20代の筆者が2026年に「カセットウォークマン」へ回帰した理由 タイパ時代にあえて“不便”を選んで発見したこと(1/2 ページ)

» 2026年07月09日 11時48分 公開

 あのウォークマンを買った。

 絶頂期のソニーのプロダクトで一世を風靡(ふうび)したといわれているウォークマンとはどんなものだろう――。そんな思いで、何となく探し始めたウォークマンだが、あれよあれよとフリマサイトで購入してしまったのが2026年2月。使い始めると、すっかりその魅力に取り付かれてしまった。

メルカリでジャンク品を購入、自分で修理する

 カセットテープのウォークマンといえば、初代の「TPS-L2」がカルト的な人気があるが、残念ながら、全く触ったこともないものを、中古相場で5万円も出してホイホイ買えるほどの財力はない。

 そんな中、フリマアプリのオークション機能で出品されていたウォークマンに何げなく入札していたら、数千円で落札してしまったのが写真の「WM-F203」である。

ウォークマン 1987年発売のWM-F203は、自分よりも10歳以上年上である

 もともと「ラジオ、聞いてみたいな」から始まり、アナログラジオを探していたのだが、どうやらカセットプレーヤーにラジオ機能が付いたものがあるらしいと知った。そうか、ウォークマンという手があるのか、というのが購入のきっかけだ。ゆえに、自分が落札したのは、ラジオ機能は動くがカセット不動のジャンク美品だった。

ウォークマン ローラー部分にサビが見られるが外観は悪くない、単3電池ボックスの機能も異常なし

 はじめはラジオを聞ければいいや、と思っていたが、いざ手に取ると、本体サイズの9割を占めるカセット機能が動かないのは、もったいないと感じる。電池を入れてカセットを動かそうとすると、キュルキュルとモーター音はするので、完全に死んでしまったわけではないようだ。昔のカセットプレーヤーにありがちなゴムベルトの劣化が原因かと思い、分解修理を試みてみた。

ウォークマン ゴムベルト交換の様子。このサイズで基板とローラーがみっちりと詰まっているところにウォークマンの美しさを感じる

 分解したところ、ビンゴ! モーターは元気でゴムベルトが加水分解でだめになっていただけだった。早速、秋葉原の電脳街で新品のゴムベルトを数百円で入手。無水エタノールで清掃してから交換すると、何と動くではないか! こうして無事、完動品のカセットウォークマンを入手できた。

一期一会、ラジオ機能を楽しむ

 本来の目的だったラジオは家でも移動でも楽しんでいる。開けた河川敷を散歩していると、よく電波が入ってクリアに聞こえるし、商業施設に入るとノイズで全く聞こえなくなるのもいい経験だ。特にサブスク全盛期の今、ギガ(データ通信量)を消費せずに音が聞こえてくるのは何だか不思議な気持ちになる。

ウォークマン ウォークマン片手に散歩

 お気に入りのラジオ局は、米軍基地から流れてくるEagle 810(AFN Tokyo)だ。単純な感想だが、さも当たり前のように全部英語で流れてくるので、何となく聞いているだけで楽しい。たまに聞いたことがあるけど、名前は知らないような現代的な洋楽ポップミュージックが流れてくるのも、気分が乗って爽快だ。

ウォークマン 竹芝ー伊豆大島間の大型船にて。ネットがなくてもラジオが聞ける!

 旅行先でラジオを聞くのも乙だ。どの都市にもたいてい地域密着型のラジオというものがあり、たいてい地元を盛り上げるための番組が流れている。自分は何げなく旅先のレンタカーでラジオを聞くのが好きだが、ウォークマンを使えば車を借りずともご当地ラジオが聞ける。番組内のちょっとした地元自慢が観光のきっかけになるし、何より地元民になった気分で街ブラできて大変気分がいい。

 また、自分は離島趣味があるのだが、外洋航海ではネットが不安定でも、甲板に行けばたいていラジオの電波は届く。知識として分かっている「ラジオは周波数帯が低いから遠くに届きやすく、災害時の情報伝達手段としても有効であること」を肌で実感できる。残念ながら船内に入ると(窓際以外は)ラジオは全く受信できなくなるのが常だが、潮風を浴びながらラジオを楽しむのは小粋だと感じる。

録音機能でオリジナルアルバムを作る

ウォークマン 今でも販売されているMaxellの新品カセットテープ

 修理して無事動くようになったカセット機能だが、平成2桁年生まれの僕はそもそもカセットなんて持っていない。少し調べてみると、まだまだカセットテープが新品で売っているようだったので、まずはこれを購入してみた。

ウォークマン マイクから好きな音楽を録音してオリジナルアルバムを作る。録音中はイヤフォン端子から録音音源が聞こえる

 自分が手にしたWM-F203は、本体表面に「Recording ウォークマン」と書いてあるように、マイク端子があり、録音機能を備えている。そこで、コロナ禍のYouTuber時代に買ったピンマイクをつなげてスピーカーに近づけ、音楽を新品のカセットテープに録音する、という倒錯的なやり方(令和式ダビング?)でカセットテープにオリジナルアルバムを作ってみた。

 ピッチが少し狂っていて再度分解したり、ベルトの速度を調整したりしたが、無事それなりに聞けるアルバムが完成した。

 正直、モノラルマイクで録音したのに、なぜか左右の音の大きさが微妙に波打っているように聞こえる点が気になる。磁気ヘッドのクリーニングやテープを送るピンチローラーの交換が必要なのかもしれないものの、そこまでやろうとすると結構な分解が必要なようで、素人なのでそこまではできず諦めた。とはいえ、ノイズも含めてレトロな音質、ということでそれはそれでいいものだと思う。

 サブスクサービスの中で作っていた自分のアルバムが、手に触れるモノとしてできた、というのは不思議な気持ちだ。今、オンラインで作ったアルバムはワンタップで全世界に公開できるが、昔はこうやってアルバムを作って友達と交換していたんだなぁと思うと実にエモい。

 30分×A面B面の60分縛りが生まれるのもいい。ぴったり30分になるように選曲してできるだけ雑音が入らないように録音するのは儀式的だし、完成したら達成感もある。TikTokやInstagramで刹那的にサビを抽出した音楽を消費する現代と対極的なところに自分はいるのだ、というちょっとした優越感を覚えてしまう。

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