スマホに格納する「デジタル学生証」の最新事情 学割定期の購入やタッチで出欠確認、“なりすまし“対策も(2/3 ページ)

» 2026年09月02日 12時24分 公開

国際標準化も進むデジタル学生証 学割定期は購入できる?

 デジタル学生証を技術的に検証する仕組みはできたが、これを実展開に結び付けるには2つの課題がある。1つは前出の「周囲がデジタル学生証を認めてくれること」であり、もう1つが「デジタル学生証の国際標準化」だ。

 まず後者の話をすると、もともとmdocの仕様は「ISO/IEC 18013-5」で定められる「mDL(モバイル運転免許証)」の標準化を軸に策定が進んでいたこともあり、デジタル学生証で必要となる「非対面(オンライン)での証明」「学年や在籍証明となるデータ項目」といった部分に対応していなかった。標準仕様がないからといってIssuerである各大学が勝手に項目を定義し始めると収拾がつかなくなる。

 そこで国立情報学研究所(NII)が主体となり、日本の大学が共通して利用できる国内共通プロファイルを策定した。これに準拠した形で、大学で共通して利用できる「Diginin 学生証プラットフォーム」をフェリカネットワークスが提供する。大学は学生向けに提供しているデジタル学生証アプリに同プラットフォームを組み込むことで、VCの仕組みを利用したデジタル学生証が提供できるようになる。

 なお、本来mDLは対面での検証を主体としていたため、Webブラウザなどのオンライン経由での検証は考慮されていなかった。OpenIDはこのオンライン検証を行うための通信プロトコルの国際標準化を進めている。例えば学生がオンラインで学割定期を購入する場合など、わざわざ駅窓口まで出向かずとも、スマートフォンアプリからデジタル学生証を提示することで処理が可能になる。

Diginin 学生証プラットフォーム フェリカネットワークスが提供する「Diginin 学生証プラットフォーム」

 次に重要なのが「周囲がデジタル学生証を認めてくれること」だ。恐らく一番大きいのは学割定期券だが、大阪大学では何段階かに分けて実証実験を続けている。1つ目は西日本旅客鉄道(JR西日本)と実施したもので、大阪大学が在学証明書を(mdocで)デジタル発行し、デジタル庁が提供するデジタル認証アプリ(現在はマイナアプリに統合済み)を使ってマイナンバーカードによる本人確認を行い、学生であることを確認できればお得な割引チケットを販売するというもの。

 合わせて顔認証用の情報登録も行っておけば、大阪駅にある顔認証改札をそのまま通過できる流れだ。また同年4月には大阪大学、NEC、大阪モノレールの3社で学割定期券の本人確認実験も行っている。マイナンバーカードと通学証明書、そして顔情報を組み合わせて真正性の高いデジタル本人確認証明書を提示するもので、基本的には定期券販売窓口に1回顔を出すだけで後はオンラインで完結する。将来的に定期券自体もオンライン販売が可能になれば、もはや初春の風物詩である有人窓口の長い行列を見ることもなくなるだろう。

JR西日本 2025年3月に行われた実証実験。JR西日本と共同で割引チケットの販売実験を行う
顔認証改札 大阪駅のうめきた地下口にある顔認証改札を通過する様子。現在は通常の改札機と一体型のものに置き換わっている

 2026年3月に行われた実証実験では、ここまで名前が挙がってきた関係各所に加え、関西地区の複数の大学や「カラオケまねきねこ」を展開するコシダカホールディングスを加えた座組で、「より広域な大学やサービス事業者を交えてデジタル学生証(在学証明書)は有効か」というテーマでの検証が行われている。

 前述の通り、現時点で既に共通の学生証プラットフォームが稼働を始めており、本格的な移行を始める大学も出始めている。効果検証を踏まえたデータはそろいつつあり、後はどれだけの大学がこの取り組みに乗り、周辺事業者が賛同するかにかかっている。

大阪大学 2026年3月に行われた実証実験。今回は複数大学と複数事業者を対象にした点が大きい

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