行きつけの店でいつも流れているあの曲、街中でふと耳にするメロディ――人々を取り巻くさまざまな音楽を配信している会社と言えば、USEN-NEXT GROUPのUSENだ。前身である大阪有線放送社から50年以上にわたり店舗向け音楽配信サービスを提供してきた同社は今、「音楽配信のUSEN」から、あらゆるサービスを提供して「店舗の未来」を創造するサービス企業へと大きく舵を切っている。目指すのは、店舗総合サービスのNo.1プレイヤーだ。
例えば、同社が注力しているタブレットPOSレジ「Uレジ」は、飲食店や美容院など、店舗の業態に合わせて、それぞれに最適なサービスを提供している。さらに、開業資金支援や電気、総合保険など、店舗が必要とするサービスを幅広く展開。取扱商品は毎月のように増えているという。
だが、サービスが増えれば増えるほど、それらを販売する営業社員や、取り付け工事を行うエンジニアは新しい知識や技術を身につけなければならない。従来は全国各地の支店で支店長や先輩社員が指導を行っていたが、「『あのサービスはあの人しか知らない』といった商品知識の属人化が見られるようになっていました」と同社の宮澤雄太さん(事業開発統括部 営業企画部)は話す。
どうすれば全ての社員に必要な知識を習得させることができるのか。そこで同社が目を付けたのが、「動画を活用して教育する」という方法だった。
「(新しい社員も)誰に教えてもらうかによって、得手不得手な分野が生まれてしまう。どこにいても本社で研修したかのように、満遍なく全ての商品について学べる環境が必要だと感じていました」(宮澤さん)。こうした課題を受け、同社の営業企画部に所属する大田勇樹さんは「2、3年前から動画を活用しようと考えていた」という。
動画の需要は、エンジニアにもあった。新サービスを一定の品質を保ちつつ全国展開するにはエンジニアの技術習得が不可欠だが、マニュアル通りに作業をしたとしても、少しの工程の違いが品質の差につながることもある。また、分厚いマニュアルは現場で閲覧しづらく、「動画で説明した方がいいのではないかと考えていた」と伊藤雅利さん(技術統括部 施工管理部)は振り返る。
そこで同社は社員教育を目的に、オンライン動画配信サービスの選定をスタート。だが、そのプロセスは一筋縄ではいかなかった。当初は動画視聴と視聴後の習熟度チェックテストがセットになったeラーニングシステムなども検討していたが、採用には至らなかった。「営業社員は訪問先と訪問先の間の短い時間で視聴するため、テストがついているのは抵抗があるのではないかと考えた」(大田さん)ためだ。
他のサービスも「動画は簡単に作れるがアップロードは自社でやらなくてはならない」あるいは「アップロードは簡単に行えるが動画を作るのには手間がかかる」といったものが多く、制作とアップロードの両方を簡単に行えるサービスはなかなか見つからなかった。
どのような動画配信サービスなら自社のニーズを満たせるのか。模索を続けていたUSENが出合ったのが、アイスタディが提供している「Qumu」(クム)という動画共有サービスだ。
Qumuは、動画の作成や配信を行うための法人向けプラットフォームだ。スライド連動機能や複数のコンテンツを一括で編集できる「マルチクリップ編集機能」などを搭載しており、動画の作成と配信の両方を短時間で簡単に行えるのが特徴だ。そうした点がUSENのニーズにマッチし、検討開始から1カ月ほどで導入が決まったという。
それから実際に社員に利用してもらうには、4カ月の時間をかけた。「動画配信を開始したのに、サイトを見たら2本しか動画がアップされていないような状態では、利用者がいなくなってしまうのではないかと思ったのです。すぐにはリリースせず、コンテンツを20個ほど制作するところから始めました」と宮澤さんは振り返る。そして、社員向け動画共有サイト「U-PEDIA」としてQumuの運用が始まった。
出先や現場でも確認しやすいよう、動画は1本あたり3〜5分と短時間にまとめた。また、電波環境に左右されずに視聴できるよう、会社支給のスマートフォンに動画をダウンロードするよう社員に伝えたという。
エンジニア向けの動画では、施行方法のほか「工事では何に注意すべきなのか」「どうしてこれをやって欲しいのか」といった意識共有も行っている。「紙のマニュアルでは全国のエンジニアに設置や点検の知識が浸透したのか分かりませんでしたが、動画なら視聴履歴も取れます。着工前に工事の品質を確保できるようになったのは大きいです」(伊藤さん)
動画の視聴は「トップダウンではやらされている感が出てしまい、見ても覚えられない」(伊藤さん)からと強制はしていない。ただ、現場からは「実際の施行作業の様子を見たい」といった追加要望も出てきているそうだ。
中途社員向けの研修でもQumuは活躍している。USENでは全国で毎年(40〜50人)ほどの中途社員が入社するが、時期や勤務地が異なるため、採用のたびに研修を行うのは難しい。しかし一定人数を集めて研修をしようとすると、商品の知識量などにどうしても差が出てしまう。従来は基準を設定し、知識が足りない人には事前に資料を見て勉強するよう伝えていたが、研修講師側で各社員の学習状況を把握できず、研修当日に実は勉強してきていない人がいると分かったこともあったという。
研修を担当している神野友香さん(事業開発統括部 営業企画部)は「資料を動画にしたら研修前に見てくれるようになりました」とうれしそうに話す。各支店長の協力もあり、「動画を見ておくよう声をかけるだけでなく、視聴するための時間も作ってくれている。最近は新入社員も、動画を使って学んでいるようです」(神野さん)という。
最近では、30分ほどある営業トークのロールプレイング動画もよく見られており、より多くの商材を学べる動画を増やしてほしい――という要望も受けているという。
20本からスタートした動画は月3本ほどのペースで更新され、2018年9月現在、80本以上に上る。最近では、一部の支店や地域で独自に行っていた取り組みを動画で共有したり、現場から「これもU-PEDIAで見られるようにしたい」と動画が送られてきたりすることも増えつつある。今後は月5本の更新を目指して取り組んでいくという。
宮澤さんは「部署を紹介する動画なども検討しています。隣の部署がどんなことをしているのかを伝えることで、社内公募制度などのきっかけになればと考えています」と新たな活用法にも意欲を見せる。大田さんも「営業社員が知らない商品開発秘話なども動画で伝えたい。商品の裏側を知ってもらうことで、営業先でのアイスブレイクのネタや商品への愛着につながれば」と話す。
また、伊藤さんはエンジニア向け動画の拡充を検討している。「管理者クラスの研修で行われているような高度な内容も、一般のエンジニア向けに動画で配信していきたい。何でもこなせるエンジニアを育てることも、ある分野に特化したプロフェッショナルの育成も、両方できるのが動画だと思っています」(伊藤さん)
「われわれのビジネスは、街の発展とともに成り立っています。表には出ない裏方として、街を支えていけたら」(伊藤さん)
レジがスマートなPOSレジになるように、あらゆる街で店舗は未来に向けて変わり始めた。今度はどんなサービスで「店舗の未来」を創造するのか。USENの進化はまだまだ止まらない。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2018年11月22日