速球投手Intelが覚えた変化球(3/3 ページ)

» 2004年09月08日 23時19分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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マルチコアトレンドに今ひとつ“ノれない”理由

 もちろん、マルチコアの活用がエンドユーザーには無関係とは言わない。ビジネス向けのデータ分析ツールでデータ解析をバックグラウンドで実行しつつ、デスクトップ上では別の業務を実行する。あるいは、Linux上でエンジニアリング設計ツールを動かしながら、時間のかかる処理を行っている時には(VTを用いることで)Windowsパーティションに切り替え、メールや文書作成などを行うといった具合だ。

複数のPC業務を1台に統合 PC4台を使い分けていた業務を1台に統合

 またモバイルプラットフォームグループジェネラルマネージャでIntel副社長のアナンド・チャンドラシーカ氏は、モバイル分野でもマルチコアが有効であると話している。シングルコアで複数スレッドを動かすよりも、コアの数を増やした方が効率的に処理できるため、電源管理機能が優れてさえいれば、マルチコアの方が消費電力が少ないというのだ。この事は、消費電力(=発熱)あたりのパフォーマンスが重視されるサーバ分野でも有効な考え方と言えるかもしれない。

 おそらく、価格面でのプレミアムが載せられないのであれば、デュアルコア/マルチコアのプロセッサは、エンドユーザー向けにも広がることだろう。拒否する理由はないと考えられるからだ。しかし、ユーザーがシングルコアで十分と考えたなら、より低価格になると予想されるシングルコアPentium 4、あるいはCeleronへと流れてしまいかねない。たとえばHyperThreadingは非常に優れた技術ではあるが、それによって買い換えようと考える機能だろうか。

 ところが、Intelの幹部は比較的楽観視しているようだ。Intelは自社開発のコンパイラ「Intel Compiler 8.0」に、マルチスレッドを意識していないプログラムコードから、マルチスレッド対応コードを自動生成するオプティマイザーを搭載している。既存のアプリケーションがリコンパイルだけでマルチコア向けに最適化できることになる。

 オッテリーニ氏は「過去、様々な機能や性能の向上で、市場での価値が10倍に跳ね上がる現象をPCは繰り返してきた。次は並列処理技術が同じ事を為し遂げるだろう。汎用機やワークステーションでは、すでに十分その効果が検証されている手法だ。あらゆるPCにマルチコアが入り込む。“パーソナルパラレリズムコンピューティング”と呼ばせて欲しい」と話す。

 Intelによれば、人間が勘や経験で行ってきた判断や予測の手助けを、マルチコアが可能にするという。認識、マイニング、合成の3プロセスに関して、マルチコアの方が優れている。バックグラウンドでさまざま々な情報にアクセスし、分析し、人間に分かりやすい形で例示する。たとえば必要と思われる金融動向をユーザーに示し、その中から選ばれた情報に関して掘り下げて投資チャンスについて検討を行う情報や分析結果を提示。さらに実際に投資を行った場合のシミュレーションを行う、といった具合だ。

 確かに理想的に事が進めば、意外にスムーズにユーザーの価値観を変動させることが可能かも知れない。しかし、並列処理技術にソフトウェアの革新は不可欠だ。そしてそれは、Intelが制御可能な範囲の外にある。幾多の優れたマーケティング戦略で難事を乗り切ってきたIntelだが、今回のテーマはかなりの難物と言えるかもしれない。

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