ドコモ、一連の災害対策を完了――大ゾーン基地局を全国に104基設置さらなる対策をスタート(1/2 ページ)

» 2012年02月23日 22時22分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 NTTドコモは2月23日、東日本大震災の発生を受けて策定した災害対策の完了を報告した。これには、同日発表された「災害用音声お届けサービス」やエリアメールへの津波情報の配信も含まれている。

photo NTTドコモ取締役常務執行役員の岩崎文夫氏

 東日本大震災では、携帯電話の基地局や伝送路が被災して通信ができなくなったほか、設備が無事でも長期間かつ広範囲の停電により、サービスの再開・復旧が遅れた。また、安否確認のための音声通話が集中し、輻輳を防ぐために発信を規制。その結果、被災地以外でも通話ができにくい状態に陥った。ドコモはこれらの教訓を踏まえ、2011年4月に新たな災害対策の実施を表明していた。

 NTTドコモ取締役常務執行役員の岩崎文夫氏は、「震災直後の東北エリアでは約4900局でサービスの中断があった。復旧には4000人体制で臨み、4月下旬にはほとんどのエリアを回復させた。その大震災の教訓を踏まえ、2011年4月から新たな災害対策を計画し実行してきたが、それがおおむね完了したことをご報告したい。この対策は地震だけでなく、台風や水害、雪害などの他の災害にも有用と考えている」と述べた。

 ドコモにより新しい災害対策は、「重要エリアにおける通信の確保」「被災エリアへの迅速な対応」「災害時におけるユーザーのさらなる利便性の向上」の3本柱からなっている。

大ゾーン化や24時間化で、災害時でも人口の65%をカバー

 人口密集地や行政機関が集まるエリアでサービスを中断させないよう設置されたのが、災害時のみに使われる大ゾーン基地局。今回ドコモは、全国で合計104局を設置した。東京都に6カ所、大阪府は4カ所設置され、それ以外の道府県では各2カ所置かれている。主に県庁所在地にあるドコモやNTTグループの局舎に置かれ、人口が密集する半径約7キロをカバー。全国で約35%の人口をエリアに収める。なお、通信方式はFOMA(3G)のみで、ムーバ(PDC)やXi(LTE)は含まれていない。設置された局舎ビルは、震度7以上の耐震性を持つ建物を選定しており、自家発電装置も完備した。

photophotophoto 災害対策の概要(写真=左)。その象徴とも言える大ゾーン基地局は全国に104カ所設置された(写真=中央)。既存基地局の無停電化も進めた(写真=右)

 大ゾーン基地局は非常時にのみに使われるもので、県庁所在地の中心部をカバーするもの。一方、各地の市町村役場をカバーする約1900の基地局では、発電用エンジンやバッテリーを増設する無停電化が行われた。従来も3時間程度の停電には耐えられたが、今後は停電時でも最低24時間の駆動が可能になる。丸1日あれば、被災直後の最低限の通信ができるほか、停電の復旧や燃料の供給も期待できるという。増設されたバッテリーは1局につき数トンあり、局舎内に収まらない場合はコンクリート製の基礎を作って設置した。こうして無停電化されたエリアは、人口カバー率で約65%、災害拠点病院の約50%になる。

 東日本大震災では、建物の損壊や津波などで、基地局自体が災害に遭って停波するケースが相次いだ。そうした場合に有効な通信手段として再び注目を集めたのが、衛星電話の活用。特に、単独で利用できる衛星携帯電話については、即時に提供できる台数を現在の1000台程度から3000台体制に増やした。

photo 移動基地局も倍増

 また、被災エリアで迅速にサービスを復旧させるため、衛星回線を通じてドコモの通信網と接続する移動基地局も増設した。これには、いわゆる移動基地局車と呼ばれる車載型のほか、ヘリコプターなどで輸送できる過般型なども含まれる。基地局車は10台から19台に倍増され、可搬型も新規に24台が追加された。さらに、陸上の伝送路が使えなくなった場合に備え、ワイヤレスで伝送路を構築する非常用のマイクロ波を設備も100区間分を用意した。

ユーザーの利便性も向上

photo NTTドコモ執行役員研究開発推進部長の尾上誠蔵氏

 エリアの大ゾーン化や無停電化は、いわばインフラ部分の対策。ドコモではこれに加え、ユーザーの利便性を向上する施策も進めた。災害時には、安否確認のために音声通話の発信が急増する。東日本大震災では「通常の50〜60倍の利用があった」(岩崎氏)といい、最大で90%近い発信規制が行われた。多くのユーザーにとって、ほとんど使えない状態になったと言っていいだろう。

 しかしパケット通信については、「地震発生から3時間後には規制が解かれ、通常通りのトラフィックに戻った」(岩崎氏)という。こうした実情を踏まえて用意されたのが、録音した音声をパケット回線を通じて送受信する災害用音声お届けサービス。現時点で、音声メッセージを送受信できるのは、専用アプリの「docomo災害用キット」をインストールしたドコモのAndroidスマートフォンと、2011年冬・2012年春以降に発売されたiモードケータイだ。それ以外のiモード端末については、受信のみ対応する。過去のフィーチャーフォンには対応できないが、ユニバーサル端末を含む、新しいiモードケータイはできるだけ対応させる。

photo 通知にSMS、データの送受信にパケット通信を使う災害用音声お届けサービス

 ドコモは同様のサービスとして、「声の宅配便」を提供しているが、こちらは回線交換方式を用いており留守番電話の延長と言える。メッセージの有無をSMSで通知する点は共通だが、災害用音声お届けサービスは端末で音声を録音・圧縮して送信するなど、方式が違う。

 NTTドコモ執行役員研究開発推進部長の尾上誠蔵氏は、災害用音声お届けサービスの開発について「緊急時でもつながりやすいパケット通信を利用し、音声を伝えられる。また使いやすいユーザーインタフェースであることがポイントだった。実装のしやすさからスマホ対応が先行し、フィーチャーフォンについては最新モデルから順次対応する。データの配信はiモーションの仕組みを活用しており、受信はほとんどのiモード端末でできる。技術的に特別な仕組みは使っておらず、できるだけ簡易なプロトコルを使って回線への負荷を減らした」と明かした。

 また、端末の操作に不慣れなユーザーに配慮し、音声ガイドに従って操作するユーザーインタフェースを採用した。送信されたメッセージは、ドコモのサーバに最大10日間保存される。1度受信するとサーバからは削除されるが、音声を端末に保存できるので、何度でも聞き直すことが可能だ。また、メッセージをダウンロードすると送り手に必ず着信通知が届き、伝言が伝わったのかどうかを確認できる。

photophotophoto 専用アプリの「docomo災害用キット」を使った送信時の画面。それぞれの画面で音声ガイダンスが流れる

photophotophoto docomo災害用キットで音声メッセージを受信した画面。送られた音声は端末に保存できる

photophotophoto フィーチャーフォンでメッセージを受け取ったところ。フィーチャーフォンやアプリをインストールしていないスマホには、SMSから音声をダウンロードする

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