ドコモ+auで相乗効果を狙う「mineo」、2社とのL2接続で広がりあるサービス展開をMVNOに聞く(2/3 ページ)

» 2015年09月14日 19時07分 公開
[石野純也ITmedia]

1枚のSIMで2回線を切り替え 実現はもう少し先

―― 先ほどおっしゃられていた1枚のSIMで2回線を使うというのは、「HLR/HSS」(端末の位置情報を登録するネットワークの機能)がMVNOに開放されないと実現は難しいのではないでしょうか。確認ですが、それを求めていくということでよろしいですか。

津田氏 今の日本では、電話番号やIMSI(SIMカードごとに振られる固有の番号)がもらえません。HLR/HSSの開放していただければ、そういったことも可能になります。もちろん、事業者さんも大変ですし、我々も大変です。ただ、それを1つ1つ開拓していくことで、よりよいサービスが提供できると考えています。こうしたことをトップバッターとして開拓しているのは日本通信さんで、我々はそれに着いて行く形になっています。でも、我々にだって、リーダシップを発揮することは可能だと思います。

―― 固定でのノウハウがすでにあるという意味では、もしそれができれば強みになる。

津田氏 そうですね。技術的、運用的なノウハウは持っています。まだ十分アピールできていない面はありますが、通信事業者としての安心感や実績は上手く伝えていきたいと思います。

 ただ、伝えたり、理解してもらったりするのは、なかなか難しいですね。独自調査ですが、MVNOを認知している方は、すでに7割、8割います。一方で、これが検討するというレベルになると、1割、2割に落ちます。今入られているのは、こういったことにお詳しい方、好きな方で、マジョリティになると「知ってるけど、まだいいかな」となります。ここ1年、2年でそれを変えるために、切磋琢磨しながらがんばっていきたいですね。

―― ちなみに、新しく始めたドコモのプランと、今までのプランの料金を合わせたのは、やはり分かりやすさを優先したということでしょうか。

photo 料金も値下げ(データ通信専用プラン)

津田氏 そうです。どっちがどっちというのだと、混乱しますからね。大手キャリア(MNO)への不満として、メニューがいっぱいありすぎて分からないというものがあります。ですから、我々は、料金をできるだけシンプルにしたい。サービスの種類によって料金が違うというのは、不親切です。ただ、音声の料金は(MNOによって)変わってしまいましたが……。

―― それは、卸価格の違いからでしょうか。

津田氏 その辺の事情もありますし、他社さんの動向を見たということもあります。

photo 音声込み料金はドコモとauで違いが

―― (ユーザーが支払う)料金は合わせましたが、(事業者間の)接続料はまだ若干auが高いと思います。au回線の料金をドコモ側に合わせるのは大変だったのではと想像していますが。

津田氏 正直、厳しいですね。スタートしたときの料金がドコモ系MVNOより割高だったように、やはりその差は大きいです。ただ、ドコモとau、トータルで考えているので、お互い補完し合うようにやっていけば、十分戦えます。

注力度合いは五分五分、SIM交換アリだがVoLTE対応も

―― ドコモとauの比率は、どうしていくおつもりでしょうか。どうなっていきそうかの、見通しも含めて教えてください。

津田氏 注力する度合いも五分五分で、計画としても半々になると見ています。auはMVNO事業者が少ないので、我々にある程度のメリットがあります。一方で、ドコモは後発で、事業者も多くレッドオーシャンになっています。その中でどれだけ取っていけるかというのはありますが、au回線もある相乗効果は狙っていきたい。ドコモ端末を持っているお客様や、SIMフリー端末を持っている方も多いので、入ってきやすいというのも、ドコモ回線のメリットです。

―― 端末ですが、現状でmineoはドコモ系端末を取り扱っていません。一方で、MVNOによってはセット販売の割合が非常に高くなっています。この点は、どうお考えでしょうか。

津田氏 auのときは、世の中にある端末が限られていましたが、今後はいわゆるSIMフリー端末も提供できます。どこまでそろえて、どこまで売れるのかというのはありますが、トライはしていきたいですね。

