GeminiやChatGPTがあるのになぜ? ドコモがAIエージェント「SyncMe」を手掛ける理由 強みはdアカウントにあり:石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)

» 2026年03月08日 15時32分 公開
[石野純也,ITmedia]

 右を向いてもAI、左を向いてもAI、さらには垂れ幕までもがAI――3月2日から5日にわたってスペイン・バルセロナで開催されたMWC26 Barcelonaのテーマは、まさにAI一色だった。ここに合わせてドコモが発表したのが、「SyncMe」と名付けたパーソナルAIエージェントだ。現在、SyncMeはモニターを募集しており、そこでの意見を踏まえて夏ごろまでにサービスを開始する。

ドコモSyncMe 2025年以上にAI一色だったMWC26 Barcelona。ここに合わせて、ドコモはコンシューマー向けのAIエージェントサービスとなるSyncMeを発表した

 このAIエージェントは、2025年のMWCで代表取締役社長の前田義明氏が導入を表明していたもの。ちょうど1年たち、サービスの具体像が見えてきた形だ。とはいえ、AIエージェントはプラットフォーマーのサービスも既に存在する。ドコモが手掛ける意義や、その展望を読み解いていきたい。

ドコモSyncMe MWCで発表したSyncMe。キャラクターを打ち出したAIエージェントだ

iモード時代からの悲願を生成AIで実現、より賢いパートナーに

 ドコモはiモードの頃から、エージェント型のサービスを継続的に導入してきた。先駆けといえるのは、前田社長自身もサービスに携わった「iコンシェル」だろう。このサービスでも、ユーザーの生活エリアや趣味嗜好(しこう)に合わせて生活にひも付く情報を届けるといったことをしていた。

ドコモSyncMe エージェント的なサービスはiモード時代から手掛けており、スマホでもmy daizを現在提供中だ

 また、スマホ時代にはiコンシェルの流れを受け継ぐ「my daiz」を導入しており、こちらのサービスは現在も継続中。ホーム画面上を縦横無尽に動くマチキャラが、吹き出しでおすすめの情報を届けてくれるというコンセプトは、まさにエージェント的だ。前田社長も、「もともと携帯電話自体が究極のパーソナルエージェントで、それを進化させていくことがミッションだと考えていた」と話す。

 一方で、これらのサービスは情報の出し方がパターン化しており、エージェントとしてできることは少なかった。ワンパターンの情報しか出ず、実際に何らかの手続きをしてくれないとなると、ユーザーにとっては邪魔な存在になってしまう。筆者もかつてはmy daizを契約していたが、鉄道遅延情報ばかりであまり役に立たないというのが率直な印象だった。

ドコモSyncMe 「携帯電話自体が究極のパーソナルエージェント」と語った前田氏

 ここに生成AIを活用することで、エージェントとしての能力を高める道筋が見えてきた。前田氏は、「今われわれが持っているアセットと、世の中に勃興するテクノロジー(生成AI)を組み合わせることで、その世界が見えてきた」と話す。

 SyncMeを手掛けたドコモのエンタメマーケティング担当部長の浜田尚氏も、「当初思い描いていたものをiコンシェル、my daizではやりきれなかった。生成AIがこれだけ拡大する中で、われわれが想定していたエージェントとしてお客さまをサポートすることがテクノロジーとしてできるようになってきた」と口をそろえる

 実際、SyncMeは既存のAIモデルをAPI経由で呼び出しており、これまでのどのサービスよりも多彩な会話が可能。「ワラピィ」と「ヨミドーリ」というキャラクターが前面に出ているため、“緩いサービス”を想像してしまうが、できることはGoogleのGeminiやOpenAIのChatGPTに近い。チャットを通じてユーザーの行動を支援する、会話型のエージェントといえる。

