講演の後半では、パートナー企業と共に未来を切り開く「場」の構想が語られた。
品川駅北口に位置する未来への実験場「高輪」、半世紀以上にわたり衛星通信を支えてきた「山口」に続き、松田氏が長い時間を割いて紹介したのが大阪府の「堺」だ。
堺では、シャープの液晶工場跡地を次世代の産業インフラとして再生した「大阪堺データセンター」が2026年1月から稼働している。松田氏は、この計算基盤の拡張計画を明らかにした。
「2027年には、米NVIDIAの最新世代GPU『Rubin』を導入する。現行のBlackwell世代と比較して、最大で10倍の性能向上が見込まれている」といい、KDDIは計算基盤の構築から「フィジカルAIの社会実装」へと踏み出す。
さらに、松田氏は堺を起点とする3つの重点領域を提示した。
1つ目は、日本交通と連携した自動運転タクシーの実証だ。現在、堺市内で走行データを収集しており、2027年度からは商用タクシーでのデータ収集を開始。2028年度にはレベル4の自動運転タクシー商用運行を目指す。「堺で走り、堺で学ぶ」を合言葉に、通信と遠隔監視体制で運行を支える。
2つ目は、新会社「ELYZA Robotics」の設立だ。2030年度までに研究開発費300億円を投じ、300人の専門家集団を組織、1000台以上のロボットを物流・製造現場へ導入する計画を掲げる。堺データセンター内に産業現場を模した実証フィールドを設け、現場データとGPUを直結させた継続的なモデル改善を行う。
3つ目はドローン物流だ。米Alphabet傘下のWing Aviation LLC(以下Wing)と戦略的パートナーシップを締結し、国内でのドローン配送を本格展開する。Wingは世界で100万回以上の商用配送実績を持ち、注文から30分以内の配送を実現している。日本国内では、2027年中に一部エリアで日用品や食料品などの配送を開始する見通しだ。
松田氏は、堺を「現象の把握から学習、社会実装までをワンストップで完結させるAI実装の発信基地にする」と位置付ける。
今後、産業界におけるAI処理は一極集中から分散配置へと移行していく。産業や用途ごとにどのエッジにAIの頭脳が必要とされるかは異なるため、学習から推論までを低遅延で結ぶ最適なネットワーク設計がインフラの成否を分ける。KDDIは通信キャリアとしての強みを発揮し、堺で実証・実装を進めていく。
最後に松田氏は、高輪、山口、堺という3つの重要拠点を、陸・海・空を網羅する全国低遅延網「デジタルベルト構想」で結び、新たな産業を起こす実践の枠組みとして「アライアンスパーク・プロジェクト」を立ち上げると発表した。
「AI時代だからこそ、人の体験や雰囲気で選ばれる時代になる。人間一人一人の成長を後押しし、熱意を持った人々が集まる場を作っていく」(松田氏)
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