サービス開始から5年、おサイフケータイはどこへ行く?神尾寿の時事日想(1/2 ページ)

» 2009年01月07日 16時20分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]
初代おサイフケータイ(iモードFeliCa)を手にプレゼンテーションを行う夏野剛氏、2004年撮影

 「最初の2年は準備段階、3年目にブレイクスルーをして、5年後には(多くの人々の)生活インフラになる」

 2004年6月16日。生まれたばかりのおサイフケータイを片手に、当時NTTドコモでマルチメディアサービス部長だった夏野剛氏(現、慶應義塾大学大学院、政策・メディア研究科特別招聘教授)はそう語った。ソニーの非接触IC“FeliCa”を携帯電話に内蔵し(モバイルFeliCa)、ネットサービスと携帯アプリを介して、携帯とリアルなサービスやビジネスを結びつける。このコンセプトはとても斬新で、当時から「5年後の世界」を見据えたものだった。

 2009年、おサイフケータイは登場から5年目に入った。

 おサイフケータイの普及台数は約5300万台に達した。携帯電話の総契約数は約1億。この中には通信モジュールや法人契約の携帯電話、音声定額目当ての2台目需要といったものも含まれているので、個人ユーザーがおサイフケータイを所有している割合は、すでに70%を越えたと見ていいだろう。気が付けば、おサイフケータイは日本の携帯電話サービスやビジネスで重要な“インフラ”にまで、その規模を拡大している。

おサイフケータイには“指でカードを持つ”ことをイメージしたマークが付けられている。マークは3キャリア共通(左)。とはいえ、当初登場したときはおサイフケータイはドコモのみのサービスだった。2004年の夏モデルとして登場した、初代おサイフケータイの1つ、ソニー・エリクソンの「SO506iC」(中)。おサイフケータイに内蔵されているFeliCaチップ(右)

 一方、FeliCaそのものは「社会インフラ」として、この数年で不動の地位を築いた。交通ICと電子マネーを普及の両輪として、FeliCaのサービスインフラは全国にあまねく広がった。電子クーポンや会員証、電子キーといった分野でもFeliCaの利用は急拡大している。日本の非接触IC技術のデファクトスタンダード(事実上の標準)をいち早く導入したことで、おサイフケータイはこれらの“FeliCaインフラ”を有効に活用できるポジションにある。

 さらに、おサイフケータイの新たな活用方法として拡大しているのが、「3者間通信」を用いたUIとしての利用だ。モバイルFeliCaは、QRコードやBluetoothよりも簡単な操作で近接通信が可能になるため、ケータイと他のデジタル機器を連携させるサービスではさまざまな応用可能性がある。例えば、昨年から注目されているデジタルサイネージサービスなどでは、表示灯の「ナビタッチ」(参照記事)やストリートメディアの「Touch! ビジョン」など、おサイフケータイを使ったコンテンツやサービス連携を導入しているものが多い。

JR秋葉原駅中央口に設置されているナビタッチの例。おサイフケータイを使った、地図を組み合わせた広告メディアだ
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