HSPAやLTEなどの技術が注目を集める一方で、インドやアフリカなど、新興国における携帯電話の普及もGSMAの重要な課題となっている。これらの国では、国民の所得が低く国内の貧富の格差もあることから、通信事業者は総じて均一的なサービスを提供することが困難。また、先進国のように付加サービスで利益を上げることも容易ではなく、極限までコストを下げてサービスを提供することが強く求められる。
さらに、利用者が使う端末の価格も重要。最近は中国製の安価な端末が東南アジアなどで大量に販売されている。価格は50ドルから100ドル(日本円換算で約1万円)前後。大手メーカーの製品よりはかなり安いが、携帯電話のためのサービス料金に(日本円換算で)月100円以下ほどしか支払えないようなユーザーにはそれでも手が届かない。
そこで注目されるのが、ローコスト端末の開発製造に特化したODM(Original Design Manufacture:相手先ブランドによる設計・製造)メーカー。中国「Wingtech」社はGSMやCDMA、PHSに加え、中国の3G方式であるTD-SCDMA端末を生産する。このうち最も安価な端末は、わずか100人民元以下(=1500円以下)で製造できるようにするとのことだ。これにより、新興国はもとよりMVNOによる新規参入事業者も非常に安価な自社ブランドの端末を提供できるようになる。
ブースに展示される製品には"Ultra low-cost"の表示がずらりと並び、100人民元のロースペックな“1500円ケータイ”のほかにも、安価な音楽携帯やファッション性も意識した端末などさまざまな機種が展示されていた。低コストを生かし、年配者向けや子ども向け端末なども今後力を入れていきたいとのことである。
日本ではやや古い「1円/0円」端末や月額料金は“ユニバーサルサービス料(2009年1月まで6円)だけ”といった安価に携帯を所持する手段もあるが、端末製造コストそのものがはじめから安価だと状況は異なるものになりそう。今後、キャリアによってはこのような機種を導入するシーンも増えるだろうか。
山根康宏:香港在住の携帯電話研究家。一企業の香港駐在員時代に海外携帯電話に興味を持ち、2003年に独立。アジアを中心とした海外の携帯電話市場の状況や海外から見た日本の携帯電話市場についてなど、海外の視点からコラムや記事を日本のメディアに執筆するほか、コンサルティング活動も行う。携帯コレクターとしても知られ、所有する海外携帯電話の数は500台以上。
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