LINEは7月28日、青少年のネットリテラシー啓発活動に関する記者説明会を開催。“いじめ”に代表される、青少年のインターネット上におけるトラブルを防ぐためのLINEの取り組みを紹介するとともに、青少年のネット利用実態を把握するべく10万人規模の全国調査を実施するなど、新しい取り組みを発表した。
説明会ではLINEの代表取締役社長である出澤剛氏が、LINEの現状とこれまでのリテラシー啓発活動について説明した。LINEの月間アクティブユーザー数は2億5000万を超え、日本だけでなく台湾やタイ、インドネシアでトップシェアを獲得するなど世界的に利用が広まっている。
災害時の連絡手段として、また夫婦間のコミュニケーション活性化に役立っているなど有効に利用されている一方で、「不適切なコミュニケーションに利用されていることは把握している」(出澤氏)という側面もある。LINEはネットコミュニケーションに関するトラブルを根絶するべく、2013年よりCSR推進チーム内に5人の啓発活動専門スタッフを配置し、活動を進めているという。
そして今回、青少年の安心・安全に関して、LINEでは3つの新しい取り組みを実施するとした。1つは、これまで取り組んできた静岡大学との共同研究によるワークショップの拡充だ。
このワークショップに対する考え方を説明した同社 政策企画室の江口清貴室長は、(不適切利用の)リスクを受容可能な範囲にまで抑え、安心・安全を実現するには、3つの観点が必要になると説明した。
1つ目は、18歳未満ユーザーのID検索制限などシステム面の取り組み。2つ目は、“夜の利用を控える”など自主規制ルールを設ける社会的な基盤整備。そして3つ目は、サービスをどう使うかを考え、知識として身に着けるかという、“人間”に向けた取り組みで、安心・安全を実現するにはそれら3つがそろう必要があるとする。
また江口室長は、従来の講演を主体とした啓発の取り組みに違和感を抱くようにもなったと明かす。というのも、実際に子供達の間で起きているトラブルの本質は、いわゆる“既読無視(スルー)”ではなく、表情や話し方などが見えない、テキストによるコミュニケーションがもたらす誤解や意思疎通のエラーが多いためだという。
LINEと共に教材を開発している静岡大学の塩田真吾准教授も、「一般的な情報モラル教育で実施しているのは、“こういったトラブルがあるよ”という事例の紹介が多い。だが子供達は、それを自分のこととして自覚できているのか」と、従来の手法に疑問を呈した。
悪口を言う、不適切な写真をアップするなどのトラブル事例が紹介されても、子供達は自分がそうしたことを“していない”と思ってしまうことが多いのだそうだ。
そこでLINEと静岡大学が共同で開発したワークショップでは、子供達に当事者としての自覚を促すことに重点を置いた。その上で、どのような要因でトラブルが起き、どうトラブルを対処するのか、考えてもらうことを重視している。
具体的には、数人のグループを組んで、「子供に人気の辛い料理は?」などの質問に一斉に答えたり、「マイペースだね」「個性的だね」と書かれたカードの中から、言われると嫌だなと感じるものを1枚選んで見せあったりする。そうした取り組みの中から自分と他人の内容を比較して、嫌な言葉や行動は人によって異なることなどを自発的に感じ取ってもらい、お互いの違いを理解しようとするためにコミュニケーションが生まれることを理解してもらうのが狙いだ。
さらに8月に提供される新しいワークショップでは、基礎編と応用編に分かれて何度でも実施できるモジュール型の構成を採用した。自分達で細かなトラブルの状況を設定して考え、子供達が持っている対応策やルールを共有できる内容になるとしている。また、より幅広い教育関係者などに利用してもらえるよう、インターネット上から誰でもダウンロードできる形で配布する。
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