ISO感度を実用域に高め、最大課題を重点克服――コダック DCS Pro SLR/n(2/3 ページ)

» 2004年03月18日 19時47分 公開
[島津篤志(電塾会友),ITmedia]

高感度CMOSセンサーを搭載してノイズを低減

 従来機の14nはノイズが出やすく、ISO80よりも高い感度設定では粒状感が顕著になる傾向が強かった。同じ理由で長時間露光の撮影はできず、2秒以上のシャッター速度は選べなかった。このため14nは「ノイズが出やすいカメラ」というレッテルが貼られることが多く、また、高いISO感度や長時間露光を選べないことがプロの撮影シーンの領域を狭めてもいた。

 これらに対する相当量のカスタマーフィードバックがあったのだろう。ノイズのトラブルは撮像素子センサーの素性によるところが大きいため、新開発の高感度CMOSセンサーの搭載へとつながっていったようだ。

 ところで、SLR/nの液晶文字は雄弁だ。撮影者に対してさまざまなアラートを発するのである。たとえば次のようなメッセージがある。

「カメラのキャリブレーション中です」

 これはアラートというよりも、起動時の決まり文句だ。電源をONにしても、すぐシャッターを切ることはできない。スポーツ・報道写真には向かない14nの伝統を受け継いでいる。

 だが、先にも述べたように、SLR/nはポートレート用モデルである。スタジオ撮影など、じっくりとセッティングして撮影するプロフェッショナルポートレート市場をターゲットとしたSLR/nを、起動の遅さで批判するのは筋違いであろう。スタジオ撮影ではACアダプタ経由で電力を供給できるため、バッテリー持続時間の短さを云々するのも同様だ。

 SLR/nは512Mバイトのバッファをデフォルト搭載している(14nではオプション扱い)。フルサイズのDCR(Digital Camera Raw:コダック独自のRAWファイル形式)とJPEGの同時記録でも、レリーズの手を休まされることはない。

「推奨露光時間をオーバーしました」

 14nで多発したアラートがこれだ。14nでは2秒を超えるシャッター速度は長時間露光であり、レリーズはするが、白飛びのNG画像が焼かれてしまうカメラだった。しかし後継機のSLR/nでは、この欠点が克服されている。次ページの作例を見ていただければ分かると思うが、夜景を撮ることが可能となったのである(ただし、長時間露光モードに設定しておかないとこのアラートが表示される)。

シンプルで使いやすいRAW現像ソフトが付属

 DCRで撮影した写真は、付属の「DCS Photo Desk 3.3」を使って現像する。DCS Photo Deskは国内メーカーよりも長い歴史を積んでいるコダックのRAW現像ソフトで、試用時は英語版だった(出荷期日を優先するため、当初は英語版をバンドルし、日本語版は後追いで供給するようだ)。

 ファイルビューの画像表示が高速で、使用カット選びが快適に行えるDCS Photo Deskは、生産性を高めてくれる、優れた“ライトテーブル”だ。ホワイトバランスや明度、シャープネスなどの調整方法もシンプルで使いやすい。作業時間や労力を軽減してくれるソフトはプロにとって非常に重要で、それが可能な優れたRAW現像ソフトが同梱していることは大いに評価してよいだろう。

 DCS Photo Deskは、現像作業に使用するPCに用意されたカラースペースのすべてに対応する。「Photoshop」との連携も考慮されており、現像処理をした後に自動的にPhotoshopに書き出すことができる点は非常に便利だ。

 もちろん、DCS Photo Deskから直接プリントすることもできる。スタジオにカラープリンタを持ち込んでおけば、撮影したポラ代わりの写真をプリントして、クライアントにただちに確認してもらうこともできるわけである。

 蛇足かもしれないが、SLR/nのオートフォーカス精度は信頼できる。ファインダーの見にくさが一部で指摘されているが、それならオートフォーカスに頼り切ってしまうのもオツかもしれない。

 結論。“フィルム屋”の思い入れが色濃くこもった、愛すべきカメラだと思う。「写真を撮っているんだ」と感じさせてくれる、年季の入ったイタリア車のようなカメラだ。

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