ドコモSyncMe キャラクターが前面に出ているため、緩いサービスを想像してしまう部分はあるが、その中身はチャット型の生成AIサービスだ

パーソナル化を実現したdアカウントの情報、正確なユーザープロファイリング

 とはいえ、同じことができるのであればGeminiやChatGPTを使えばいい。あえてドコモが開発する必要もないだろう。SyncMeが面白いのは、ドコモがdアカウントに蓄積したユーザーのパーソナルデータを活用しているところにある。これによって、他社のAIエージェントにはないユーザーの理解が可能になる。

 dアカウントには、ユーザーの位置情報はもちろん、住所やdカード、d払いでの決済情報、dポイントの取得状況などが蓄積されている。これらの情報を組み合わせていくことで、ユーザーのことをかなり高い精度で予測することが可能だ。

ドコモSyncMe dアカウントにはさまざまなパーソナルデータが蓄積されている。それを元に推計することで、ユーザーの属性を導き出せる。写真は、筆者のdアカウントから推定された情報

 例えば、位置情報の推移から、出勤情報を推定できる。その情報とdカード、d払いでの決済情報を組み合わせれば、ある程度まで職業や年収、ライフスタイルまで推定することが可能になる。また、SyncMeは利用時に複数の写真をユーザーにアップロードさせ、「言葉にしづらいユーザーの感性も推定していく」(浜田氏)。

 MWCでは、SyncMeを開発するあたり、ドコモがどの程度までユーザーをプロファイリングできるかのデモも見せてもらった。筆者自身のdポイント会員番号を入れ、写真を数枚選んだところ、出勤、退勤の時間や一般的なサラリーマンではないこと、さらには都市型の生活で比較的オン・オフをはっきり切り替えていることなどがズバリ言い当てられていた。

ドコモSyncMe
ドコモSyncMe アカウントの情報から、筆者の人物像をプロファイリングしている様子。具体的な数値を教えていないにもかかわらず、かなり正確に言い当てられている印象だ

 また、d払いの利用状況や利用金額、支払いソースを見ており、キャッシュレス決済の利用頻度が高いことも推定されていた。dアカウントには、筆者という人物を多角的に分析するのに十分な情報が蓄積されているというわけだ。MWCで見たデモは、あくまで最大値のものであり、SyncMeで活用されるデータはその一部だというが、dアカウントの情報にはかなり高いポテンシャルがあると言えそうだ。

 この点は既存のAIチャットとの大きな違いになる。

 GoogleのGeminiもGoogleアカウントにひも付いた検索履歴などのパーソナルデータを参照するようになっているが、決済データはなく、何を購入したかやどのようなお店を実際使ったのかまでは把握しきれていない。そのため、「ランチのおすすめを教えて」というような質問をすると、ユーザーがよく検索していた情報に結果が偏ってしまう。精度高くユーザーを把握できているのは、ドコモならではの強みだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月25日 更新
  1. 「iPhone Duo」はLINEもポケモンGOも“黒い”余白だらけ? 日本の定番アプリは未対応が多く (2026年10月23日)
  2. きょう発売の「iPhone Duo」、Apple 表参道でゲットしてきた 早速開封レポート (2026年10月23日)
  3. 「Androidのマイナンバーカード」がスタートするもフル機能対応機種が少ない件 ポイントは「StrongBox」という仕組み (2026年10月24日)
  4. iPhone Duoを使って痛感した「Face ID」のありがたさ 充電スタンドに置いたまま通知が見られない不便さに苦しむ (2026年10月24日)
  5. ダイソーで1100円の「USB Type-C to HDMIケーブル」でスマホの画面をテレビに映すとどうなる? 対応機種なら試してみる価値あり (2026年10月24日)
  6. 進化した「Siri AI」で感じた、iPhoneの操作を一変させる実力 「AI出遅れ」の汚名返上なるか (2026年10月24日)
  7. モバイルSuicaの新決済「teppay」を早速試した 店員への伝え方や決済音は? スムーズに決済できる? (2026年10月22日)
  8. 「iPhone Duo」を試して分かった9つの疑問と本音 36万円超の折りたたみスマホは「買い」か? (2026年10月21日)
  9. ダイソーで330円の「人感・明暗センサーLEDバーライト(Type-C)」が意外と便利 1人暮らしの帰宅時や非常灯に便利  (2026年07月18日)
  10. デジタル庁が「Androidのマイナンバーカード」対応機種を公表 属性証明機能を使える機種は限定的 (2026年10月19日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー