とっても複雑なUSB Type-Cの世界 ケーブルのトラブルを防ぐには?(1/2 ページ)

» 2022年01月17日 06時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
USB端子 今回紹介するUSB端子たち

 数年前までは、Micro USB端子を搭載したAndroid端末が多かったものの、すっかり主流はUSB Type-C端子へ。「3年ほどケータイの機種変してないい」という人が、次に機種変更する際には、USB Type-C端子搭載のものである確率が高いことでしょう。

 USB Type-C搭載のスマホを初めて買う人を困惑させるのが、「ケーブルの価格差」かもしれません。Micro USB(to USB Standard A)ケーブルであれば数百円で、かなりまともなものを入手できたのに、USB Type-Cコネクターが端に付いているケーブルの値段はピンからキリまであります。百均で入手することさえ可能です。

 コンビニや百均など、生活圏にある店舗で買えるのはありがたいのですが、「スマホにPCから音楽ファイルを入れておこう」「スマホから大量の写真をPCにバックアップ取っておこう」「なんか、モバイルディスプレイに投影できるらしいからつなげてみよう」と思い、買ってきたケーブルをつなげたところ、壊れているわけではなさそうなのに、データの転送ができない、できても遅い、映像の出力ができなかった――そんなトラブルに陥りがちです。

 では、そういったトラブルを避けるためにどうすれば良いでしょうか。

USB Type-Cの規格について知る

 Amazon.co.jpを開いて「USB Type-Cケーブル」で検索すると、数十円程度のものから、1万円を超えるようなものまで、さまざまな価格帯のアイテムがヒット。「USB Type-Cケーブル 1m」と入力すれば、もう少し絞れますが、それでも700円程度のものから、数千円の価格のものまであることが分かります。

USB端子 Amazon.co.jpで検索すると、USB Type-C to USB Type-Cケーブルの値段はピンキリ

 この価格差はどこから生まれてくるのでしょうか。実は、「USB Type-C」というのは単なるコネクターの形状を表しているにすぎず、USB規格のバージョンやコネクターの内側にあるピンの数、それに連結している線(電線内の銅線のようなもの)の数や種類によって、できることとできないことがあるのです。

USB端子 USB Type-Cコネクターの内部を表す図。USBの規格を策定しているUSB IFのライブラリよりダウンロードしたものを引用

 例えば、USB Type-C to USB Type-Cケーブルの中でも、かなり安価な部類に入る(といっても、標準価格は税込み3630円)「サンワサプライ USB2.0 TypeC ケーブル 1m KU-CCP510」はUSB2.0という規格に準拠したもので、データ転送速度は480Mbps(1秒間に60MBのデータを転送できる)。

 対する「Anker USB-C & USB-C Thunderbolt 4 100W ケーブル 0.7m」は、コネクターの形こそUSB Type-Cですが、規格はThunderbolt 4。最大40Gbpsでのデータ転送や、モバイルディスプレイなどUSB Type-Cポートを持つサブモニターへの映像出力が可能です。

 このように、USB Type-Cのコネクター形状を持つケーブルには、USBの規格を作っている「USB-IF」が定めたUSB規格に準拠しているものに加えて、Intelが主導して定めた「Thunderbolt 3」「Thunderbolt 4」に準拠したものがあります。

 「USB 2.0」「USB 3.0」といった数字は、USB(ユニバーサルシリアルバス)のやりとりする信号に関する規格のバージョンを示します。バージョンと最高通信速度(理論値)の関係は以下の通りです。

  • USB 2.0:最大480Mbps(毎秒60MB)
  • USB 3.0:最大5Gbps(毎秒640MB)
  • USB 3.1:最大10Gbps(毎秒1.25GB)
  • USB 3.2:最大20Gbps(毎秒2.5GB)
  • USB4:最大40Gbps(毎秒5GB)

【訂正:2022年1月17日13時30分 初出時、USB4の記述に誤りがありました。おわびして訂正いたします。】

 USB 3.1〜3.2には「Gen(ジェネレーション:世代)」という概念もあり、以下の表記は全て同じ意味です。

  • USB 3.0=USB 3.1 Gen1=USB 3.2 Gen1
  • USB 3.1=USB 3.1 Gen2=USB 3.2 Gen2
  • USB 3.2=USB 3.2 Gen2x2

