セイコーエプソンが7万円を超えるキーボードを発売――。衝撃のニュースは、実はかなり多いらしいキーボード愛好家の話題を瞬く間にかっさらった。
ITmediaが過去に何度か取り上げてきたプロ仕様の東プレ製キーボードでも2万円を下回る。7万円なら東プレ製の実に3倍以上。秋葉原で売っているような1000円キーボードなら70台は買える。
エプソンの「ビジネスフルキーボード」に1000円キーボード×70台の価値はあるのか? レビューを口実に高級機材を無料で借りられる記者の立場を乱用するなら今しかないと、その実力を試してみた。
編集部に届いた実物を見た最初の感想。――大きい。
通常サイズのキーボードと比べ、二回りは大きい。机の上に置く場所をまず空けねばと、散乱していた飾り付けてあったガンダムボトルキャップを泣く泣く片付けた。
実際に使ってみた打鍵感は、優しい感触。やかましい音量で騒ぎ立てず、打鍵後にねちっこく指先へ付きまといもせず、末永くお付き合いしたい「大和撫子」とでも言ったところか。
当初はマイナス材料だったそのサイズも、慣れていくうちに気にならなくなった。場所を取っていたのは、キーボード下部のアームレスト。これが使っていてしっくりくるのだ。
着脱式でないのは残念だが、ほかのキーボードでもアームレストを用意すれば同じくらい場所を取ることになる。
また、アームレスト部が大きいことでチルトアップ時の傾斜はゆるやかになる。記者はチルトアップさせて打ち込むと急な傾きで指に疲れを感じるタイプだったが、このキーボードでは感じなかった。
エプソン販売の担当者によると、「大量の伝票入力業務をこなす税理士・会計士を対象とした人間工学に基づく設計」になっているという。
サイズは確かに大きく、かなりのスペースが犠牲になる。だが、そもそもキーボードは移動させる機会が少なく、据え置いて使うものだ。仕事柄、キーボードに向き合う時間の長い職種には勧められる設計だと思う。
ビジネスフルキーボードは、東プレ製と同じく、キーを下まで押し抜く必要のない「静電容量無接点方式」を採用している(関連記事参照)。なお、東プレとの関係について尋ねてみたが、コメントは得られなかった。
記者は長時間入力を続けていると、指の節々に軽い違和感を感じることがある。このキーボードを使っていた期間は、それがまったく出なかった。打鍵の際に抵抗をさほど感じず、指先がすっと抜ける感覚。一般的なキーボードと比較し、軽い負荷で入力できていたと思う。
ちなみに、個人的に一番気に入ったのはキーボード表面の肌触り。昇華印刷方式を採用しているためか、ぬるぬる感の残る感触ではなく、さらさらとした質感だった。なお、昇華印刷方式では、キーにインクを染み込ませるため、印刷のはがれる心配はない。
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