“隠れた本命”Optimus G pro発売/DeNAの音楽サービス「Groovy」開始/日本通信とKDDI、SBMの相互接続は実現する?:石野純也のMobile Eye(3月26日〜4月5日)(1/3 ページ)
春モデルの中でも一際高いスペックを持つLGの「Optimus G pro L-04E」が発売された。LGがアピールする同機種の魅力とは。ほかにDeNAがスタートした音楽サービス「Groovy」と、日本通信がKDDIとソフトバンクモバイルに対して相互接続の申し入れを行ったことも取り上げる。
春商戦も終盤に差しかかった中、5インチのフルHDディスプレイを搭載し、バッテリーも3000mAhと大容量の「Optimus G pro」が、4日に発売された。これに先がけ、LGエレクトロニクスは記者会見を開催。グローバル版との違いや、LGの戦略を解説した。DeNAが始めたスマートフォン向けの音楽サービス「Groovy」も、この2週間で話題を集めたサービスの1つだ。また、3月28日には、日本通信がKDDIとソフトバンクに対して相互接続の申し入れを発表している。今回の連載では、この3つを取り上げ、解説を加えていきたい。
春モデルの「隠れた本命」、Optimus G proが発売へ
NTTドコモは4月4日、LGエレクトロニクス製の「Optimus G pro L-04E」(以下、Optimus G pro)を発売した。これに先がけ、LGは都内で記者説明会を開催。LGの強みや、Optimus G proの売りを解説した。
Optimus G proは、5インチ、フルHD(1080×1920ピクセル)のディスプレイを搭載したAndroidスマートフォン。防水には対応していないが、その分、バッテリーを3000mAhと大容量化することが可能になった。バッテリーの容量を重視したのは、「最近のスマホに関する調査を見ると、ほぼすべての結果で一番の不満が電池関連になっている」(LGエレクトロニクス・ジャパン モバイルコミュニケーションプロダクト課長 キム・ヒチョル氏)ためだ。LGは海外メーカーとしてはいち早く日本市場でニーズの高かった防水に取り組んできたメーカーだが、「防水を入れてサイズを大きくしたり、バッテリーを減らしたりすることも検討したが、最大容量を搭載することにした」(同)、今回の端末ではバッテリーの持ちに重きを置いた。
「カタログで把握できる数字だと、連続待受時間が3Gで470時間、LTEで460時間と、春モデルの中でも一番長い。他社は『2日使える』と言っているが、うちはそれ以上を目指してがんばっている」(ヒチョル氏)
「LGの強みは垂直統合にある」(LGエレクトロニクス・ジャパン PR&デジタルマーケティング次長のキム・ドンゴン氏)といい、自社で製造するディスプレイにもこだわった。5インチ、フルHDというスペックもさることながら、製造工法にも新たな手法を取り入れ、ギャップレス化を行っている。ヒチョル氏によると「液晶と液晶を保護するガラスの間に、タッチセンサーを形成するフィルムやエアギャップ(空気層)などがある。今回はこれらをすべて取り除き、タッチパネルを形成するフィルをすべてカバーガラスに埋め込む工法を取っている」という。
これによって、ディスプレイに表示されるさまざまな映像が、ガラスに直接投影されているかのように見える効果を得られる。他社の端末にも似た手法は採用されているが、操作性や視認性の向上につながるだけに、うれしい改善だ。
一方で、韓国で発売中のOptimus G proには、5.5インチ、フルHDのディスプレイが搭載されている。なぜ日本版は5インチになったのか。ヒチョル氏はその理由を次のように説明する。
「ベースモデルをそのまま世界で展開できれば、会社の利益上はいい。ただ、それだけでは日本の市場で通用しないことは、重々承知している。現時点では片手で扱えるサイズが重要。液晶のサイズも、日本向けには5インチにカスタムして投入した」
もちろん、日本でもスマートフォンのディスプレイは徐々に大型化しており、1年前と比べれば、5インチでも十分大画面と呼べるサイズだ。形状によっては、片手での操作にも限界がある。ただ、大画面化のプロセスがほかのアジア地域とは少々異なり、いきなり5.5インチにステップアップするというより、0.1〜0.2インチ刻みで、徐々に大きくなっているのが現状だ。
実際、海外、特にアジア地域で圧倒的な人気を誇るGALAXY Noteシリーズも、まだまだ日本では大ヒットしているとは言いがたい。一方で、春モデルの5インチ端末は売れ筋になっている。こうした市場の反応を考えれば、この選択は正解だったように思える。韓国ではBluetoothでの通話が一般的で、キーボードが両手入力に最適化されているが、こうした文化が日本に根づいていないのも、5インチというサイズにこだわった理由だ。ヒチョル氏も「日本だと耳に当てていないと違和感があるが、韓国では手にしっくりくる大きさは重要視されていない。それより液晶が大きく、コンテンツを楽しめることが重要視されている」と語っている。
スペックにこだわるOptimus Gシリーズだけに、Optimus G proは、CPUやマルチタスクにも優れている。CPUはQualcommの「Snapdragon 600」に属する「APQ8064T」を採用しており、クロック数は1.7GHzと非常に高い。
「1.7GHzのSnapdragon 600もLGのみ。なぜLGだけかと言うと、CPUメーカーとの関係や、チューニング力があるから。基幹部品をちゃんとコントロールできるのは、ストロングポイントだと認識してほしい」(ヒチョル氏)
こうしたパワーを生かし、「Qスライドアプリ」と呼ばれるミニアプリを最大2つまで起動できる、UIの工夫も盛り込んだ。
このOptimus G proは「隠れた本命」だとヒチョル氏は自信をのぞかせる。一方で、Optimus G proは発売が4月になり、日本の通信業界最大の商戦期である3月を逃してしまった。「もともとはもう少し早い発売で進めていたが、カスタムの度合いに引っ張られてしまった」(同)というのが、その理由だ。日本市場を重視した開発姿勢は評価できるが、発売時期が遅れてしまったのはLG側の誤算だ。グローバル端末からの変更を少なくすれば、発売のタイミングはコントロールしやすくなるが、日本市場に最適化していないとどうしても端末は売れない。このトレードオフのバランスをどう取っていくのかは、世界で活躍するメーカーにとって常に悩ましい課題といえるだろう。
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