“ゲーセン衰退”で注目される「オンラインクレーンゲーム」 映像配信の課題に先駆者企業はどう立ち向かった?

» 2020年02月19日 10時00分 公開
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 フィギュアやぬいぐるみ、キャラクターグッズなどの景品をアームでつかんで“獲得”できる「クレーンゲーム」は、世代を問わず人気のアーケードゲームだ。多くのゲームセンターが店の入り口付近にコーナーを設け、多くの客で賑わっている光景はおなじみだ。

 そんなクレーンゲームをスマートフォンやPCのWebブラウザ上で遊べるようにしたのが「オンラインクレーンゲーム」と呼ばれるサービスだ。プレイヤーは画面上に表示されたクレーンゲームの実機映像を見ながら、アームを遠隔操作してクレーンゲームを楽しめる。獲得した景品は後日配送で手元に届く仕組みだ。

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 現在までに国内でオンラインクレーンゲーム事業を展開するのは25社までに広がった。まだ物珍しさもあるが、大手が続々と参入する背景には業界生き残りを賭けた期待も大きいはずだ。

 一般社団法人日本クレーンゲーム協会によれば、いわゆる風営法による営業許可を得たゲームセンターの店舗数は1987年に約2万5000店ほど存在していたのに対し、2014年には約5400店舗と、およそ1/5まで縮小している。特に都市圏への人口集中によって、過疎化が進む地方はクレーンゲームを遊べる場所自体が少なくなっている。客との接点としてオンラインに期待することは自然な流れだ。

 そんな中、片手で数えられるほどしか参入企業がなかった2015年ごろの黎明期に事業を起こしていた大阪の企業、DC7は先駆者ならではの課題を抱えていた。

ユーザーの目となる「カメラ」との戦い

 クレーンゲームは景品獲得のために繊細なボタン操作が求められる。プレイヤーは透明な箱の中にあるアームの位置を左右から何度も確認し、狙った景品に近づけていく。この繊細な操作感を遠隔で実現するには、リアルタイムかつ低遅延な映像配信システムが必要になる。

photo DC7の河合剛志さん

 「当時、プレイヤーには『PCで遊ぶなら有線接続で、スマホであればWi-Fi環境下でお楽しみください』とお伝えしていました。どこでもクレーンゲームが遊べるというには条件が厳しかった」と、DC7の河合剛志さんは赤裸々に話す。

 DC7が始めたオンラインクレーンゲーム「どこでもキャッチャー」のサービス開始当時は、通信環境が潤沢ではなかった。遅延することなく、それなりに見られる映像というギリギリのバランスを保つため、解像度は320×240ピクセル、フレームレートは12fpsまで抑えていた。

 しかし、この数年でオンラインクレーンゲームを取り巻く環境は変わってきた。通信環境が改善されただけではない。景品メーカー、リアル店舗を持つゲームセンター事業者、アーケードゲームも手掛ける大手ゲームメーカーなどが続々とオンラインクレーンゲーム事業に参入してきたのだ。

 「ゲームは見た目が大切です。新規参入業者は新しいシステムを使うので見栄えのいいゲーム画面を提供できる。後発と比べて、私たちの映像クオリティーが見劣りしつつありました」(河合さん)

 その上、カメラの機材トラブルが慢性化するという致命的な課題も浮上していた。DC7ではクレーンゲームの正面や横、上といったアングルからの映像をプレイヤーに届けるため、200台ほどあるクレーンゲームの筐体それぞれに8〜10台のカメラを設置している。

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 カメラの制御に使っているのはSDカードにOSを入れて動かすような、シングルボードの超小型PCだ。常時映像を配信する高負荷な環境によって、毎日どこかで不具合が起きる状況が続いていた。

photo DC7の大木敏夫さん

 DC7で現場責任者を務める大木敏夫さんは「担当者が壊れた超小型PCを1〜2時間かけて復旧させる間、他の作業が手につかない状況が続いていました」と苦労を打ち明ける。

 カメラの映像が止まるということは、そのクレーンゲームが稼働できないことを意味する。Webサイトを訪れたユーザーの欲しいと思う景品がそのマシンに入っていたとしたら、大きな機会損失となる。

