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» 2004年06月05日 01時24分 公開

NVIDIAがデモスイートでアピールする「今年の勝算」──ノートGPU&チップセット編今週はCOMPUTEX TAIPEI 2004で右往左往した

NVIDIAがCOMPUTEX TAIPEI 2004でアピールしたかったのは、デスクトップGPUよりも「MXM」の普及ではないだろうか。AXIOM出現で内心穏やかでない「MXM」スタッフに「今の心境はいかがですか」ときいてみた。

[長浜和也,ITmedia]

「MXMはオープン仕様であることが最大のメリット」

 NVIDIAのノートPC向け製品で今回注目されているのが、PCI Expressに対応したモジュール規格「MXM」(Mobile PCI Express Module)だ。デモスイート会場でも、MXMの実物をパフォーマンスPCとコンパクトサイズPCの基板に実装展示。コンパクトサイズに差したMXMでは動態デモも行われていた。

 動作しているMXMにノースブリッジに使われるようなクーラーユニットが載っているのは気になるところ。MXMは熱仕様によって3段階の規定があるが、ノートPCベンダーがどの段階を選択するかで、ヒートシンクで間に合ったり、ヒートパイプやこのようなクーラーユニットをで放熱する必要も出てくると、ノート向けグラフィックス製品マネージャーのビル・ヘンリー氏は語る。

 COMPUTEX TAIPEI 2004の開催直前に、台湾のノートPCベンダー十数社と共同で大々的に発表したMXMに対抗すべく、ATI Technologiesが先日行ったローンチイベントで同じようなノートPC向けPCI Express対応モジュールの規格「AXIOM」(Advanced eXpress I/O Module)を発表している。COMPUTEX TAIPEI 2004に合わせて行ったイベントでの発表とあって、MXMがかすんでしまうほどのインパクトを世界中に与えている。

 台湾ベンダーとの協調路線をアピールすることで独自規格のMXMを普及させようとしていたNVIDIAにとって、ATIのAXIOMはかなり気になる(不快な?)存在ではないだろうか。

「AXIOMの規格は、ATIとわずかなノートPCベンダーのミーティングによって決定したと聞いている。AXIOMを使う場合、搭載できるGPUを供給できるのも一つだけだ。MXMは、多くのノートPCと協議して策定されたオープンな規格。どのノートPCベンダーも利用できるし、MXMにはATIのGPUも搭載できる。これがMXMの最大のメリットだ」(ヘンリー氏)

説明を聞いた記者の「AXIOMとMXMの違いはインテルとAMDの違いに似ていますね」という感想に「ふっふっふ」と笑顔で返してきたビル・ヘンリー氏

MXMを実装したパフォーマンスノートPCの基板(上)と動態デモを行っていた携帯重視PCサイズの基板

 ノートPCにおいて、MXM以上にNVIDIAがアピールしたいのは、COMPUTEX TAIPEI 2004でもよく耳にする「デジタルホーム」向けに開発した機能だ。

 その一つは、最近増えてきたコンテンツプレーヤーとしての機能を重視したノートPCに求められる、起動と同時に使える「nStant Media」機能だ。すでに東芝などの国産ノートPCにも搭載されているこの機能は、ノートPCの電源を入れると、Windowsを起動することなく、数秒で再生用のソフトが立ち上がる仕組み。

 この機能は再生ソフトウェアとともにNVIDIAからノートPCベンダーに供給されるもの。再生ソフトはファームウェアではなくHDDに保存されるが、Windowsを使わずに起動させるため、独自のOS機能もNVIDIAから提供されるという。

 nStant Mediaでは、ムービーや音楽の再生を行うだけでなく、HDDに保存されているメディアファイルをスキャンしてプレイリストを作成するなど、標準的なメディアプレーヤーソフト相当の機能が用意されている。さらに、Windowsの省電力機能をつかえないため、独自のパワーマネジメント機能をnStant Mediaの中に組み込んでおり、従来の非Windowsプレーヤーソフト(nStantMediaのようにWindowsを立ち上げずに即時に起動するもの)とくらべて、バッテリー持続時間が長くなる効果がある。

