CDMAの初期のスペック(3GPP Release 99)では、上り/下りともに通信速度は最大384kbpsだった。

 現在日本市場では下りの最大データ転送速度を向上させるHSDPA(3GPP Release 5)の導入が進んでおり、ドコモとイー・モバイルは下り最大7.2Mbps、ソフトバンクモバイルは下り最大3.6Mbpsでサービスを提供している。HSDPAの仕様上の下り最大データ転送速度は14.4Mbpsで、各社ともいずれはこの速度まで性能を向上させるものと考えられる。

 このHSDPAの次に予定されている高速化が、HSUPA(3GPP Release 6)だ。下りのデータ転送速度を向上させるHSDPAに対し、HSUPAは上りのデータ転送速度を速くする。ワールドワイドでは2008年中にサービスを提供する事業者がでてくると言われており、HSUPAが導入されれば、上りの最大データ転送速度は5.72Mbpsにまで向上する予定だ。

 HSPA(HSDPAとHSUPAの総称)に続く次のステップが、HSPA+(HSPA Evolved)である。3GPPではRelease 7としてスペックが制定されており、2009年初頭の商用化に向けて開発が進められている。Release 7では、2x2のMIMO技術を活用することで下りの最大データ転送速度が28Mbps、上りの最大データ転送速度も11Mbps(いずれも理論値)にまで向上する。

 HSPA+では、ピークのデータ通信速度が上がるだけでなく、周波数利用効率もさらに高くなるため、音声、データともにキャパシティが増えるというメリットもある。データのキャパシティはHSPA比で約2倍(後述の干渉制御技術活用時)、音声のキャパシティに至ってはRelease 99比で3倍にもなるという。

Photo データ通信のキャパシティがHSPAの2倍、音声通信のキャパシティはRelease 99の3倍に達する。既存の3Gのシステムと完全な互換性を持ち、10MHz以下の帯域では、非常に効率の高いシステムとなる

 すでにQUALCOMMは「MDM8200」というHSPA+対応チップセットを発表しており、チップのサンプル出荷が始まっている。2008年中に、VodafoneやTelefonica、3などとトライアルを始める計画だ。

 2010年以降は、変調方式を64QAMに高度化することで、下りの最大データ転送速度を42Mbpsに高速化した3GPP Release 8が登場すると目されている。Release 8の正式スペックはまだ定まっておらず、現在検討が進められている段階だ。

 さらに2011年ころには、3GPP Release 9という仕様が準備されており、この時点で下りの最大データ転送速度は84Mbpsに、上りも23Mbpsにまで引き上げられる。この高速化を実現するのは、5MHz幅のキャリア(搬送波)を2本束ねてスループットを約2倍に向上させるマルチキャリアという技術だ。マルチキャリアによって、Release 8の下り最大42Mbpsを、2倍に高速化する。

 ちなみにマルチキャリアの技術は、現在Release 8の仕様にも含めるよう働きかけを行っているという。マルチキャリアは、MIMOのように、基地局に近くて電波の環境がいい場合に性能が高くなる、というたぐいのものではなく、基地局の近くからセルの端部まで、どこでもほぼスループットが2倍になる。そのためマルチキャリアだけを利用しても、2x2のMIMOよりも高いスループットが得られるケースもあるようだ。もちろん下り最大84Mbpsを実現するためには、2x2のMIMOとマルチキャリアを組み合わせる必要がある。

PhotoPhoto HSPA+では、5MHz幅のキャリアを2つ利用する「マルチキャリア」により、さらに高いデータ転送速度を得る。基地局の近くからセルの周辺部までのほぼ全域で、シングルキャリアの2倍のスループットが得られるのがポイントだ

 このようにW-CDMAにはロードマップとして今後多数の拡張が予定されており、10MHz程度の帯域でも十分なモバイルブロード環境が実現できるとQUALCOMMは言う。OFDMAを活用するLTEやUMBといった技術は、数十MHzクラスの広い帯域が確保できれば性能も高いが、1Hzあたりのデータ転送速度で比べると、CDMAもOFDMAもそれほど大きな差はない、というのが同社の考えだ。

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