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映画「シン・エヴァ」21年の興行収入1位に コロナに負けなかった1年の軌跡

» 2021年12月31日 20時46分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 2021年はアニメ映画が大いに存在感を示した。興行通信社による今年公開の映画興行収入ベスト10では1位が「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(102.8億円)、2位は「名探偵コナン 緋色の弾丸」(76.5億円)、3位は「竜とそばかすの姫」(65.4億円)だった。中でも2度の延期を経て3月に公開したシン・エヴァは何かと話題の多い作品だった。

公開時のポスター © カラー

 シン・エヴァンゲリオン劇場版は2007年に始まった「エヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの完結編。当初20年6月の公開を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大で21年1月に延期。さらに1月7日に4都県に発出された緊急事態宣言によって再度延期した。

 公開日は3月8日に決まったものの、時期が時期だけに「最速上映」(公開日の午前0時から劇場で上映するイベント)のような派手なプロモーションは行えない。代わりに動画配信サービスを活用し、公開当日の午前0時から「映画本編の冒頭12分10秒10コマ」を配信するという大胆な手法で注目を集めた。

 劇場上映が始まると今度はネット上で「ネタバレ」に対する警戒感が高まった。原作のある映画と違い、シン・エヴァは誰もが初見。このため公開日は朝から「ネタバレ」がTwitterのトレンド1位となり、ネタバレ投稿を見ないためにSNSを封印すると宣言する人達も現れた。

 こうした状況はSNSに限らなかった。その後しばらく、日本中の会社や学校で映画について語りたい人達と自分が見るまではネタバレを許さない人達の攻防が続くことになる。

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」公開日のTwitterトレンド。作品名より上に「ネタバレ」ランクイン

 4月下旬には東京都など4都府県に再び緊急事態宣言が発令され、映画館にも休業要請が出た。それでもゴールデンウィーク明けの5月6日にシン・エヴァは興行収入82億8000万円を突破。歴代エヴァンゲリオンシリーズはもとより、2016年公開の実写映画「シン・ゴジラ」(82.5億円)も超え、庵野秀明総監督作品として最高記録を更新した。

観客を10倍に増やした薄い本

 カラーはその後、興収100億円を目指してファン心理をくすぐる入場者プレゼントを相次いで投入する。しかし5月の首都圏は未だ緊急事態宣言下にあり、ミニポスター配布時には「都道府県境をまたぐ移動を伴う鑑賞は遠慮してほしい」と呼びかけなければならなかった。

入場者プレゼントになったミニポスター

 6月には後に“シン・エヴァの薄い本”などと呼ばれる「EVA-EXTRA-EXTRA」を投入。掲載されたまんがで、これまで語られていなかった「空白の14年間」が明らかになるという期待から劇場へ足を運ぶファンが急増し、連日、前週の10倍前後の観客を集めた。2度目、3度目という人も多かった。

シン・エヴァの薄い本「EVA-EXTRA-EXTRA」

 薄い本の効果で興行収入はうなぎ登り。7月12日には99.9億円に達し、作中に登場する「裏コード999」(スリーナイン)がTwitterのトレンド入りする一幕もあった。そして翌13日に念願の100億円を突破。封切りから127日目だった。

 シン・エヴァは7月21日を区切りとして一部劇場を除き上映を終了したが、その後もAmazonプライムビデオによる独占配信などで注目を集めた。Amazonによると、配信初日の再生回数はプライムビデオのコンテンツの中で歴代1位だったという。

アニメから空想特撮映画へ

 21年は新作発表も相次いだ。東映は4月、「仮面ライダー」生誕50周年企画として庵野秀明さんが脚本・監督を担当する「シン・仮面ライダー」の制作を発表。公開は23年3月になる予定だ。

「シン・仮面ライダー」© 石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会
12月27日に映画「シン・仮面ライダー」公式Twitterアカウントが投稿した画像。撮影は快調という
映画「シン・ウルトラマン」© 2021「シン・ウルトラマン」製作委員会© 円谷プロ

 一方、東宝と円谷プロダクションは12月、延期していた「シン・ウルトラマン」の公開が22年5月13日に決まったと発表した。シン・ウルトラマンは企画と脚本を庵野さん、監督を樋口真嗣さんが担当する“シン・ゴジラコンビ”の空想特撮映画。来年も“シン作”が注目を集めることになりそうだ。

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