そのネットワークを利用するサービスにAIが組み込まれ、さらに人間だけでなく、ロボットや自動運転などのAIそのものが発生させたトラフィックがネットワークに乗ることで、必要とされる要件も変わろうとしている。ダウンリンクとアップリンクの割合が変わり、後者の重要性が増しているのは、その一例といえる。
ドコモの坪谷氏は、自社のデータを引きながら「特に上りのトラフィックが、想定を超える1.2倍ではないのではないかということで、設備の増強に拍車を掛けている」と話す。AIの発生されたトラフィックではないものの、既に「イベントでは、アップリンクの(割合が)徐々に上がってきていることが顕在化している」(同)という。
例えば、スマホとリンクしたAIグラスで目の前にあるものを映像として捉え、それをサーバ上にあるAIで認識して、結果を返すというときには、写真や動画のデータを送信し続けることになる。クラウド上のAIアシスタントとのやりとりも、会話となれば音声データのアップロードが必要だ。こうしたサービスが定着すれば、SNSや動画サイト、メッセンジャーなどでの送信とは頻度も大きく変わってくることが容易に想像できる。
こうしたトラフィックに対処する一例としてドコモの坪谷氏は3つの周波数帯に対応した「Tri-Band Massive MIMO」を挙げ、下りだけでなく「上りも4倍近いスピードになることを確認している」とその成果を強調した。現在は、イベントなどのトラフィック対策に活用しているが、今後は「フィールドに展開していく計画」(同)だという。
また、AIに素早く要求を出し、返ってきた応答をどのように反映させるかという点では、遅延も今まで以上に小さくしていく必要がある。ソフトバンクの船吉氏は、「リクエストやプロンプトに対して、どれだけ早くトークンを返すか。場合によっては、1秒に100回返さなければいけない。分散をすることで、物理的に(AIが置かれている場所が)近くなり、応答時間も早くなる」と語る。
丹波氏は、ロボットを例に挙げつつ、「動いているものが時速60kmで近づいてくると、1秒たったら16〜17m進みます。仮に10分の1の時間で反応できたとしても、その間に1.7m進んでしまう。その相手に対して『止まれ』と言っている間に、指示が伝わったときにはもうぶつかっている」と話す。AIのフィードバックを反映させるにも、低遅延が重要になるというわけだ。
ソフトバンクのAITRASは、基地局そのものが計算基盤になっているため、こうした処理を低遅延で行うことができる。同様に、ドコモの坪谷氏も、ドコモビジネスの取り組みとしてGPUやAIモデルそのものをネットワーク内部に配置していく方向性を示しており、各キャリアとも狙いは近い。6Gに向け、こうした融合がより進んでいくことになりそうだ。
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