20万回線目前のHISモバイルが仕掛ける「価格破壊」と「海外eSIM」 日本通信の音声フルMVNOも追い風に:石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)

» 2026年08月29日 10時40分 公開
[石野純也,ITmedia]

 海外旅行代理店大手のHISと、老舗MVNOの日本通信がタッグを組んで設立したH.I.S.Mobileが、「HISモバイル」の新料金プラン「自由自在3.0プラン」を発表した。9月17日から導入される。自由自在3.0プランは、30GBの中容量帯を2000円未満に設定しており、大手キャリアのオンライン専用ブランドより一段安いのが特徴。ここには、音声通話の「6分かけ放題」もこの価格に含まれている。

 料金面では、主に現行の料金プランから中容量帯の価格を大きく引き下げた格好だが、自由自在3.0プランは、特典の強化を打ち出し、“HISらしさ”をより強めている。それが、無料の海外eSIMだ。このサービスを提供するにあたり、同社はイスラエルのVoye Global Connectivityと連携。専用プランの開発も行っている。ここでは、その詳細や、同社の戦略を解説する。

HISモバイル H.I.S.Mobileは、9月17日に新料金プランの自由自在3.0プランを開始する。写真は、同社代表取締役社長の猪腰氏

30GBを2000円未満に引き下げ不安を解消、迷ったら30GBを訴求

 HISの自由自在3.0プランは、現行の2.0プランと比べ、中容量帯にあたる10GB以上の料金を大きく引き下げているのが特徴だ。最大容量の30GBは、2000円を下回る1999円。20GBプランも1699円で、これら2プランには6分間のかけ放題もセットで付く。

 H.I.S.Mobileの代表取締役社長、猪腰英知氏は「改めて調べてみたが、現状、30GBで2000円を切って商品提供している事業者は見受けられない」と述べ、新料金の安さに自信をのぞかせた。

HISモバイル 1GBプランで100MB以下だった時に280円からという最安部分は変わらないが、10GB以上の料金を大きく引き下げているのが特徴だ

 非常に安価な料金プランのため、HISモバイルでは「迷ったらまず30GBを選んでいただく」(同)よう、訴求していくという。実際、30GBの「ahamo」は料金が2970円。UQ mobileの「コミコミプランバリュー」も、割引込みで3168円となり、HISモバイルより1000円以上高い。2000円未満というインパクトのある数字を打ち出すことで、アピールにつなげた格好だ。

HISモバイル 全プランを2000円未満に設定し、迷ったらまずは30GBを選ぶ環境を提供する

 30GBは、大手キャリアでは一般的な容量だが、HISモバイルに回線を提供する日本通信も提供していない。近い価格帯では、「合理的50GBプラン」を2178円に設定しており、1GBあたりの単価は安くなる一方、絶対値としての価格は上がってしまう。MVNO最大手のIIJmioも「ギガプラン」の25GBが2000円で、HISモバイルより容量がやや少ない。

 ただし、この30GBプランはあくまでユーザーに安さを訴求するためのもの。自分のデータ使用量を把握していない人が、最初に契約することを想定している。「多くの人が買っているのはギガではなく、容量の不安」(同)という考え方に基づいているからだ。そのため、HISモバイルでは「30GBでご契約いただいても、使わないギガにお金を払い続けないことを提案したい」(同)という。

HISモバイル 利用実績を踏まえ、後からプラン変更することを提案していくという

 実際、ユーザーのデータ使用量は、大手キャリアのそれと比べるとまだまだ少ない。猪腰氏が紹介したMMD研究所の調査によると、全体の52.8%が7GB以下に収まっているという。2年前は7割を超えていたため、データ使用量が増加傾向にあることも事実だが、それでもMVNOの主戦場は依然として小容量にあるといえそうだ。

HISモバイル
HISモバイル 中大容量プランが増えているが、利用実態を見ると7GB未満や3GB未満のユーザーがいまだ多い

 そのため、HISモバイルでは「迷ったらまず30GBを選んでいただきたいが、毎月利用実績を送っているので、その明細を見て7GBにしていただければ価格はもっと下がる」というように、プラン変更を積極的に提案していく方針。あくまでメールでの告知にとどまるものの、「(プラン変更を)あっせんするようなことは仕掛けていこうと思っている」(同)という。

新特典の海外eSIM無料でローミングに対抗、国内旅行向けの臨時回線提案も

 一方で、MVNOも料金の安さだけが選択基準ではなくなり始めている。独自の経済圏やサービスを持つ事業者が、MVNOに参入し始めているからだ。猪腰氏は、航空会社が始めたJALモバイルやANAモバイルといったMVNOを挙げ、「マイルの経済圏や特典の付加価値を提案することで、多くのユーザーを獲得しているという話も聞こえてきている」と語る。

HISモバイル MVNOの選択でも、単なる安さだけでなく、付加価値が重視されるようになってきている

 旅行代理店を親会社に持つHISモバイルが提供できる付加価値とは何か。これを考え、10月1日から提供を開始するのが、無料の海外eSIMだ。同社は、自由自在3.0プランのユーザーに、130の国や地域で利用することができる有効期間が15日間のeSIMを、年1回無料で提供する。データ容量は4GBだ。

 料金水準の近い楽天モバイルは、毎月2GBまで無料で海外ローミングが可能。ソフトバンクのサブブランドであるY!mobileも、2026年秋から毎月2GBまで、海外ローミングを無料にする(現在は過渡期として6860円分を無料にしている)。ただ、2GBだと平均で4〜5日滞在する海外での利用には「ちょっと足りない」(同)。HISモバイルは海外用Wi-Fiルーターを手掛けており、その実績から1日に500MBは必要だと判断し、4GBに設定した。

HISモバイル 新たに、Voye Global Connectivityを活用した海外eSIMの提供を開始し、自由自在3.0プランのユーザーには、年1回、15日間有効の4GBプランを無料で提供する

 大手キャリアの場合、月額料金にひも付くため、毎月定められた容量を利用できるが、毎月海外渡航をするユーザーは一般的ではない。HISモバイルでは、多くの人に当てはまる年1回に限定した上で、その1回分を十分賄える容量にしたというわけだ。この海外eSIMは、イスラエルに拠点を構えるVoye Global Connectivityが提供する。

 ただし、料金プランはHISモバイル側が大きくカスタマイズしており、「弊社用の専用プランを開発した」(同)。年1回、無料で提供できるのはそのためだ。このサービスの特徴を生かし、国内旅行で一時的に利用するeSIMも提供する。利用期間は1日で、データ容量は50MB、1GB、3GBの3つ。国内では、ドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアにローミングする形になるため、地方の山の中や、人が少ないエリアを旅行する際につながる確率が高まる。

HISモバイル 料金には含まれないが、国内旅行用を想定した3キャリアにローミングするeSIMの提供も行う

 実際、猪腰氏も「温泉地に行ったらドコモ回線が入らず困ってしまったが、そこはauやソフトバンクが入っている環境」で通信を継続できたという。「(海外eSIMは)訪日外国人向けだったが、あえて使いやすい1日単位にして、国内旅行でも使えるという提案をしていく」(同)形だ。旅行の通信をまかなえるという点で、よりHISモバイルらしい付加価値を打ち出せるようになってきたといえる。

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