最近、周りの風景を気にしていますか? 働いているビジネス街や旅行先までの移動など、ふと目に入る風景の中に失われつつある“日本の風景”があるかもしれません。「開発されて便利になるならいい」と思う人もいるでしょう。
そこに待ったをかけるスタートアップがあります。その名も「膝栗毛」。大手不動産デベロッパーにはできないまちづくりを目指し、まち歩きアプリで土地や地域の価値を再発見してもらうチャレンジをしています。
今後のまちづくりはITを積極的に活用する様子をイメージしがちですが、膝栗毛が描く「未来のまち」は少し違うようです。果たしてどのような姿なのか、ライターの大橋博之さんが取材しました。(ITmedia NEWS編集部)
こんにちは。SFプロトタイパーの大橋博之です。この連載では、僕が取り組んでいる「SFプロトタイピング」について語っていきます。SFプロトタイピングとは、SF的な思考で未来を考え、SF作品を創作するなどして企業のビジネス等に活用するメソッドです。
今回は、膝栗毛(東京都千代田区)の代表・米田大典さんと作家の藍銅ツバメさんとの対談をお届けします。テーマは「旅の未来やまちづくりの未来」。膝栗毛と作家の旅とまちづくりの未来を語っていただきました。
SFプロトタイピングそのものではありませんが、SF的な思考で未来を考える際のヒントになれば幸いです。
大橋 膝栗毛という社名がすてきですね。由来を教えていただけますか。
米田 以前、ある人から「東海道を歩いて旅をしている」と話を聞いて「そんな旅は面白いな」と思ったことから、東海道を歩いて旅する人のサポートができればと考えたのがこの事業のスタートです。
東海道といえば「東海道中膝栗毛」だろうと。それに、膝栗毛の言葉の意味を調べてみると「膝を、栗毛の馬の代わりにして旅をすること。徒歩で旅行すること」という意味があると分かりました。膝栗毛の言葉を浸透させることがサービスを広めていくことにつながりますし、覚えてもらいやすい。「膝栗毛って何?」となるざわざわした感じも含めて面白いと思い、社名としました。
「歩き続けたくなる道を作る」ため、地域に人の流れを生み出すべく2021年に膝栗毛を設立。
知らないまちを歩いて巡る旅アプリ「膝栗毛|HIZAKURIG」を展開。ユーザーが「道を歩き、そのまちのストーリーを感じること」で「日本の発見・再発見」を繰り返し、「今までただ通り過ぎていたまちを好きになっていく」ことを提供する。
三菱地所の社内新事業提案制度から生まれた事業であり、三菱地所の本業「ハードを起点としたまちづくり」ではなかなか貢献できない地域で「ハードの開発が伴わないまちづくり」にチャレンジしている。
大橋 スマートフォンアプリ「膝栗毛」をリリースされていますね。不動産デベロッパー大手である三菱地所から出資を受け開発を進められたのだとか。
米田 スマホアプリの膝栗毛は歩き旅をする際、一緒に行った人との会話や現地の人との会話もしくは風景という体験を、東海道をとっかかりにしてサポートするツールです。
歩き旅をする前に何が必要かというと、「どこに行こう」という目的地の選択肢を得ることだと思います。その選択肢を得るため、アプリ内で「膝栗毛マガジン」というオリジナルの記事を提供し、まち情報を発信しています。
大橋 まちの情報は有り余っているのではないですか?
米田 そうです。情報がないのではなくてあり過ぎているのが現状です。例えば、膝栗毛のオフィスがある東京・有楽町で何か食べようと「有楽町 グルメ」と検索するととんでもない数の情報が出てきます。すると価値の高い情報にたどり着くまですごく時間がかかる。そこを膝栗毛がキュレーションして伝えていくことが大事だと考えています。
また、膝栗毛のアプリを起動して歩き旅に出るとエリア情報を「音声ガイド」で聞くことができます。目的地までのルートにあるポイントで写真を撮ってチェックインしながら楽しんで巡ってもらうとゴール地点に近づける。ゴール地点には「膝栗毛茶屋」という膝栗毛が連携する実店舗があり、そこでユーザー同士や地域の人たちと交流して情報を得ることができます。
さらに、歩き旅イベントに参加することも可能です。そうした行動を取ることで専用ポイント「文」(もん)がたまる仕組みになっています。例えば500文がたまったら茶屋でビールやコーヒー、膝栗毛グッズなどいろいろなものと交換できる。そんなサービスを提供しています。
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