【訂正:2022年1月19日19時30分 初出時、USB 3.1の記述に誤りがありました。おわびして訂正いたします。】

 さらにややこしいのは、USB Type-CではUSB規格“以外”の信号を流す「Alternate Mode(オルタネートモード)」も定義されています。例えば、主にPCやスマホで使われている映像/音声伝送規格である「DisplayPort(ディスプレイポート)」の信号を流せます(「DisplayPort Alternate Mode」といいます)。ただし、DisplayPortは伝送に必要な信号線の数が多いため、USB Type-Cケーブルを使って伝送する場合は、USB 3.0以上の規格に準拠するものを用意しなけてはなりません(それでも、全てのケーブルが対応しているとは限りません)。

 先述のThunderbolt 3も、Alternate Modeを活用してUSB規格よりもさらに高速な「PCI Express」という規格の信号をやりとりしています。ただし、やりとりする信号が信号だけに、Thunderbolt 3(4)対応機器との接続には「Thunderbolt 3(4)対応」をうたうケーブルが必須となります。

 USB4はUSB規格の最新版ですが、Thunderbolt 3をベースに策定されています。USB4対応機器との接続には「USB4対応」をうたうケーブルが推奨されます。Thunderbolt 4はUSB4とほぼ同等ですが、スペック上の要件が一部厳格化されています(詳細は割愛します)。USB4とThunderbolt 4では「トンネリング(Tunneling)」がサポートされるようになり、信号を混在して伝送できるようにもなっています。

【訂正:2022年1月24日16時00分 初出時、USB4とトンネリングについて誤った記述がありました。おわびして訂正いたします。】

 ……混乱してきましたね。いったん、表にまとめましょう。

規格 最大データ転送速度 映像出力
USB 2.0 480Mbps なし
USB 3.1 Gen1(USB 3.0、USB 3.2 Gen1と同じ) 5Gbps ケーブルによる
USB 3.1 Gen2(USB 3.2 Gen2と同じ) 10Gbps ケーブルによる
USB 3.2 Gen2×2 20Gbps ケーブルによる
Thunderbolt 3 40Gbps あり
Thunderbolt 4 40Gbps あり

 このように、規格によってデータ転送速度が異なり、しかも規格名が違うのに実は同じ規格のことを指している、というものもあり、USB Type-Cの世界は大変複雑です。コネクターの形状が同じなのに、全く別の規格のものもあることが、さらに混乱を招いているでしょう。

 買ったケーブルでやりたいことができなかった、というケースが多いのも納得です。

 では、やりたいことが必ずできるようにする方法はないのでしょうか。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年11月08日 更新
  1. セブン-イレブンで「Wi-Fiルーター」レンタルできると話題に 「めっちゃ便利」「知らなかった」と歓喜の声も (2025年11月05日)
  2. LUUPユーザー「警察官が高圧的」と投稿も、「危険運転」「無責任」と批判殺到 (2025年11月06日)
  3. 3COINSで550円の「防災ライト付き乾電池バッテリー/SOBANI」は役に立つ? 乾電池でiPhone 16をどれだけ充電できるか試してみたら…… (2025年11月06日)
  4. 楽天モバイルの値上げしない発言に、「アンフェアだ」とソフトバンク宮川社長 一体なぜ? (2025年11月05日)
  5. 5Gが好調のau、料金値上げが好循環に 課題の金融事業は「マネ活プラン」強化でてこ入れ 決算会見で語られたこと (2025年11月07日)
  6. KDDIの5G SAエリア年度末9割超に 「ミリ波で具体的に何ができるのか」も提示し普及へ (2025年11月06日)
  7. “最強”の通信品質を目指す楽天モバイルに、「auローミング込みで最強と受け止めた」とKDDI社長 (2025年11月06日)
  8. WAON POINTやAEON Payのキャンペーンまとめ【11月5日最新版】 ブラックフライデーで高額還元あり (2025年11月05日)
  9. 【ダイソー】220円の「フレキシブル三脚」 柔軟に変形してどこでも置ける (2025年11月07日)
  10. auが通信品質でトップ評価、上り速度は楽天モバイルが独走 Opensignalの調査より【2025年10月版】 (2025年11月06日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー