トラックを持たない“異色の物流企業”、大塚倉庫がオフィスを大規模リノベーションした理由

» 2018年10月09日 10時00分 公開
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 各地で記録的な猛暑が続いた2018年の夏は、清涼飲料水やお茶などを購入する人が激増した。日本を代表するスポーツドリンクの1つであるポカリスエットを手に取った人も多いだろう。そんなポカリスエットの製造元である大塚製薬をはじめ、大塚グループの物流を担っているのが大塚倉庫だ。

 「物流企業なのにトラックを持たない」「各拠点をテレビ会議システムで常時接続」など、異色の取り組みで成長を遂げている大塚倉庫。同社は今年、東京・晴海にあるオフィスを大規模リノベーションした。これまでの物流企業のイメージを覆すようなオープン空間を作った狙いは何なのか。同社の石井孝司さん(東京本部 経営企画室室長)と下林千恵美さん(東京本部 総務人事部)に聞いた。

photo 大塚倉庫の東京本部オフィス

「物流業界の慣習」に一石を投じるIT活用

 大塚倉庫が誕生したのは1961年のこと。大塚製薬工場の運輸部門が独立する形で生まれた同社はいま、グループ各社の工場からの物流に加えてグループ外企業の物流も幅広く担い、売上高も2010年度から年率5.8%で成長を遂げている。

 その特徴は「徹底的な効率化」だ。創業時から一貫して自前のトラックを持たず、配送パートナーであるドライバーと契約して荷物を運んでいる同社は、「ドライバー不足」「労働時間の増大」といった物流業界の課題を解決すべく、数多くのユニークな取り組みを行っている。「共同運送」と呼ばれる取り組みもその1つだ。

 物流の仕事は積み荷によって大きく左右される。例えば冬に出荷量が増える製品、夏に出荷量が増える製品などがある中で、顧客1社ごとに合わせた個別配送だと大きなロスが出てしまい、結果的に配送回数も増大する。そこで同社は、荷物の重量や、季節によって出荷量の異なる各社の製品を組み合わせて1台のトラックで運ぶことで、1回当たりの配送ロスを軽減しているのだ。

 ドライバーの業務効率化の仕組みもある。そこで生かされているのがITだ。

photo 大塚倉庫の石井孝司さん(東京本部 経営企画室室長)

 物流業界では、ほとんどの物流センターで積荷の引き受けが先着順であり「前日の夜中から現場で待機しているドライバーが多い」(石井さん)という。そこで同社は、荷物の流れをデータ化して一元管理。ドライバーが荷物の所在地を把握し、荷受け時刻をWeb上で予約できるシステムを開発した。

 これにより、ドライバーの待ち時間を55%も減らすことに成功したという。これはドライバーの業務効率化だけでなく、メーカーの「荷受け先が見つからない」という課題解決にもつながっている。

 「ドライバーが好きな時間に荷物を受け取れるようにするのは、物流業界では“非常識”だと捉えられました。先着順が当たり前の世界でしたから。しかし、それではいつまでたっても人手不足などの悩みは解消しません。当社は『他社がやらないことを率先してやろう』という考えのもと、お客さまの手元に確実に必要な物が届く仕組みづくりに取り組んでいます」(石井さん)

 自社倉庫内の作業もITによって効率化している。同社が「ID倉庫」と呼ぶシステムでは、それまで紙で行っていたピッキング(検品)作業にiPadを導入。出荷したい製品の所在地がすぐに分かり、ピッキング履歴データも即座に共有されるため、若手スタッフでも短期間のレクチャーで一人前の動きができるようになったという。 

 「新しい仕組みを取り入れることに対し、ベテランの方々からは最初は不安や不満の声もありました」と下林さんは明かす。それでもIT活用のメリットを繰り返し伝え、実際に試して効果を実感してもらうことで、徐々に現場に浸透していったという。これらの先進的な取り組みが評価され、同社は日本ロジスティクスシステム協会の「ロジスティクス大賞」を2015年、2016年と2年連続で受賞している。

オフィスをフルオープンに大改造した理由

 効率的な物流の仕組みにより、同社は大塚グループ外の外部企業からの受注も増え、今では外販比率が約60%に及んでいる。今後も外部企業との連携を強化する中、戦略的に取り組んだのが「東京本部オフィスのリノベーション」だ。

 「オフィスはさまざまな人が訪れる場所なので、当社の良さを伝えるシンボルのようなものでなければならないと考えました」と石井さんは説明する。

 同社はこれまでも、独自開発のテレビ会議システムで各拠点を常時接続してお互いの顔が見えるようにしたり、スタッフが場所を問わずに働けるテレワーク制度を用意するなど、先進的な働き方を取り入れてきた。ただし、リノベーション前の東京本部オフィスは倉庫の建物を応用したものだったため、窓が少なく暗い印象だったという。

