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フォロワー160万人の航空会社がTwitterユーザーにぶつけた“怒り”Adobe Digital Marketing Summit 2012

» 2012年03月30日 12時00分 公開
[本宮学,ITmedia]

 「デジタル革命の中心にいる人」「オタクナンバーワンとも言われている」――米Adobe Systemsの年次カンファレンス「Adobe Digital Marketing Summit 2012」のゼネラルセッションでこう紹介されて登場したのは、Twitter共同創業者のビズ・ストーン氏。若い起業家やソーシャルメディアを活用する企業にメッセージを送り、自身が立ち上げた新興企業Obviousについても語った。


photo ビズ・ストーン氏(左)、聞き手のAdobe Systems アン・ルネスCMO(Chief Marketing Officer)
photo 結婚直後のストーン夫妻

ルネス わたしが気に入っているあなたの写真を1枚紹介してもいい? 結婚式の直後に撮られた写真だけど、あなたの奥さんは人生で一番の失敗をしたという顔をして泣いていますね(笑)。

ストーン うん、そのとき僕は妻にこう言ってやったよ。「ベンジャミン・フランクリンを引用しよう。“大きな失敗は、発見よりもすばらしいことだ”」って。

 僕は失敗が好きなんだ。すばらしい成長の機会になるし、失敗したときの行動から自分自身のことが分かる。失敗から学べることはとても大きいよ。

ルネス 会社でも何か失敗をした人を採用したいと言っていましたね。

ストーン そうそう。例えば履歴書でも「こういうベンチャー企業を立ち上げました」ということよりも、「なぜ大企業をやめたんですか?」とか「給料よかったんでしょ?」とか、そういうことを知りたい。彼らが会社を辞めてから起業して学んだことは、僕らの会社に多くの知恵をもたらしてくれるからね。

 若い起業家には、良いアイデアがあるのに副業をしている人が多い。彼らは「副業はあくまで本業を続ける資金を得るためにやっている」と言うんだけど、僕はそれは正しくないと思う。大きな成功をするためには、自分の全てをアイデアにかけて、大きな失敗をしないといけないんだよ。

ソーシャルマーケティングで重要なのは「弱体化」

ルネス 今、多くの企業がソーシャルメディアをビジネスで活用しようとしているけど、こうした会社に対してどんなアドバイスを送る?

ストーン 大事なのは、まるでプレスリリースを書くかのようにユーザーと接しないということだね。

photo 米JetBlue AirwaysのTwitter公式アカウント。160万人以上のフォロワーがおり、メッセージを送ると“中の人”がすぐ返事をくれることで知られている

 例えば航空会社のJetBlue AirwaysはTwitterで公式アカウントを運用しているんだけど、あるとき“中の人”がユーザーに「こんなに質問してくるとは何ごとだ! いったいおれをどうしようというんだ」と怒りを吐き出したんだ。すると、それがTwitterユーザーにうけて「JetBlueの飛行機に乗りたい」という話題が盛り上がった。

 企業アカウントからメッセージが届く――これは人によっては奇妙だと思うかもしれないけど、僕はすごくユニークだと思ったね。

 ソーシャルメディアを使ったマーケティングは、何百年と続いてきたこれまでのビジネスとは違うと思う。「弱体化」が大事なんだ。例えばハリソン・フォードの映画でも、戦いのシーンの前に「こんな強敵と戦うのに、おれは大丈夫だろうか」と悩み苦しんでいる様子が出る。それと同様に、ソーシャルメディアでは会社の弱みをちゃんと見せて、会社の中に人がいることを示すこと。そうすれば、たとえ1%でもユーザーの中から助けになってくれる人が出てくるはずなんだ。

新興企業Obviousの目的とは?

photo Obviousは、ストーン氏、Twitter共同創業者のエバン・ウィリアムズ氏(右)、Twitterの元製品担当副社長のジェイソン・ゴールドマン氏(中央)が2011年に立ち上げた新興企業

ルネス あなたは今、Obviousの設立・運営に関わっていますね。「Obvious」というのは「明白」という意味だけど、この会社にはよく分からない点が多すぎるんじゃないかしら?

ストーン シリコンバレーの中でも特にやっかいな会社になっていると思うね(笑)。この会社では、他の企業と組んで共通の目標を設定して、開発力や人的リソース、資金を提供するということをしているよ。

 今取り組んでいるのは、各分野のエキスパートを呼び込んでさまざまな問題についてディスカッションしてもらう「Branch」というサービス。人々はBranchを使えば、専門家たちのエキサイティングなディスカッションを見ることができる。僕らが参画する前のサービス名は「Roundtable」だったんだけど、「ピザ屋の名前と同じじゃないか」ということでBranchに変えたんだよ(笑)。

 Obviousの役割は、こうした破壊的なサービスをやっている会社を助けていくこと。僕ら自身が主導して何かをするというわけではなく、さまざまなリソースを使って他の会社を助けていくというわけさ。

ルネス ちなみに今後はどんなプロジェクトをやっていくの?

ストーン それは秘密(笑)。でも、後から振り返ればobvious(明らか)になっていると思うよ。

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