PayPayが11月4日、2026年度第2四半期決算を発表した。上期ベースで7期連続の増収増益を達成し、通期業績予想を再度上方修正した。日常の決済を「幹」に見立て、そこからPayPayカード、PayPay銀行、PayPay証券といった金融サービスの「枝」へと送客・クロスセルを進める成長モデルが結実した形だ。
同日行われた決算説明会では、代表取締役 社長執行役員CEOの中山一郎氏が事業の進展や今後の成長戦略を語った。
2026年度上期の連結業績は、営業収益が前年同期比28%増の2279億円、調整後EBITDAは同57%増の795億円と大幅な拡大を記録した。第2四半期(単独)でも営業収益が1181億円(前年同期比28%増)と高水準を維持している。
業績をけん引したのは、主軸である決済の取り扱い高拡大に加え、PayPayカードのリボ・分割やキャッシング残高の伸長、金利上昇を背景とした銀行の預金・貸出残高拡大だ。6月に実施したポイント特典の見直しなど、コスト効率化も利益率向上に寄与した。
好調な上期実績を受け、同社は今期2度目となる通期業績予想の上方修正を発表した。通期の営業収益は従来の4650億〜4730億円から4740億〜4780億円へ、調整後EBITDAは1490億〜1550億円から1590億〜1630億円へ引き上げる。
中山氏は「サービス開始以来、決済の規模を広げながら調整後EBITDAもしっかりと拡大してきた。足元では調整後EBITDAが営業収益を上回るペースで成長している」と手応えを示した。
PayPayの成長を支える基盤は、圧倒的な決済シェアだ。キャッシュレス推進協議会の動向調査に基づく同社のシェアは、コード決済の金額・回数ともに約70%、個人間送金では98%を占める。
中山氏は、この強固な決済基盤を「木の幹」に例える。銀行や証券に比べて接触頻度が圧倒的に高い日常決済を入り口に、膨大なトランザクションを獲得。そこから金融サービスへユーザーを導く戦略だ。
「幹が太くなるほどカードの金融関連残高も成長し、他の金融サービスへクロスセルができる。カード、銀行、証券という金融の枝にも、より多くの顧客接点と成長機会が生まれる」
既にPayPayカードの有効発行枚数は1870万枚に達し、金融関連残高は前年同期比26%増の6000億円に拡大した。さらに、同社サービスを2つ以上利用するユーザーの割合は38%に達しており、利用サービス数が増えるほど決済金額も跳ね上がる。中山氏によれば、「PayPay単体のみを使うユーザーと、4サービスを利用するユーザーでは月間決済金額に約5倍の差がある」という。
1ユーザーあたりの平均収益を示すARPUは1050円に達し、直近3年間の年平均成長率は16%を記録した。中でも金融サービス領域の年平均成長率は33%と、全体の伸びを大きく上回るペースで拡大が続く。
中山氏は、これらの成長を支えるドライバーは「決済回数とGMV(総決済取扱高)の増加」「PayPayクレジットの転換」「PayPay銀行と証券の利用促進」にあると振り返った。
サービス開始当初は「少額決済」のイメージが強かったPayPayだが、利用動態も変化している。2019年度第2四半期と比較してアクティブ率は36%から56%へ跳ね上がり、ユーザー1人あたりの月間決済金額は約4倍に拡大した。
1回あたりの決済単価は1930円まで上昇し、月間決済回数も3倍近くに増加した。「PayPayクレジット」への移行やPayPayカードの利用拡大に加え、オンライン決済の増加が貢献している。今後、オフライン決済の強みをオンラインでも広げていく考えだ。第2四半期の決済セグメントGMVは前年同期比20%増の5.6兆円となった。9月は悪天候の影響でオフライン決済が落ち込み、前年のふるさと納税駆け込み需要の反動などもあったが、こうしたマイナス要因を跳ね返した格好だ。
パートナーシップ戦略も順調に進む。セブン&アイ・ホールディングスとの提携では、11月1日からセブン-イレブンにて半額クーポンや最大3%還元などの共同キャンペーンを開始しており、2027年度下期以降のID統合に向けた準備を進めている。また、P&Dフィナンシャル生命への出資も計画通り進展しているという。
Visaと提携した米国事業の進展については、「Visaとの間でジョイントベンチャーを設立し、既に人員も派遣した。今期中をめどに市場調査と事業性の検証を進めているところ」と述べた。既に韓国や台湾などで日本のPayPayがそのまま使える環境を整備しているが、「海外展開は1つずつ着実に進めることが大切だと考えている。米国のように現地拠点を設けて事業展開を行うケースは、より慎重に見極めながら進めていく」とした。
10月にはJR東日本がSuicaのコード決済「teppay」の提供を始めた。PayPayにとってはライバルの参入となるが、中山氏は「スマートフォン決済の選択肢が広がることは、市場全体の拡大にとってプラスだ。非常に強力なプレイヤーの参入ではあるが、ポジティブに捉えている。当社としても決済起点の強いユーザー基盤を生かし、ユーザーや加盟店への価値提供を一段と強化していきたい」と述べた。
PayPayアプリを起点に多様なサービスの利用を促進する「スーパーアプリ」の戦略については、「PayPayアプリのホーム画面下部に各金融サービスの導線を配置し、シームレスなサインアップや本人確認ができるユーザー体験を磨いてきた。この動線が高い価値を認められ、利用継続につながっている」と中山氏は評価した。
なお、ソフトバンクショップを活用した金融口座獲得などの施策は現時点で計画しておらず、あくまでアプリを通じた利用拡大を基本路線として進めていく。
PayPay、セキュリティ対策は「万全を期すべく総点検している最中」と中山社長
PayPayが本人確認(eKYC)のセキュリティ強化 撮影廃止でICチップ読み取り方式へ統一
PayPay中山社長が語る「セブン提携」と「生保参入」の勝算 購買データ×AIで目指す金融プラットフォーム
PayPay上場後初の決算は大幅増益、若年層が成長をけん引 26年度には「一体型カード」投入へ
なぜ? 「PayPay改悪」といまネットで騒がれている理由 ユーザーがすべき対策を解説
“PayPay追撃”ではなく「Suicaの価値向上」──新決済「teppay」の意義や狙いを聞いたCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.