KDDIとLGが生んだ異才な存在「isai LGL22」――“ただのコラボモデル”じゃない理由とはisai Press Conference 2013(3/4 ページ)

» 2013年12月05日 22時00分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

「au向け」だからこそチャレンジできた

 isai Press Conferance2013にはKDDI側の担当者として、全体のデザインを監修した小牟田啓博氏と、インタフェース開発の山口昌志氏が参加。LGのスタッフを交えた座談会形式で、LGとの共同開発を振り返った。

photo KDDIとLGの担当者を交えた座談会
photo 小牟田啓博氏

 小牟田氏といえば、KDDIが生んだ数々のコラボモデルを手がけた人物として知られる存在。今回のコラボレーションについて、「KDDIは世界で一番、メーカーとコラボ端末を世に出している会社。今回はGUIも開発し、デザインもまったくのゼロからスタートした。これはLGも経験がないことだったと思う。例えば女性を意識したデザインやサイズに、大きなデバイスを詰め込むにはどうすればいいのか。決してスムーズとはいえなかったが、技術的な問題など、LGでなければ解決できないことも多かった」と感想を述べた。

 isaiのデザインコンセプトが「水」の理由を問われると、「これはすごく考えたことで、水がきれい、いらないという人はないくらい普遍的なもの。それが理由だ。その水をどうするのか、カラーも水系統で攻めた。淡色と暖色を使い分ける定石もあえて避けている。そして、マーケティング上、今はブルー系の実績が高く、これからのトレンドでもある。isaiはauの(ラインアップの中でも)売れ続けていくモデルになるだろう」と説明した。

 一方、LGのパク氏は「LGはグローバルな企業で、グローバル向けのデザインをすることが使命。日本の一事業者向けに開発することは実にチャレンジングだった。ただ今回の挑戦を通じて、日本のデザイン性が分かった気がする」とこのプロジェクトに手応えを感じたようだ。また「グローバルモデルの開発は規模が大きく、新しいことを行うリスクが高い。(isaiのような)市場特化モデルは、グローバルモデルと環境が違うのでさまざまなチャレンジができる」と述べ、au向けだからこそ実現したことを強調した。

 パク氏は日本の市場とユーザーに対し、「個性を大事にする。その一方で、あまりに異質な物は受け入れないなど、相反するようなニーズを求める」(パク氏)という感想を持ったそうだ。その結果、isaiはこれまでのスマートフォンとまったく違うことをするのではなく、カラーやディテールにこだわることで差別化を果たした。

 小牟田氏はLGという企業について、「今回はLGという1つのメーカーを良く知ることができた。極めて真面目でスマート、良くも悪くもクレバーな会社だと思う」と評価。海外メーカーとの開発については、「防水の必要性を問うのが大変だった。防水対応だと外観に与えるダメージは大きく、エンジニアはデザイン上の商品価値を直感的に疑う。しかし日本市場では防水でなければ商品価値が下がる」と、シビアなやり取りがあったこともうかがわせた。

 小牟田氏はisaiについて、「KDDIはauのユーザーのために、最新で最先端の最旬な製品を提供したいと思っている。auのユーザーといっても、日本人だけでなく、さまざまな国籍の人がいる。日本向けモデルが海外で売れる事例もあり、日本が研究の舞台になる可能性もある。isaiはぜひ売れてほしい。売れると思う。日本の市場で育ってほしい」(小牟田氏)と大きな期待を寄せた。

これもLG初 グローバルメーカーが作るau専用UI

 座談会では、isaiスクリーンの開発経緯についても取り上げられた。isaiスクリーンは左右のフリックで表示する内容を切り替え、1つのスクリーンには常に1つのコンテンツを表示する。LGでUIを担当したキム・ナムギ氏はこれを、「コンテンツのザッピング」と呼び、isaiならではのユーザー体験として訴求したい考えだ。

photo isaiスクリーンのデザイン座談会
photo KDDIの山口昌志氏

 KDDIの山口氏は、「KDDIならではの差別化を打ち出したかった」とオリジナルにこだわった理由を話す。「UIはメーカーが担当するもので、キャリアが押しつけるものではない。またグローバルメーカーは開発スピードが速く、カスタマイズが増えることを敬遠する。しかしユーザーのことを思うと、キャリアと一緒にアプローチしていくのがベストだと判断した」と説明する。

 LGのキム・ヒチョル氏は「LGは2006年から日本向けモデルを提供していて、外観や一部のハードはカスタマイズしてきた。しかしホーム画面を1地域の1事業者に提供するのは初めてのこと。ひと言でUIというが、便利機能の一つ一つもUIであり、それが誰でも分かる形で訴求できるかというと、議論があった。気が付くと、独自のホーム画面を開発するという結論になった」と補足する。この結論に至るまで、また至ったあとの方向性についても、平均5時間を超えるテレビ電話が行なわれたという。

photo LG Electronicsのキム・ナムギ氏

 ではisaiスクリーンはどんなユーザーに向けた開発されたのか。キム・ナムギ氏は「最近のユーザーは隙間時間にスマホを使う、ちょっとした時間に意味のあるスマホの使い方をしてほしい。すべてのスマホユーザーがターゲットで、特定の人ということはない」と説明した。ただしisaiスクリーンには“Androidっぽさ”も残しており、ブランドの世界感を前面に打ち出した「INFOBAR」のそれとは異なっている。

 山口氏は、「普通のAndroidスマホとして使いたいユーザーもいるため、バランス取りには注意した」と話す。標準的なAndroidのホーム画面も搭載しているので、isaiスクリーンを使わないという選択肢もある。

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