―― 1台でどちらのSIMカードを選んでもいいという端末なら、mineoのメリットを生かせそうですね。

津田氏 そういう端末を開発してもらえれば、我々の特徴にマッチすると思います。メーカーさんにもお願いして、一緒に成長できればと思います。

―― その意味では、au側の回線がVoLTEに対応すると、CDMAを使っていたころよりはやりやすくなりそうです。

津田氏 その通りです。今までは、VoLTE端末があっても、au系のMVNOでは使えませんでしたからね。

―― 11月を目途に提供するというのは、新たなSIMカードを発行するという理解でよろしいでしょうか。

津田氏 はい。VoLTE用のSIMカードに差し替える形で、交換になります。au端末を使う場合は、SIMロックの解除も必要になります。本当はこの辺を交換せずにできないのか、SIMロック解除なしでもできないのか話し合いをしてきましたが、そこは仕様で難しかった。11月に間に合わせるために、このような形でスタートすることにしました。改善してほしいのですが、KDDIさんにも考え方があるので……。

海外プリペイドSIMのライバルは海外用ルーターレンタル

―― 次に、海外用プリペイドSIMについてうかがいます。こちらの販路は、どうなるのでしょうか。できれば空港で買えたりするとうれしいのですが。

津田氏 今はまず、ケイ・オプティコムが運営している「eoショッピングモール」や、Amazonで、今後は家電量販店や、今おっしゃったような空港にもどんどん広げていきたいと思っています。今は、色々なところと交渉中ですね。あとは旅行代理店さんで、海外旅行を申し込まれたときにどうかという風に提案していただければと思います。

―― 現状だと、mineo端末で対応しているものが少ないと思います。端末は、ユーザーが自分でSIMフリーのものを買ってくるという想定なのでしょうか。

津田氏 このSIMカードが、すぐに普及するかというと、まだちょっと難しいと思っています。今は、我慢しているお客様が多いという状況を、1つでも改善していくためのステップとして提供しています。今後はSIMロック解除が普通になっていくといいですし、海外に行くためにSIMロックを解除することが広がっていくことも期待しています。

―― 確かに、海外の空港でSIMカードを売っているキャリアのカウンターを見ると、日本人はほとんど並んでいませんからね……。アジア人が行列を作ってると思ったら、日本人は僕らだけだったということもよくあります(笑)。

津田氏 まだ(国際ローミングの料金で)我慢しているのではないでしょうか。とは言っても、自分もこの仕事を始めて、海外で現地SIMを調達してみたのですが、アクティベートがうまくできず、ショップまで行ってもなかなか言葉が通じない。最後にようやく使えるようになりましたが、大変だなぁという思いがありました。(mineoのプリペイドSIMなら)少なくとも、日本でできる安心感はあります。これがあれば、海外でLINEをやり取りしたり、Facebookで写真をアップしたり、もっともっと楽しめるのではないでしょうか。

―― 料金的な話で言うと、現地キャリアのプリペイドと比べて、割高な印象は否めません。ここは、もう少し下げられなかったのでしょうか。

津田氏 いくらぐらいであればお客様に普及するのかが、まだ分かりませんでした。当面の料金として、ビジネス用途の多いルーターレンタルに合わせて設定しました。

―― なるほど。ルーターのレンタルを競合だと考えているのですね。

津田氏 そうです。もちろん、安くしようと思っても、我々だけで決められない部分はあります。アイルランドの会社と提携しているので、そういうことも含めてこの値段になっています。

―― 先ほどお話にあった、HLR/HSSの開放が進めば、このSIMカードまで含めて1枚のSIMカードで済ませるということも、できるようになるのでしょうか。

津田氏 できます。HLR/HSSを持つことができれば、海外の事業者と直接つないで、1枚のSIMカードで日本と海外の両方で使うことも可能になります。今は海外に行くとデータローミングを利用できませんが、直接海外の事業者に接続できるようにすれば、もっと安い値段で提供できます。

―― なるほど。お話を聞いていると、海外用プリペイドSIMは、mineoのデータローミング代わりと捉えることもできそうだなと思いました。

津田氏 今はデータローミングができませんからね。海外で使えることの、第一歩だと考えています。

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