今週、もうひとつ驚いたのが、菅官房長官の発言だ。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年8月25日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
「携帯電話料金は4割値下げの余地がある」との発言により、業界に激震が走った。
当然、キャリアは民間企業であり、上場している株式会社だ。政府が通信料金に指図できるわけがなく、4割も下げれば当然、株主だって黙っていない。
2007年頃に行われた総務省「モバイルビジネス研究会」は、当時の総務大臣が菅さんであり、担当していたのは当時、料金サービス課長だった谷脇康彦氏であった。先日の人事異動で谷脇氏が総合通信基盤局長になった矢先での「4割値下げ」発言である。
4割値下げは無謀とも言える話だが、これから総務省や公正取引委員会との議論が進む中で、1〜2割程度の値下げという現実的な落とし所で政府とキャリアが手を打つということは充分に考えられそうだ。
そこで、最も、有り得そうな解決方法と考えられるのが「通信料金と端末代金の分離」だ。
すでに、KDDIが「ピタットプラン」、NTTドコモが「docomo with」を提供しているが、ソフトバンクも分離プランを準備中との報道がある。
端末割引をしない代わりに、通信料金を下げる、あるいは使用状況にあった請求にすることで、見た目上は値下げしたように見えることだろう。
すでに提供されている分離プランをさらに強化する、もしくは対象機種を拡大することで、政府の意向に応えることも不可能ではない。
タイミングよく、NTTドコモがdocomo withでiPhone 6sの取り扱いを始めた。これが試金石となり、対象機種の拡大ということも考えられるだろう。
高額スマホを端末割引無しで売るには、4年の期間拘束などを組み合わせる必要が出てくる。しかし、ここも公正取引委員会の厳しい目が待っている。
やはり、iPhoneであれば、キャリアではなく、アップルが日本でも「アップグレードプログラム」を導入し、通信料金と端末代金を分離したかたちで提供すれば、何ら文句を言われないかたちになるだろう。
もちろん、キャリアは端末割引がないのだから、安価な料金プランを適用できるはずだ。
総務省としては、端末と料金のセット割引を問題視してきた節がある。
菅官房長官の発言に対して、少しでも忖度するならば、端末割引を辞める代わりに基本料金を値下げするというやり方が、最もキャリアの出血が少なく済む最善な方法ではないだろうか。
菅官房長官の発言によって、結果として、日本でも端末と料金の分離が加速していくことになりそうだ。
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