Windowsをめぐる最大の不満の1つは、ユーザーが望んでいるほどセキュアではないということだ。AppleのMac OS Xは、セキュリティに関しては評価が高い。こういった声に応え、MicrosoftはWindowsの信頼性とセキュリティの強化に力を入れた。一方、Appleもユーザーの安全を守るべく、Mac OS Xのセキュリティ機能を改善した。セキュリティは両社の重要な戦場になっているのだ。その結果は、両プラットフォームで優れたセキュリティが実現されることにほかならない。
MicrosoftがWindows Vistaを提供していたとき、多くのPCベンダーは同OSに不満を抱いていた。ユーザーがVista搭載PCを買わなかったのだ。この状況に対処するため、ベンダー各社はWindows XPを使い続けたいというユーザーに「ダウングレード権」を提供することを決めた。新しいWindows OSに合わせてハードウェアの最適化を促すだけの魅力がVistaにはなかったのだ。しかしWindows 7に対しては、ベンダー各社が大きな期待を寄せている。このため、各社はAppleの美学に果敢に対抗する製品のデザインにエネルギーを集中することができそうだ。これは、Windows 7とSnow Leopardが死闘を繰り広げる中で、ユーザーはより洗練されたデザインのハードウェアを期待できることを意味する。
MicrosoftはVistaに関連した同社の弱点を理解した。その弱点のせいで、Appleが大成果を上げた「Mac君とパソコン君」CMキャンペーンでもMicrosoftは敗北を喫した。歴史を繰り返させまいと、MicrosoftはVistaで特に目立った問題点(ドライバサポートの不備、煩わしいユーザーアカウントコントロールなど)をWindows 7で解消した。同社はその過程で、Windowsを有望なOSに仕立て上げることに成功した。この点でもAppleに感謝すべきだ。
MicrosoftあるいはAppleのどちらかがOS市場で独り勝ちの状態であれば、ソフトウェアデザインのイノベーションの必要性が少なくなるだろう。圧倒的優位にある側が現状を維持することで満足するからだ。しかしAppleがMicrosoftにプレッシャーをかけてきたおかげで、Microsoftは積極的にリスクを冒すようになった。また、斬新なアイデアに巨額の資金を投入するのもいとわなくなった。Windows 7に組み込まれたWindows XPモードはその好例だ。Appleの“手助け”がなければ、Windows 7がここまで来られたかどうかは疑問だ。
MicrosoftとAppleが戦いを繰り広げることで、企業にもメリットがある。両社は企業市場の価値を認識しており、この分野で成功することがいかに重要であるかを理解している。両社は今後、さらにアグレッシブに企業市場をターゲットにする可能性がある。企業のPC購入担当者にとってはうれしい限りだ。
MicrosoftとAppleの戦いがもたらすメリットとして、1つだけ確かなことがある。それは、両社とも将来に投資しようとしていることだ。両社は、コンピューティング市場の支配をめぐる戦いが今後も続き、革命的な製品がすべてを一変させることを知っている。また、競争相手に付け入れられる隙を与えると厄介なことになる恐れがあることも知っている。今後、ソフトウェアデザインにおける大幅な改善とイノベーションが期待できそうだ。そして、それによって最大の恩恵に浴するのはユーザーだ。
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