「半日かかっていたやりとりが15分で」 スマートグラスを使った遠隔作業支援、水処理大手・オルガノの活用法は?

» 2019年07月10日 10時00分 公開
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 風景に情報を重ねて表示する“スマートグラス”は、スマートフォンの次に広がる情報端末として注目を集める製品の一つだ。しかし、実際に身に付けている人を街で見かける機会はほとんどない。これまで数々の企業が個人向け製品のリリースにチャレンジしてきたが、技術や社会的な課題によって、普及するまでにはもう少し時間がかかりそうだ。そんな状況のスマートグラスはいま、法人向け用途に活路を見いだしている。

 水処理の総合エンジニアリング大手・オルガノ株式会社(東京都江東区)は、コニカミノルタとブイキューブが共同開発した遠隔作業支援システムの実運用を始めた。水処理プラントの施工や検査時における本社と現場のコミュニケーション時間短縮など、現場業務の効率化をスマートグラスで実現しつつある。

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実証実験で効果を検証し、実運用へ

 オルガノが導入したのは、コニカミノルタのスマートグラス「WCc」(ウェアラブルコミュニケーター)に、ブイキューブが開発した遠隔作業支援アプリケーション「Smart Eye Sync」(スマートアイシンク)を搭載したシステムだ。音声や映像を通じて水処理プラント建設現場の監督者が本社にいる設計者の指示やアドバイスを受けることで、現場で施工に関わるさまざまな対処事項をスムーズに行えるようになる。

photophoto コニカミノルタのスマートグラス「WCc」を装着した現場監督者(クリックで拡大)

 コニカミノルタが開発したWCcは、スマートグラスの欠点だった「大きい」「重い」「視界を遮る」という問題を改善。装着時の負担が少なく、安全に作業を行える。すでにインフラ、建設、製造などの業界で現場の業務改革を推進するツールとして導入が進んでいる。

 WCc専用アプリケーションのSmart Eye Syncは、ブイキューブがPCやスマートフォン向けに提供してきたWeb会議システム「V-CUBE コラボレーション」(旧xSync Prime Collaboration)をWCc向けに改良したもの。高品質な映像と音声を送受信する通信性能はそのままに、操作性を向上している。

 オルガノは2018年、WCcとSmart Eye Syncを活用した遠隔作業支援の実証実験を行った。国内外の現場で作業員がスマートグラスを装着し、実際の業務に役立てられるかを検証するためだ。同社は以前からこのような最新のICT機器を使って業務の効率化を図れないかを試行錯誤していた。

photo 府川潤平氏(電力事業部 電力ビジネスユニット 事業開発リーダー)

 同社で電力事業部門の業務改善を推進する府川潤平氏(電力事業部 電力ビジネスユニット 事業開発リーダー)は、「検証の結果、現場作業者目線の映像がリアルタイムに伝わること、また音声通話もストレスなくクリアであることが確認できました。遠隔支援ツールとして十分役立てられる手応えを感じ、実運用を決断しました」と話す。

 実証実験を終え、最初に遠隔作業支援システムの運用先として選んだのは、発電所で稼働する水処理プラントの建設を行う現場だった。運用を推進したのは、水処理設備の設計業務に携わる右田和也氏(技術部 電力ビジネスユニット 設計グループ)だ。

 「遠隔支援ツールの実証実験が自社で行われたことを聞き、設計部門と現場とのコミュニケーションを効率化するためにぜひ導入したいと手を上げました」(右田氏)

 これまで現場と設計部門とのコミュニケーションは電話によるやりとりが中心であったが、状況の伝達、意思の疎通に限界があり、双方の負担となっていた。

photo 東寛太郎氏(生産建設部 電力環境グループ 電力工事チーム)

 約40人の現場作業員を統括する東寛太郎氏(生産建設部 電力環境グループ 電力工事チーム)は、これまでの苦労を次のように振り返る。

 「現場で判断できない施工上の問題が発生したときは、本社の設計部門宛てにメールで写真を送り、電話を使って支援を依頼していました。こうした作業には手間も時間もかかります。現場側の言いたいことがうまく伝わらなかったり、設計部門の言っていることが分かりづらかったりもしました」(東氏)

photo 中村薫氏(技術部 電力ビジネスユニット 設計グループ)

 本社で支援者側だった中村薫氏(技術部 電力ビジネスユニット 設計グループ)も、現場との意図の食い違いに苦労していたと打ち明ける。

 「現場とのやりとりは電話だけではなかなか伝わらないため、写真と図面を照らし合わせながら確認します。ところが一方向の写真では分からないことも多く、全方向から写真を撮り直してもらうこともあります。現場と設計部門の考えをすり合わせるために何度もやりとりを繰り返すこともあります。この手間は大変なものでした」(中村氏)

運用を開始してすぐに表れた業務改善効果

 そんな課題を抱えていた現場で、遠隔作業支援システム導入の効果はすぐに表れたと右田氏は明るく話す。

photo 右田和也氏(技術部 電力ビジネスユニット 設計グループ)

 「設計者はスマートグラスを通して現場作業員が実際に見ている映像を共有できます。現場の作業員が今まさにどこを見ながら話しているのか直感的に分かるので、適切な支援が迅速に行えます」(右田氏)

 現場で利用した東氏も、直感的な使い勝手の良さに驚いたという。

 「WCcは軽量な片眼タイプで、普段着用している保護メガネの上からでも装着できます。また、シースルーであることから視界をふさがず、両手を空けることができるので作業現場で安全に使えます。書き込み機能は言葉と映像だけでは難しい詳細なやりとりをする際にとても便利でした」(東氏)

 その共有された映像に支援者が指示事項を書き込む時は、分かりやすさを重視してシンプルに書くなど、日々の運用からより便利な使い方の工夫も広がっているという。

photo 現場の映像を見ながら円滑なコミュニケーションを実現できる(写真はイメージです)

 中村氏はスマートグラスによる週次定例ミーティングを行うようになったことも業務効率化の要因として大きいと話す。

 「これまでは現場からの問い合わせが進捗状況により随時、多い時には日に複数回もありました。しかし、スマートグラスによる定例会を行うことにより、われわれ本社の設計部隊も現場の進捗状況をリアルタイムに把握できるようになったことから、急を要さないものは定例会でまとめてやりとりできるようになりました。おかげで日々の業務に集中して取り組めるようになりました」(中村氏)

 「これまでの電話やメールを使ったコミュニケーションでは半日かかるような突発的なトラブル対応なども、スマートグラスの活用によって対処判断が15分程度で完了するなど、劇的な時間削減の効果が得られています。こうした省力化によって時間の有効活用が可能になりました」(府川氏)

労働人口減少時代、業務効率化は必須課題に

 現場への導入を推進する右田氏は、「今回の運用では建設現場の工事業務にて活用しましたが、次工程である試運転業務でも遠隔支援ツールを活用していきたい」と、今後も利用シーンをもっと広げていきたいと意欲を見せる。

 府川氏は「働き方改革が各所で求められる今、現場での判断が重要な我々のようなエンジニアリング業においても、生産性効率化の取り組みが必要です。遠隔支援ツールはこのような現場とのコミュニケーションの円滑化以外にもベテランと若手の技術伝承のための活用など、今後ますます重要になってくるものと考えます」と強く語った。

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