KDDIは、6月3日にauとUQ mobileの両ブランドに新料金プランを導入する。先に新料金を発表していたドコモと同様、料金プランに含めるサービスを拡充した上で値上げを実施。通信やコンテンツを軸にお得感を打ち出す。一方で、auは既存の料金プランも8月に値上げした上で継続するのが、これまでの新料金プランとの大きな違いだ。
過去には楽天モバイルが1GB以下0円だった「UN-LIMIT VI」を廃止した例はあるが、既存契約者の料金を値上げするのは異例といえる。また、UQ mobileは新料金プラン導入に伴い、現行料金プランの新規受付を終了。既存の料金プランも、今後値上げすることを示唆している。こうした点からは、マルチブランド再編の思惑も透けて見える。
auの新料金プランは、「auバリューリンクプラン」と名付けられた。各種割引適用前の料金は8008円。現行料金プランの「使い放題MAX+」と割引は変わっておらず、「家族割プラス」「auスマートバリュー」「au PAYカードお支払い割」が適用される。割引額や割引の種類を増やし、複雑性が増してしまったドコモの新料金プランとは違い、スムーズに理解されることに主眼を置いているといえる。
割引額は家族割プラスで3人以上の場合が1210円、auスマートバリューが1100円、au PAYカードお支払い割が220円。3つを適用した際の料金は、5478円まで下がる。現行の使い放題MAX+は、割引適用前が7458円、割引適用後が4928円だったため、どちらも550円の値上げになっている。
ただし、auバリューリンクプランには月額548円の「Pontaパス」が付属する。これがセットになったと考えれば、事実上、料金はほぼ据え置きと捉えることも可能だ。Pontaパスのユーザー数は現時点で1500万を超えているため、もともとこれに加入していた多くのユーザーは値上げなしでその他の特典が手に入る格好だ。
“バリュー”と銘打っていることからも分かるように、auバリューリンクプランには、Pontaパス以外のさまざまなサービスもセットされている。料金面で影響が大きいのは、サードパーティーの月額課金サービスを契約した際にポイント還元を受けられる「サブスクぷらすポイント」の還元率が20%に上がること。現行の料金プランは15%還元のため、5ポイントアップになる。
現状、サブスクぷらすポイントは「Netflix」「Apple Music」「YouTube Premium」「TELASA」の4つが対象だが、夏以降、ここに「Google One」も加わる。GoogleドライブやGoogleフォトのバックアップを利用しているAndroidユーザーには、特にうれしい特典といえそうだ。また、AIサービスのFeloも加わる。
経済圏連携を強化しただけでなく、KDDIの本業である通信でのサービスも拡充した。既存の料金プランと同様、「au Starlink Direct」が無料で利用できることに加え、5G SAの優先制御によってより快適に通信ができるようになる「au 5G Fast Lane」も導入される。これは、「基地局が配下の端末にリソースを割り当てる際の確率を高める」(代表取締役社長CEO 松田浩路氏)仕組みで、相対的に速度向上が見込めるという。
さらにドコモと同様、海外ローミング時のデータ通信も15日間相当が無料になる。KDDIの「au海外放題」は、予約なしの場合、通常24時間1200円(不課税)で提供されているが、この15日分相当が無料になる仕組み。事前予約で1日800円(不課税)まで料金が下がる国や地域の場合には、22日間分が無料になる。550円の値上げをしつつ、Pontaパスやサブスクぷらすポイントで還元を強化し、さらに通信サービスも充実させたのがauバリューリンクというわけだ。
松田氏は、「ここまでの価値を提供し、何とかサービス改定(値上げ)をご理解いただきたいという思いがある」と語る。値上げしつつも、Pontaパスやサブスクぷらすポイントをセットにしたことで、料金がKDDIを取り巻くパートナーに還元される側面もある。松田氏も、「いただいた対価は、設備工事を請け負っていただく取引先や代理店、大切なパートナーにしっかり還元し、未来に向けた再投資も行っていく」と述べている。
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