イー・モバイルは、上りの通信速度を最大1.4Mbpsに高速化するHSUPAサービス(カテゴリ3)を11月20日に開始した。同時にHSUPAに対応したUSBスティック型端末「D21HW」(Huawei製)、「D21LC」(Longcheer Technology製)の2機種を発売した。なお、PCカード型の「D21NE」は、12月上旬に発売される予定だ。
D21HWとD21LCはどちらもHSUPAに対応しているほか、下り最大7.2MbpsのHSDPA通信も行える。HSDPAは下り速度を高速化する規格のため、上り速度はW-CDMA規格の384kbpsのままだった。最大1.4MbpsのHSUPAサービスを導入したことで、上り速度は理論値で約3.6倍高速になる計算だ。
ファイルや動画などのダウンロードが快適になる下り速度の高速化に比べ、上り速度が向上することにはどのようなメリットがあるのだろうか。例を挙げると、容量の大きい画像ファイルやオフィス文書を添付したメールの送信時間が短縮するほか、画像や動画を使ったブログやSNSの更新もこれまでより高速に行える。また、ビデオチャットなどリアルタイムで動画を送信するサービスも途切れにくくなるだろう。
そこで実際に、D21HWを使って上り最大1.4Mbpsに対応したHSUPA通信サービスの実力を確かめてみた。

「D21HW」のパッケージ。DVDのトールケース2枚分ほどのサイズのケースに、D21HW本体と、ドライバCD-ROMとマニュアル類を同梱する。ゼロインストールに対応しているため、PCにD21HWを装着するだけで自動的にドライバやユーティリティソフトのインストールが始まる。本体の保護カバーやケースなどは付属しない
D21HWはUSBスティック型でサイズは28(幅)×92(高さ)×10(厚さ)ミリ、重さは約25グラム。USB端子部分が回転して、収納できるようになっている。同時に発売された「D21LC」にはmicroSDスロットが搭載されているが、D21HWには搭載されていない
既存モデルとなるHSUPA非対応の「D12LC」と比較。D21LCも下り速度は最大7.2Mbpsと同じだが、上り速度が最大384Kbpsと遅い。D21LCと似た形状、サイズのD12LCだが、D21HWと比べるとやや大柄。D21HWはすっきりしたデザインだ
裏面にSIMカードを装着するスロットが配置されている。今回は筆者の都合により音声端末用のSIMカード(白黒)が装着されているが、購入時についてくるのはデータ端末用のSIMカード(白赤)だ。もちろん、音声用SIM(白黒)でも利用可能だった。PC(工人舎「SH6WX04A」)に装着すると、D21LCやD12LCは真横に突き出すようになる、D21HWは端子部分が回転するので、上下の向きを変えられる。EMロゴの横にあるのは、通信状態を示すLED
専用ユーティリティ「EMOBILE HW UTILITY」画面(写真=左)。ユーティリティやドライバをインストールすれば、自動的にダイアルアップ接続に「emb.ne.jp」が登録されるので、その後はユーティリティを起動しなくても接続できる。ただし、ユーティリティを使うと、利用時間や履歴なども確認できる。右の写真は、デバイスマネージャから見たD21HW| 機種 | D21HW | D12LC | ||
|---|---|---|---|---|
| 方向 | 下り | 上り | 下り | 上り |
| 1回目 | 2.562Mbps | 1.312Mbps | 2.406Mbps | 0.356.8Mbps |
| 2回目 | 2.417Mbps | 1.322Mbps | 3.348Mbps | 0.351.9Mbps |
| 3回目 | 2.136Mbps | 1.276Mbps | 2.787Mbps | 0.372.1Mbps |
| 平均 | 2.372Mbps | 1.303Mbps | 2.847Mbps | 0.3603Mbps |
今回はD21HWの通信速度を、Studio Radishの速度測定システム「Radish Networkspeed Testing」で計測した。比較対象のD12LCも、同一の場所で同じ時間帯に続けて計測している。
計測場所は東京都杉並区のマンションの3階(見渡しのよい最上階)で、できる限り窓際を選んだ。D21HWは、PC装着時に端子部分が動くため、本体が0度/45度/90度に傾けられる。それぞれの角度で速度を測定したが、大きな違いはなかったので45度で計測した結果を示す。

週末の夜間に行った「D21HW」(写真=左)と「D12LC」(写真=右)の測定結果。測定条件としては共に「東京」、「測定方法:両方向」、「測定精度:高」、「データタイプ:標準」を選択した。データタイプは「圧縮率高」でも同等の結果が得られていた。下りはともに2〜3Mbps程度で、上りは「D21HW」が1〜1.5Mbps程度、「D12LC」が350〜400Kbps程度となった|
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速度測定中の様子。上りは安定して1Mbps以上を出していた
(このムービーをご利用いただくにはFLASHプラグイン(バージョン8以上)が必要です。ムービーはこちらからでも参照できます) |
| 端末 | D21HW | D12LC |
|---|---|---|
| 1 | 288ms | 305ms |
| 2 | 266ms | 319ms |
| 3 | 285ms | 319ms |
| 4 | 244ms | 339ms |
| 平均 | 270ms | 320ms |
下り速度は、以前と比べるとユーザー数が増えてきたため、同じ場所、同じ時刻帯での通信速度が徐々にだが遅くなってきている。それでも今回は、2M〜3Mbpsは安定して出ていたので、他社のサービスと比較しても申し分ないだろう。
注目の上り速度は、D21HWが1.3Mbps程度をコンスタントに出しており、D12LCが350Kbps程度だったのと比べると約3.6倍の高速化を実現した。上り速度が約1.3Mbpsなら、約10Mバイトのファイルをアップロードするのに約1分で済む。画像が何枚もあるブログやSNS、報告書などもラクラクとサーバーにアップロードできる。
また、HSUPA導入との関連性は不明だが、D21HWは応答速度と遅延速度(RTT)がD12LCに比べて改善されていた。応答速度はまだ固定通信と比べられるほどではないが、少しでも速くなればWebページ閲覧時でも、細かいデータのやり取りが短縮されるため、体感速度がかなり速くなる。また、細かいパケットのやり取りが続くなら、遅延速度の向上が積み重なることで、多少なりとも快適になる。
最後に気になるのが、HSUPA対応エリアだ。イー・モバイルによると、自前の人口カバー率は約85%で、HSUPAに対応するのはそのうち40%。全国47都道府県の主要地域を中心として、徐々に対応エリアを拡大して2009年3月までに自社サービスエリア全体をHSUPA化するという。比較的早く、“イー・モバイルのエリアならどこでもHSUPA”という環境になりそうだ。
モバイル環境でも、大容量ファイルのメール送信やブログ/SNSの更新を行う機会は増えている。今回はあえて非力な小型PCを使って検証を行ったが、十分に通信速度の向上を体感できた。いずれすべてのサービスエリアがHSUPAに対応することを考えると、同社のデータ端末を購入するならD21HW/D21LC/D21Nが有力候補の1つになるだろう。
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「OpenOffice.org」(日本語/Windows版)をHTTP経由でダウンロードしながら、筆者が個人的に利用しているレンタルサーバにファイルをFTP経由でアップロードしている状態をモニタリングしている様子。通信しているサーバの状況にもよるが、速度測定サイトと比べるとやや劣る結果となった。とはいえ、上りは安定した通信ができている
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