VR(仮想現実)ゲーム向け3DCG映像が学べるコースを開講したり、世界で活躍する著名クリエイターの講義を毎月開催したりと、ユニークなプログラムを用意して多数のデジタルクリエイターを養成、輩出しているデジタルハリウッド。社会人・Wスクール向けのクリエイター養成スクールを1994年に開校した同校は、2000年代に入ってから株式会社立の大学と大学院も開学するなど規模を拡大している。
その特徴は、卒業後に即戦力となるクリエイター育成に特化していることだ。VR映像制作のように業界トレンドを抑えたプログラムに加え、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同での映像制作といった産学連携プロジェクトを積極的に行うなど、現場で役立つスキルや知識を学び、実践できる機会を用意している。
もともと通学制の対面型スクールとして生まれたデジタルハリウッドは、オンラインスクールも開校し、場所を問わずさまざまなプログラムを受講できるようになっている。ただ、クリエイティブを学ぶ性質上、講師との対面で指導を受けたいといった声も多く、今も対面型の専門スクールのニーズは根強いという。
しかし、それゆえに、専門スクールの受講者にとっては看過できない課題も生まれていた。それはいったい何なのか、どのように解決の糸口を見出したのか。デジタルハリウッド東京ユニット 東京本校 マネージャーの森内芳枝さんとデジタルハリウッドスクール事業部 東京ユニット ユニット長の山下潤さんに聞いた。
専門スクールの卒業生は約5万5000人(2018年8月時点)。その多くが社会人だ。現在も約2000人が在籍し、東京本校や大阪校の他、国内各地にある「デジタルハリウッドSTUDIO」などの拠点で学んでいる。
受講者は、まずソフトウェアの基本的な使い方などをオンラインの教材や動画で習得し、その後、対面授業によって実務で必要なデザイン面のスキル・応用的な思考を培う「反転学習」を行っている。
だが、社会人受講者が多いからこその課題もあった。本業の仕事が忙しくなったり、冠婚葬祭などの事情があったりすると、授業に出席できなくなってしまうのだ。
「受講料を払っているのに、自分ではどうにもできない事情で授業を受けられないことがあります。そのことに対しては、学校側で仕組みとしてフォローすることが必要だと感じていました」と森内さんは話す。
休んだ分の授業も受けてもらうため、デジタルハリウッドでは全ての授業を録画し、欠席者が「補講」という形で視聴できるようにしてきた。補講用の動画アップロードや視聴は、デジタルハリウッド独自のシステムで実施。「開学当初から伝統的に提供してきたサポートで、受講生には喜んでもらってきました」と森内さんは振り返る。
これで「忙しくて学べない」という課題も解決しているかのように思えるが、根本的な解決はできていなかった。数多くの授業やコースがあるがゆえに、受講生がそのとき受けるべき補講動画を探しづらい状況がずっと続いていたのだ。
「せっかく動画による補講という仕組みがあるならば、できる限りベストなものを提供したい。(使いづらさという課題を)早急に解決しなければという議論が、スタッフの間でなされていました」(森内さん)
そこで出合ったのが、eラーニングシステムなどを手がけるアイスタディが国内提供している「Qumu」(クム)というサービスだ。
Qumuは、動画作成・配信を行うための法人向けプラットフォーム。企業内研修や教育機関での用途に合わせ、スライド連動機能や、複数コンテンツのマルチクリップ編集機能などを搭載。複雑な作業をすることなく、動画の作成から配信までを短時間で行えるのが特徴だ。
配信面にも強みがある。1000人以上での同時視聴できる他、IPアドレスやパスワードによるアクセス制限などが可能。さらにLMS(ラーニングマネジメントシステム)との連携機能を備え、研修や講義後の理解度チェックなども行えるようになっている。
「デジタルハリウッドでの採用の決め手になったのは、ユーザーインタフェース(UI)が美しく、非常にシンプルだったことです」と森内さんは振り返る。
研修や教育用途でも活用されているQumuは、どんな人でも簡単に動画を視聴できるように工夫されている。そのシンプルさのおかげで、デジタルハリウッドの受講生からも「休んだ分の補講が簡単に見つけられる」と反応は上々のようだ。
現在、補講にQumuを採用しているのは「本科CG/VFX専攻」「本科UI/VFX専攻」「本科CGヴィジュアルアーティスト専攻」「専科グラフィックデザイナー専攻」「専科3DCGデザイナー専攻」の5コース。「それらのコースの受講生は、たとえ休んだとしても学習の機会を失うことがなくなりました」と森内さん。講義を休んでいなくても、課題提出前などに復習のために録画を見る受講生も多いという。
「Qumuの分かりやすく動画を視聴しやすいUIは、受講生にとっても、受講生を募集する学校側にとってもメリットになっています」(森内さん)
Qumu導入によるメリットは受講生だけでなく、スタッフも享受している。
動画のアップロード作業はアシスタント講師(ティーチングアシスタント:TA)が行う。従来は独自システムを使いこなすために手間がかかっていたが、Qumuの導入後は「作業手順が分かりやすいと言ってもらえるようになった」と森内さんは話す。
デジタルハリウッドは全ての授業を録画してアップロードしているため、少しの手間でも積み重なると大変なものになる。その点「Qumuは公開作業が簡単なので、TAの作業負担が軽減できるのが大きなメリットだと感じている」という。
講師自身にとってもメリットがある。「一般的に補講といえば、先生が再度同じことを教える必要がありますが、Qumuのような動画配信サービスならば(授業の内容をそのまま補講として配信できるため)その必要がありません」(森内さん)
Qumuは、エンタープライズ向けビデオソリューション大手のQumu Corporation(本社米国)が提供するサービス。日本ではブイキューブが2016年に戦略的パートナーとして提携し、子会社のアイスタディを通じて2017年から提供している。
デジタルハリウッドでは2010年からブイキューブのWebセミナーシステム「V-CUBE セミナー」を利用し、オンラインスクールの講義配信などを行ってきた。そこで映像の滑らかさや解像度の高さ、使いやすさなどを評価していたことも、Qumuの提案を受けるきっかけになったという。
「オンラインスクールの内容は、今もV-CUBE セミナーで全国配信しています。できれば今後は、全国の拠点にQumuでの配信の仕組みを共有し、(オンラインスクール以外の講義内容も)地域を問わずに学べるようにしたいと考えています」(森内さん)
さらに山下さんは、Qumuの利用でオンライン教材をより良くできるのではないかと考えている。
「資料を用いた動画収録も簡単に行えるのも、Qumuの強みの1つだと思います。当校には、400〜500時間におよぶeラーニングの教材がありますが、それらをQumuで刷新できるのではないかと期待しています。講師が自宅で動画を作ることも、このシンプルな操作感なら実現できるかもしれません」(山下さん)
スキルを身に着けてIターンやUターンを果たしたい、自分の好きな場所で好きなように働きたい、副業をしたい、転職したいという人だけでなく、子育てをしながら収入を得るすべを身に着けたい主婦向けクラスも設けているデジタルハリウッド。大人が安心して学べる環境づくりに向け、さらなる挑戦が続いていく。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2018年10月24日