UQ WiMAX、その可能性と課題神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

» 2009年02月09日 10時30分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 2月3日、UQコミュニケーションズが国内初となるモバイルWiMAXを用いたブロードバンドサービス「UQ WiMAX」のサービスを発表した。詳しくはリポート記事に譲るが、2月から首都圏で試験サービスを開始し、7月1日に商用サービスに移行する。あわせてUQ WiMAX対応機種4モデルと、月額4480円という料金も発表された。

 周知のとおり、2009年から始まる“次の10年”のビジネスの広がりでは、ワイヤレス(モバイル)ブロードバンドの進展が重要な要素の1つになる。そして今年、ウィルコムの「WILLCOM CORE」とともにその先兵を務めるのが、UQコミュニケーションズのUQ WiMAXだ。

 UQ WiMAXのビジネスとサービスは、スムーズに離陸できるのか。今回のMobile+Viewsでは、UQ WiMAXの記者会見と発表を振り返りながら、同社の可能性と課題について見ていきたい。

主戦場は内蔵/組み込みの「モジュール市場」

Photo UQコミュニケーションズ 代表取締役社長の田中孝司氏

 「なんちゃってブロードバンドではない」

 UQコミュニケーションズの代表取締役社長、田中孝司氏は、自社のサービスをそう表現した。“なんちゃって”という言葉は、一部の携帯電話キャリア幹部が「ケータイ」の特長を指して好んで使う言葉だ。1999年のiモード登場以降、携帯電話向けのサービスやコンテンツはインターネットの技術やトレンドを“ケータイでも使いやすいように”作り替えてビジネス化してきた。オリジナルそのままではなく、ケータイ向けにアレンジする。この手法を端的に言い表したのが、「なんちゃって」というフレーズである。

 田中氏は、この「なんちゃって」文化を真っ向から否定。さらにプレゼンテーションの中で何度も現行の3GやLTEとの違いを強調し、携帯電話向け通信技術と異なる技術的な背景や、その優位性をアピールした。

 UQ WiMAXが使用するモバイルWiMAXは、無線LAN技術の延長線上に連なり、屋外や移動中でも利用できるようにしたものである。高速・大容量通信に向いており、仕様上の下りの通信速度は最大40Mbpsとなっている。記者会見中に行われたデモンストレーションでは、下り約16Mbps、上り約3.9Mbpsのスピードを叩きだした。

 「(UQ WiMAXは)スピードが速いだけではない。SIMカードがないので契約手続きが簡素化でき、電話番号がないのでユニバーサル料金もかからない。(無線LANのように)ダイヤルアップ処理なしで手軽にインターネット接続ができる」(田中氏)

 特に“SIMカードがない”ことは、内蔵モジュールを展開する上で有利だ。チップそのものの小型化・簡素化ができるだけでなく、内蔵モジュールを搭載する機器を設計する際にも、SIMカードの着脱を意識せずにすむ。すでにインテルがノートPC向けのモバイルWiMAX内蔵モジュールを開発しており、「今後は無線LANチップと併用する形で、ノートPCへのモバイルWiMAXチップ内蔵が進んでいく」(田中氏)ことが考えられる。さらにMIDUMPC、ポータブルゲーム機やデジタルカメラ、家電などコンシューマー分野からはじまり、将来的には自動販売機やエレベーター、駐車場管理システムなどBtoBの組み込み市場まで「エリア拡大と連動しなければならないが、内蔵モジュールで組み込み市場も積極的に狙っていく」(田中氏)。

 今後のデータ通信市場の拡大を見据えると、主戦場になるのは内蔵モジュールによる組み込み市場だ。まずはノートPC向けの内蔵モジュールが注目であるが、その後に立ち上がるのが、様々なポータブルデジタル機器や、BtoBの組み込み市場である。キャリア各社にとって、ここにどれだけ浸透し、新たなビジネスやサービスの土台にできるかが、"モバイルブロードバンド時代"の趨勢を決める鍵となる。

 こうした組み込み市場は、すでにNTTドコモとKDDIが積極的な開拓を進めており、2008年に大きく躍進したイー・モバイルも2009年以降の重要市場の1つと定めている。例えば、ドコモの3Gモジュールはソニーの「VAIO type P」など話題のミニノートPCから、コインパーキング最大手、パーク24の駐車場まで形を変えて幅広く採用されており、KDDIの通信モジュールはトヨタ自動車やいすゞ自動車が導入するなど自動車業界に浸透している。

 このようにUQコミュニケーションズは、すでに3Gキャリアが牽引している組み込み市場に“新規参入”する形になる。その勝算について田中氏は「近い将来、UQ WiMAXが組み込み市場を席巻する」と力強く話す。

 「携帯電話の技術やサービスを拡張してきた3Gのデータ通信モジュールに比べて、(モバイルWiMAXの)内蔵モジュールはコスト面で優位性がある。また利用時にダイヤルアップ処理がいらないなど、運用もしやすい。将来的には、組み込み市場はモバイルWiMAXが獲得できると考えている」(田中氏)

 特に有利なのはインテルと共同歩調が取れるノートPCやNetbook、UMPC/MIDへの内蔵であるが、「サービスエリアが広がれば、(PC以外の)BtoBやBtoBtoC市場にも積極的に進出する」(田中氏)という。また、UQコミュニケーションズではさまざまな業種業態のMVNOを受け入れる方針を打ち出している。そのため同社のモバイルWiMAXインフラを使い、組み込み市場に特化した通信サービスを提供するMVNOの登場や、自動販売機やATMメーカー自らがMVNOになって通信サービスを提供するというシナリオも考えられるだろう。

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