 そこで今回、リノベーションによって壁を大きくぶち抜き、日差しが満ちる明るいオフィスに。部署ごとのパーティションも取り払い、個人情報を取り扱う部署以外はフラットでオープンな空間とした。一方、オフィスの裏側には倉庫の仕事を体験できる「ミニ倉庫」を設置。営業系・事務系などの社員でも、ここでの経験をもとにいざというときは倉庫に応援に行けるようになっている。

 「このオープンなオフィス空間にお客さまにどんどん来てもらい、テレビ会議システムを使って各倉庫の先進的な物流の仕組みを見学していただいたり、ミニ倉庫で検品の様子を見ていただいたりすることで、当社の取り組みを知ってもらうきっかけになれば」と石井さんは話す。

photo テレビ会議システムを用いた倉庫見学の様子

 とはいえ、ここは技術系、営業系、事務系など多くのスタッフが集うオフィス。企業活動の中ではオープンにできないこともある。1対1、もしくは複数人だけのクローズドなコミュニケーションを取るために、別の場所も用意しておきたい――。そんなニーズを抱えた石井さんたちが出合ったのが、ビデオ会議システムを手がけるブイキューブが提供している「テレキューブ」(TELECUBE)だった。

オープンなオフィスならではの課題を解決 「ちょうどよい」空間に

 テレキューブは、電話ボックスのような完全防音型の個室空間だ。内部にテーブルや椅子、電源、USB給電口、Windows端末とモニターが設置されている1人用のほか、同時に2人が入室できる2人用モデルの2タイプが用意されている(2人用のWindows端末とモニターはオプション)。

photo 東京本部オフィス内に設置されているテレキューブ。左が1人用、右が2人用

 石井さんは、製品を見てすぐに「これだ」と直感し、テレキューブの導入を前提としてオフィスのリノベーションを実施した。そのためか、周囲のオープンな空間になじむ個室として、リノベーション後のオフィスにごく自然に設置されている。

 その用途はさまざまだ。社外の人とのWeb会議や電話に用いる人もいれば、集中スペースとして使う人、上司と部下の面談に使っている人もいる。その全てに共通しているのが、防音スペースだからこそのメリットだ。

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 「壁を取り払ったオープンなオフィスだからこそ、音漏れしないクローズドな空間であるテレキューブの重要性は大きいです。外部に漏らしてはいけない情報のやりとりをするときや、個別面談などにちょうどよく、とても助かっています」と石井さんは話す。

photo 大塚倉庫の下林千恵美さん(東京本部 総務人事部)

 石井さんによると、2018年のオフィスリノベーションに合わせてテレキューブを設置してから「ほぼ利用で埋まっている状態」だ。同オフィスにいる約100人のスタッフのうち約70人くらいは使ったことがあるといい、利用者からの声も「非常に好評」だという。

 「私も集中したいとき、よくテレキューブに入って仕事に取り組みます。どうしても使いたい用事があるときは、テレキューブの出入口に『何時から使います』と付箋を貼っておいたり。それくらい、今の仕事に役立つものになっています」と下林さんは言う。

 同社では現在、テレキューブ用の予約システムなどは特に用意していない。下林さんが話すように、オープンなオフィスだからこその自然な声掛けやコミュニケーションによって、テレキューブの利用もスムーズに行われているという。

物とデータ、そして人と人をつなげて「新しい物流」を

 リノベーション後のオフィスでは、よく見えるところにキッチンやカフェカウンターがあるほか、イベント会場としても使えるステージも設置されている。社外の人を講師にここに招き、勉強会やセミナーを開くことも多いという。

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 社内のメンバーだけでなく、社外の人にも大きく開かれた新しいオフィス空間。大塚倉庫はこのオフィスを、自社の物流システムを物流業界全体に広げていくための拠点にしていく考えだ。

 「自社で開発した仕組みのおかげで、作業効率や社員のモチベーションが上がる効果は確かにあります。ただ、それだけを重視しているわけではありません。われわれの取り組みの根幹にあるのは、ITを使って物流業界の課題を解決すること。このオフィスを通じ、当社が取り組んでいることを多くの人に知ってもらえればと思っています」(石井さん)

 物とデータ、そしてそれらを必要とする人をつなげることで、物流業務の効率化や顧客提供価値の向上に取り組んできた大塚倉庫。今後はリノベーションしたオフィスを通じて「人と人とのつながり」を深めることで、より大きな価値を生み出していくことだろう。

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提供:株式会社ブイキューブ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2018年11月8日

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