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“ペロペロ”問題で考える、迷惑行為が止まない理由 「テラ豚丼」から15年の“歴史”NEWS Weekly Top10

» 2023年02月06日 17時45分 公開
[岡田有花ITmedia]

ITmedia NEWSにおける1週間の記事アクセス数を集計し、上位10記事を紹介する「ITmedia NEWS Weekly Top10」。今回は2023年1月28日から2月3日までの7日間について集計し、まとめた。

 先週は、回転すしチェーン「スシロー」の客が投稿した迷惑動画が、ネットだけでなくマスメディアの話題をさらった。動画が拡散すると、運営元親会社であるFOOD & LIFE COMPANIESの株価は大きく下落。同社は「刑事・民事の両面から厳正に対処する」方針を示している。

 若者が迷惑行為をネット上で自慢し、運営企業に風評被害をもたらす事案は、ここ15年ほどにわたり飽きるほど見てきた。ただ、その場は時代によって変遷してきた。

 筆者の記憶によると、最初にそうした迷惑動画が投稿された場は「ニコニコ動画」だ。2007年、吉野家の店員とみられる人物が、厨房で豚丼を山盛りした「テラ豚丼」を作る様子を撮影・投稿したもので、吉野家が謝罪に追い込まれた(吉野家、「テラ豚丼」動画騒動で謝罪/2007年12月)。この動画は、mixiやブログ、2ちゃんねるなどで話題になり、拡散していった。

画像 2007年の「テラ豚丼」はニコニコ動画に投稿されていた(当時の動画の一部より)

 やがて場はTwitterに移っていく。11年には、ホテルや飲食店のアルバイト店員が、著名人の来店を明かして批判を浴びるなどに事件が続発(“炎上”するTwitter/2011年12月)。

 「ローソン」店内でアイスクリームを販売する冷蔵ケースの中に従業員が入って寝ている写真がFacebookに投稿されて騒動になったのも13年だ(コンビニ店員がアイスの冷蔵ケース内で寝転ぶ写真、Facebookに ローソンが謝罪、FC契約解除/2013年7月)。その後、アルバイト店員や客が、店舗の冷蔵ケースに入った写真をTwitterなどに投稿して炎上し、企業が謝罪するケースが相次いだ。Twitterに迷惑行為を投稿して自慢する行為を批難する言葉「バカッター」が流行語大賞候補になったのは13年、約10年も前だ。

画像 2013年、Facebookに投稿されて問題になった画像(編集部で加工)

 その後、Instagramも炎上の場になっていく。19年初頭には、「すき家」の店員が股間に調理器具をあてがった動画と、「くら寿司」の店員が捨てた魚を拾ってまな板に戻したりする不適切な動画がそれぞれ炎上したが、これはInstagramの「ストーリーズ」に投稿された動画がTwitterなどに転載されて広がった(バカッターの次は「バカスタグラム」? 変わる“バイトテロ”の発火点/2019年2月)。

 そして先週。「スシロー」の客が迷惑動画を投稿したのはTikTokだった。

 「テラ豚丼」から15年も経ち、同じような問題が飽きるほど繰り返されているのに、また起きた。筆者はウンザリしてしまったのだが、今回の“ペロペロ高校生”が現在15〜17歳だとすると、「テラ豚丼」の07年当時は3歳以下、物心つく前だ。

 その後も炎上事件は相次いでいるが、当人がスマホを使い始めたのが高校生になってからだとすると、「スマホを持つ前は炎上事件への当事者意識が薄く、過去の炎上事件をあまり知らなかった」とか「Twitterならともかく、TikTokでも炎上する可能性があると想像できなかった」といった可能性もあるだろう。FLASHのWeb版に掲載された母親のインタビューによると本人は、「あと先を考えずに軽はずみな気持ちでやってしまった」と話しているという。

 ネットユーザーもサービスも世代交代していく。この先も同じような事件は起き続けるだろう。

 問題の“ペロペロ行為”は、絶対にやってはいけない。それをやろういう発想自体があり得ないと思う。ただ、TikTokがなければ、そして友人やフォロワーに見せて反響を得ようという承認欲求がなければ、もしかしたら、その行為自体が行われなかった可能性はあるのではないか。承認欲求を増幅させるSNSの存在そのものにも、改めて不安を覚えたニュースだった。

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