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「アベンジャーズ型」のデータ分析組織がうまくいかない理由マスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(3/3 ページ)

» 2019年05月08日 07時00分 公開
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 巨災対はあくまでフィクションであり、ゴジラ出現という非常事態において立ち上がった組織です。現実には各組織が縦割り組織を越えて効率良く動くのは難しいでしょう。現実のデータ分析組織では、部門間の縦割りだけでなく、既存事業とのしがらみや感情的な問題も影響します。また、現場とトップの間に距離があると、意思決定に時間がかかってしまいます。

 劇中でも自衛隊のヘリがゴジラに対して発砲するまでは官僚的な承認プロセスを経ており、ゴジラの形状が変化したり、避難に遅れた住民がいたりといった予期せぬ事態には柔軟に対処できません。もっとも、トップの役割が最後の切り札となる“土下座要員”だったりするのは、現実でもフィクションでも同じなのかもしれません。

 それでも現場の強みと連携を生かして機動的に動ける仕組みは、データ分析組織として目指すべき形といえます。組織立ち上げにおける1つのモデルケースとして、各社の環境に合わせた最適化を行えば失敗する可能性は下げられるでしょう。

AI連載 理想の日本型データ分析組織のイメージ

まずは「待遇の改善」を

 こうした提言をしつつも、実際は大半の企業における認識は古いままでしょう。大手製造業がSIerに対して、安い人月単価でエンジニアを集めて、社内のデータ分析組織を立ち上げる事例も散見されます。人材や技術を部品扱いして、「サプライヤー(下請け)から買いたたけば良い」という発想から脱却できていないのです。

 また、アベンジャーズとシン・ゴジラを製作費や興行収入などの資金面で比較すると、邦画と洋画の市場規模を考慮しても桁違いです。邦画の予算が乏しい撮影の現場でスタッフがみそ汁を作って士気を上げても、ハリウッドの札束とCGと知名度にはかないません。

 日本に最適化されたデータ組織を立ちあげて結果を出しても、それは根本的な解決にはなりません。映画という娯楽でも、データ分析という技術でも、才能を持った優秀な人材はお金がある所に集まります。公務員のような「日本の未来のため」という大義名分は通用しません。

 AI人材を25万人育成したり、報酬目当てではなく日本で働きたい外国人を集めようとしたり、サイバー犯罪対策の人材に交番勤務をさせたり、都市銀行に入社した優秀な人材を数年間支店勤務させたりする前に、まずは従業員の待遇を良くするのが先でしょう。

 どんな分野であれ、「予算の差」を現場の努力や長年培った技術で覆すのは限界があります。先述したように、いまの私はまだ連休前の身です。国家予算並の予算を出演料とVFXに注ぎ込み、ド派手な映像でジャスティス&フリーダムな「U.S.A is No.1」を謳歌(おうか)する週末バーベキュー映画の究極進化系である「アベンジャーズ/エンド・ゲーム」を楽しみたいと思います。

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