先に述べた通り、現状では残価を算出する際のグループ化で、端末を選択する自由がある。Androidスマホの残価が同一機種でもキャリアごと大きく異なるのは、このグループ化によるところが大きい。一方で、残価の設定が機械的に決まるようになると、iPhone、Androidとも、おしなべて残価率が下がってしまう懸念がある。
例えば、2023年9月に発売した「iPhone 15 Pro」は、256GB版が17万4800円に設定されていたが、RMJの実績を見ると、丸2年後の買い取り価格は9万1412円まで下がっている。これに基づき、後継機である「iPhone 18 Pro」の残価率を設定したとすると、52%程度までしか下取りで免除できないことになる。これに対し、現状では各キャリアとも、4万円台から6万円台の実質価格を設定している。
ソフトバンクの場合、本体価格は26万8560円のため、残価の上限は約14万円。ここに割引の上限である4万4000円を加えたとしても、実質価格は8万円台まで上がる。プログラム利用料込みで4万円台の現状と比べ、実質価格は2倍に上がる計算だ。iPhoneは機種ごとの残価率の変動が少ないため、1つ目のグループ化をしたとしても、この数値が大きく変わることはないだろう。iPhoneより買い取り価格の低いAndroidは、さらにその傾向が強まる。
ソフトバンクのiPhone 18 Pro(256GB版)は、MNPでの実質価格が2万3760円。特典利用料を入れても4万3760円で、残価率は66%程度に設定されている。もしキャリアの裁量が禁止されれば、ここまでの残価が設定できなくなるこうした試算の結果を踏まえると、Googleがパブリックコメントで「過去の官製不況のように端末メーカーのビジネス継続を大きく脅かす恐れや販売代理店の事業にも多大な影響がある」と述べている背景も理解できる。フェアな競争をする上で一定のルールがあるのはやむを得ないものの、市場の買い取り価格から乖離(かいり)しない、“真の残価”を決めること自体にかなりの無理があるようにも思える。
厳密にやろうとすれば、今よりも負荷が増える上に、どうデータを取るのかが問題になる。上記の例で挙げたiPhone 15 Proの256GBで言えば、わずか260台の買い取り価格から平均値が出されているからだ。機種によっては数台というものも存在するため、Googleが述べていたように、統計的に正確とはいいづらい。事実、機種によっては時間が経過した方が買い取り価格が上がっているものもある。
そもそも、中古業者は端末を買い取り、一定のマージンを乗せて販売するのが主なビジネス。利益を見越して設定された買い取り価格を端末の残価と同一視する仕組みには、違和感を覚える。また、先に述べたようにユーザーにとっては、メルカリやYahoo!オークションではスマホが主要商材の1つになっており、その規模も全体で数十万台規模にまで拡大している。これを無視した残価が本当に“市場価格から乖離していない残価”なのかにも大きな疑問が残る。
メルカリが9月に公開したトレンド通信。スマホの取引は年々増加しており、中古市場の中での存在感も大きい。C2C全体でも数十万台規模まで伸びている。なぜ、ここを基準にするのが“潜脱行為”になるのかの説明もない細かく挙げていけばきりがないが、端末価格の規制はルールを継ぎ足してここまできており、一般のユーザーの理解が追い付かないところまで複雑化している。通信料を原資にした過度な割引を抑制するといった本来の趣旨を離れ、ルールのためのルールになっているきらいもある。専門委員会でも指摘されていたように、諸外国との乖離も大きくなっているため、いま一度、原点に立ち返るべきときが来ていると感じた。
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