“NHK受信料督促強化”の効果あり 井上会長「勇気付けられる数字」も、根強い「強制サブスク」への不満

» 2026年05月25日 17時39分 公開
[金子麟太郎,ITmedia]

 NHKの井上樹彦会長は2026年5月20日の定例記者会見で、受信料の未収数が2019年度以来、6年ぶりに減少へ転じたことを明らかにした。前年秋から本格化させた専門組織による民事手続きの強化といった取り組みが功を奏した形だ。しかしこうした強硬な徴収姿勢に対しては、インターネット上で批判も根強く、国民の納得感を得られているとは言い難い状況が続いている。

NHK 受信料 督促 未払い スクランブル化 NHK

 NHKが支払督促を本格的に強化し始めたのは、2025年11月18日のことだ。本部に専門組織である「受信料特別対策センター」を設置し、テレビなどを設置して受信契約を結んでいるにもかかわらず、長期にわたって受信料を支払っていない世帯や事業所に対し、民事手続きを強化する方針を打ち出した。この背景には、未収件数の急激な増加に対する強い危機感があった。

 NHKによると、長期未収件数は5年間で約100万件増加し、未収数が最も少なかった2019年度の約2.5倍にまで膨れ上がっていた。その結果、2024年度末の支払率は78%にまで低下しており、NHKは不公平感の解消と未収増加への歯止めを目的として、督促強化に踏み切った。

NHK 受信料 督促 未払い スクランブル化 未収件数の増加を受けてNHKが受信料特別対策センターを設置し民事手続きによる支払督促を本格的に強化したことが分かる(出典:NHKの報道発表資料)

昨秋からの「督促強化」、効果は?

 そして迎えた2026年5月の会見で、井上会長は未収数が昨秋から3000件減少したことを報告した。

 井上会長は「2019年度以来、6年ぶりに減少に転じさせることができ、この半年間の取り組みの成果として、勇気付けられる数字だと受けとめている」と高く評価。さらに、書面による案内や対面での説明に加え、「支払い督促による民事手続きなども含めた、全局体制で未収対策を強化した成果だ」と強調し、強硬策が実際の数字として表れ始めたことに自信をのぞかせた。

「見ないのに払うのは…」拭えぬ視聴者の不満 スクランブル化すべきとの声も

 一方で、NHKのこうした姿勢に対し、世間の風当たりは依然として冷たい。見たいコンテンツにだけ対価を払う動画配信サービスが定着した現代において、テレビを設置しているだけで料金を徴収されるスタイルへの不満の声が後を絶たない。

 ネット上にはNHKの番組を見たい人だけがお金を払って見られるようにすべきだとの声があがっているが、その仕組みや制度は実現に至っていない。

 放送信号に暗号化処理を施して契約者以外が視聴できないようにする「スクランブル化」が実現しない主な理由は、受信料を支払わない人に放送を見せない仕組みが公共放送の役割と矛盾するためだ。

 CMスポンサーによって成り立つ民法とは違いNHKには番組中のCMが挟まれない。NHKは受信料を財源にすることで、特定の利益や視聴率に左右されず、社会生活の基本となる情報や多様な番組をいつでもどこでも誰にでも提供する役割を担っている。さらに、お金を払った分だけ見せる対価主義を導入した場合、お金を支払ってもらいやすいよく見られる番組に偏り、番組内容が画一化していく懸念もあると説明した。視聴者の要望に合う番組ばかりに偏ることは、選択肢を狭める結果につながる。

 NHKは災害時の迅速な情報提供の他、教育や福祉、古典芸能といった視聴率だけでは測れない番組も数多く放送している。こうした番組が減ることは、放送法が掲げる健全な民主主義の発達に資するという公共メディアとしての責任と一致しなくなる。そのため、視聴率に左右されずに豊かな文化を育む多様な番組を維持する目的から、NHKはスクランブル化を導入していない。

NHK 受信料 督促 未払い スクランブル化 NHKは特定の利益や視聴率に左右されず多様な番組を分けへだてなく提供する公共放送の役割を担っており、不払い者に視聴制限をかけるスクランブル化はその役割と矛盾するほか、番組内容の画一化を招く懸念があるため(出典:NHK公式サイト)

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