 「ユーザーはゲームを楽しんでもらうことはもちろんですが、現場スタッフに負荷がかかる状態をなんとかしたいと考えていました」と河合さん。そこで「映像クオリティーを含めたシステムアップデートが簡単にできること」「メンテナンスが容易であること」を条件に、遅延の少ないリアルタイム映像配信が行えるシステムを探すことになった。

遅延がないのは当たり前、運営コストも大幅ダウン

 「現場スタッフの負荷を減らす方向に、システムをリプレースできないか」――社内で検討を進めていたところ、テレビ会議システムなどを手掛けるブイキューブから、アプリ(iOS/Android)やWebサイトにビデオ通話やライブ配信の機能を組み込める「V-CUBE Video SDK」を勧められたという。

 いくつかあるSDKの中からブイキューブが提案したのは「agora.io」だった。agora.ioは、5億以上のアプリに組み込まれ、100カ国以上で利用された実績があり、ボイスチャット、ライブ配信アプリ、ライブコマース、オンライン英会話、Web面接、遠隔医療、コンタクトセンターなどの幅広い用途に活用されている。

 DC7の河合さんは、他の大手映像配信システムや外資系クラウドサービスのライブ動画ストリーミング機能を使った開発なども考えたが、いずれも遅延より画質を重視したシステムであったことや、開発コストの問題があった。これらの理由から「agora.io一択となった」と当時を振り返る。

 「サービス開始当初のシステムは自社製でしたが、映像クオリティー向上や動画フォーマットの変更といったアップデート、メンテナンスにはコストがかかります。『餅は餅屋』。プロにお任せしよう、良いソリューションがあるなら、それに乗っかろうということになりました」(河合さん)

 同社は2020年2月、どこでもキャッチャーで使われている映像システム全てにagora.ioの導入を完了。稼働が始まった直後から設定変更の容易さや、画質やフレームレートを上げたにもかかわらず遅延が少ないことに驚いたという。

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 「それまでは毎日どこかのカメラが不調になっていたが、現在は2週間に1度という頻度に激減しました」と、大木さんもagora.ioへのリプレースに乗り気だ。不具合発生時のリセットにかかる手間も大幅に削減され、経験が少ないスタッフでも復旧作業が行えるようになった。

 「正直なところ、画質をアップするだけであれば、私たちのシステムでも対応できるでしょう。しかし、日々現場での復旧作業にかかる時間的コストと現場スタッフの負担の軽減、これからの開発コストなどを考えると、agora.ioに分があるのではないかという結論に至っています」(河合さん)

次の5年と、その先を見据えて

 前職でもオンラインゲームに携わってきたという河合さんは、「オンラインサービスは5年周期で何かが起きると考えている」と話す。

 「スタートのタイミングで盛り上がり、徐々にユーザーのアクティブ率が下がっていき、5年目に大型アップデートをかけてユーザーを取り戻す。続いているサービスはそういう施策を打っている。私たちもagora.ioを使うことで、次の5年を迎えられるようなサービスを提供していきたいです」(河合さん)

 システムの基盤に余裕が生まれたことで、河合さんらは新たな施策も考えられるようにもなった。現在はオンラインクレーンゲームで遊ぶユーザー同士でコミュニケーションをとれるようにする仕組みを検討中という。目指すのは実際のゲームセンターで自然と発生するようなにぎやかさだ。

 「TwitterなどのSNSでオンラインクレーンゲーム愛好者たちのコミュニティーが生まれています。ゲーム内でユーザー同士のコミュニケーションが取れるようになればうれしい」(大木さん)

 予算の都合もあり、agora.ioを導入するタイミングでは既存のカメラ機材を使うという。しかし、今後カメラ機材のアップデートを行ったとしてもシステム改修は不要だ。配信設定を後から細かく変更できるため、今後通信環境が発達して高解像度化が容易になっても対応できると河合さんは期待を寄せる。

 「現状のサービスでは、さすがに4K画質までは不要と考えていますが、競合他社が映像品質を上げたとしても追従できるでしょう。システムが運営しやすいからスタッフに優しい、ユーザーにもうれしい。次の5年……いや、agora.ioが無くならない限り、永遠に使い続けられると期待しています」(河合さん)

DC7が提供するオンラインクレーンゲーム「どこでもキャッチャー」

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提供:株式会社ブイキューブ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2020年3月18日

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