手ブレ補正、フレーム補間、その先で目指す“ケータイを変える”技術は――モルフォ(後編)ケータイの未来を創る“裏方”列伝(2/2 ページ)

» 2008年07月14日 07時00分 公開
[荻窪圭,ITmedia]
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ITmedia テレビのフレーム補間は「倍速120コマ」や「倍速駆動」と呼ばれる、コマとコマの間にデジタルで補間したコマをいれることで、動きを滑らかに見せる技術ですよね。それがワンセグにもやってくる、と。

平賀氏 そうです。ただ、普通のデジタルのテレビのフレーム補間は秒60fpsを120fpsに増やすものですが、ワンセグは元が15fpsであり、それを30fpsに補間する方がハードルが高いんです。ただその分、フレーム間のコマの動きが大きいですから効果は絶大です。

Photo コマとコマを見比べ、リアルタイムでその中間の画像を生成する

ITmedia 実際には2枚の絵を見比べて、その間に来るべき絵を補間して作って挿入するわけですよね。

平賀氏 難しいのは、グローバルなモーションだけではないということです。背景がパンしていて、その上に字幕が載っているときには、字幕をきれいに処理しなきゃいけないし、動きが速すぎるときや場面転換時は補間しないようにしなければならない――といったように、その判断も含めて難易度が高い技術です。さらにテロップが出ていると難しいんです。補間によって文字がゆがんではいけませんから。

 また、ワンセグはフレーム補間には非常に条件が悪いんです。フレームレートは低いし、画質は悪いし、電波の条件によって劣化しますし。

ITmedia それをリアルタイムで処理するわけですよね。

平賀氏 そうなんです。“要求されるスピードが絶対”なんです。静止画だと多少かかっても許されることがありますが、ワンセグだと15fpsですから、フレームとフレームの間に絶対に終わらせなきゃいけない。最初は今の4倍くらいかかっていたんです。「絶対にムリ」と思ったんですけど、やりました。

 その中でできたわけですから、他のメディアにもっていくことも考えています。例えばYouTubeなどのストリーム型のコンテンツに対しても、この技術は非常に有用です。

モルフォはこれから、どこを目指すのか。

ITmedia 今後、モルフォはどこへ向かうのでしょう?

平賀氏 ベースになってるのは動きを検出する技術ですね。それも2つあって、1つは手ブレ補正のようなグローバルな全体の動き(フレームとフレームがどういう風にずれたか)、もう1つはフレーム補間で行うような、各部分がどう変化するかを見るもの。それと顔検出技術ですね。将来はもう1つ、画像検索系の技術をやっていきたいですね。顔検出もその1つになるんですが。例えば……

西谷氏 これ以上は言っちゃだめです(笑)。

平賀氏 1ついえるのは、我々は“画像処理のコアを作っていきたい”ということですね。検索システムではなく、“それに使える要素的な技術”を開発することに特化しようと思ってます。自分たちでサービスを提供するとか、そういうことをするつもりはないんです。

 今までは“撮る”(キャプチャする)技術として、手ブレ補正や顔検出、パノラマなどを手がけてきました。次にフォーカスするのは“観る”ですね。テレビを観るということで、フレーム補間を始めており、この2つが画像にかかわる2大要素になります。

 その先は“ネットワーク系”になるかなと思ってます。撮った写真をどうやって管理するか、共有するか、送るか――ということですね。ケータイネットーワークの高速化が進み、今後は3.5Gになって上りも下りも速くなりますから、ネットワークにつなげることで、それが可能になるわけです。

 今でもさまざまなオンラインのアーカイブサービスがありますが、当然ながら、今あるようなものを作りたいわけではないんです。ユーザーがネットワークに接続すると、それを介して写真や動画を気持ちよく視聴できる世界を作り上げていきたい。ネットワークとつながっているのがケータイの面白さですから。特に、“GPSがついて位置情報が分かって”というところが、デジカメにはないケータイの特徴ですから、このあたりは生かしていきたいところですね。

ITmedia では、最後に読者の方にひとことお願いします。

平賀氏 そもそも会社を立ち上げたのは、お客様に使ってもらってうれしいと感じていただけるような製品を、エンジニアとして作っていこうという思いがあったからでした。それはある程度、実現できたと思っています。

 今思うのは、日本に魅力的なテクノロジーの会社があまり多くないということです。例えば優秀な学生の多くが“Googleに行きたい”と言っているような状況はいかがなものかと。

 ソフトウェア技術で世界のスタンダードを作っている日本の会社って少ないと思うんです。我々は画像処理において、“単に使われる”のではなくて、“モルフォの技術だから使われる”ようになりたい。それはオーディオの世界で例えると「ドルビー」のような存在でしょうか。エンドユーザーは、細かい技術は分からなくても“DOLBY”のロゴが入っていると“音がいい”と分かるような。同じように、モルフォのロゴが入っていたら“絵がきれい”“使いやすい”とイメージされるような会社になりたいですね。

ITmedia ドルビーもボーズも個人名なので、会社名を「平賀研究所」にすれば(笑)。“平賀博士の開発です”みたいな。

平賀氏 いや、個人名はちょっと……(笑)


 取材して印象に残ったのは、意外に苦労話が出てこなかったところ。“技術的な困難を乗り越えるのは当たり前、それがうちのウリ”というニュアンスが漂ってくる。

 要素技術を開発して各社の製品に採用してもらう――という会社なので、モルフォの技術が一般の目に触れることは今のところ少ない。でも、実はこういう会社がケータイの技術的発展の一端を担っているのだ。

 そうそう、平賀社長は「優秀というより、いいマインドを持った学生を募集してます。おもしろいことをやりたい学生がいれば歓迎します」と言っていた。“おもしろいことをやりたい”という人はぜひ。

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