電源投入とともに立ち上がったnStantMediaのメニュー選択画面

 また、液晶ディスプレイの輝度をGPUによってコントロールする「SmartDimmer」のデモも行われていた。「ディスプレイに何が表示されているか一番よく知っているのはGPUだ。そのGPUに表示されている状況にあわせて輝度に調整してもらえばバッテリー時間を長くすることが可能になる」(ヘンリー氏)というもので、輝度を制御する規格「PWM」の信号をGPUから出力する仕組みになっている。PWMに準拠している液晶ディスプレイならGPUの制御信号出力ピンに接続することで利用可能になる

液晶ディスプレイの輝度を調整してバッテリー時間を持たせるのはノートPCユーザーにとってポピュラーな技。SmartDimmerはGPUが検知した表示内容の変化に合わせてGPU自身が輝度を調整してくれる
GPUに組み込まれたパワーマネジメント機能「PowerMizer」のデモでは、GPU以外のスペックをまったく同じにしたノートPCを使って、ATIの「PowerPlay」と消費電力の比較をグラフで表示。突発するピーク時とアイドリング時でATI製GPUの消費電力を下回っている

 「これからのノートPC向けGPUで重要なのは、3Dパフォーマンス、HD Video再生、コンパチビリティ、ローパワー」と考えるヘンリー氏に、GeForce 6シリーズのノートPC搭載の可能性について質問したところ、「それは可能だ」と答えてくれた。「ただし、いまのままでは無理。専用のチップをデザインしてダイサイズを小さくする必要があるだろう」(ヘンリー氏)

独自のセキュリティ機能を拡張したCK8-04

 Socket-939対応Athlon 64 FX/Athlon 64の発表で、盛り上がりを見せるAMD対応マザーだが、NVIDIAのnForce 3 Ultraも正式発表前のCOMPUTEX TAIPEI 2004初日から数多くのマザーボードベンダーで展示され注目を集めている。しかし、それ以上に注目されているのが、未発表のPCI Express対応チップセット「CK8-04」だ。

 PCI Expressに対応する以外、CK8-04の機能はnForce 3 Ultraと同じとされているが、MCPビジネスのPRマネージャーであるブライアン・デリゾ氏は「nForce3 Ultraで実装させたハードウェアによるセキュリティ機能を拡張させた」とアピール。この機能は、AMDがAMD64対応CPUに実装させ、Windows XP SP2の機能とともに有効になる「EVP」(Enhanced Virus Protection)とは別個に動作するとデリゾ氏は説明する。

IwillのD8KEに実装されていたCK8-04 Pro。CK8-04をマルチプロセッサ対応にしたもので、おもにサーバ向けとして想定されている。D8KEもOpteronのデュアル動作に対応したサーバ向けマザーボードだ

 従来のnForce2は、統合型チップセットとしては強力な3D性能が広く支持されてきた。とくに「安くてコンパクトなPCがほしいけどFINAL FANTASYもしたい」という最近のホームユースユーザーにとって、Athlon XP&nForce2の組み合わせは唯一の選択肢でもあった。

 Intel対応のプラットフォームでも、RADEON 9100 IGPやIntel GMA 900を統合したIntel 915Gなど、nForce2を上回る3D性能をもつ統合型チップセットが出現しているが、Athlon 64と組み合わされるnForce3ファミリーは、いまだ統合型チップセットをリリースしていない。

 これについてデリゾ氏は「Athlon 64を購入するユーザーはパワーを重視したハイエンドなゲームユーザーが多い。彼らのほとんどは独立したグラフィックスカードを購入している。我々のマーケティングデータからも統合型チップセットの需要はメインストリームではない」と、統合型のnForce3について消極的な意見を述べている。

 それでは、AMD対応チップセットで40%シェアを確保しているNVIDIAが、その余勢を駆ってインテル対応のチップセットビジネスに進出しないのだろうか。「我々が強いのはAMD対応のビジネスに特化したいるからだ。インテル対応のビジネスに乗り出す場合、マーケティングリサーチ、バスライセンスなどコストが膨大になる。そのようなインテルビジネスに乗り出すのは得策とはいえないだろう」(デリゾ氏)

がっちりした体格でビシバシ説明してくれた、MCPビジネスPRマネージャーのブライアン・デリゾ氏

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